複数の企業が手を組み、商品の価格や生産量などを取り決める行為を指す。不当な取引制限として独禁法3条で禁止されている。商品の価格や生産量は本来、企業間の自由な競争によって決まるが、複数の企業がカルテルを結ぶと高い価格が設定されやすい。消費者がより安い商品を選ぶことができなくなるほか、非効率な企業が温存されやすいといった問題点もある。
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市場独占を目的として協定、または契約によって結合される企業連合をいう。同じような独占的結合であるトラストやコンツェルンが、企業合同や株式の所有関係を伴うのに対し、カルテルは独立した企業間の協定(または契約)に基づく結合である。したがってカルテルに参加した企業は、協定の範囲においてのみ行動が制約されるだけで、その他の企業活動は制約されない。
[御園生等]
第一に、カルテルは独立した企業間の協定による結合であるから、カルテルに加盟した企業間の利害の対立によって内部崩壊する危険をつねにはらんでいる。とくにカルテルは、価格協定や生産制限などの協定を締結しようとする場合に、加盟企業間の企業規模や技術水準の違い、ないし経営合理化の程度の格差が大きいと、なかなか妥協点に到達しない。また、協定後も内部紛争によって脱落する企業が生じ、崩壊する可能性がある。第二に、前記のような対立を避けるためには、合理化がもっとも遅れた企業を基準にして協定を結ぶことにならざるをえない。これはカルテルの限界生産者温存の機能といわれる。第三に、カルテルは市場価格の維持、引上げのためには、操業の短縮や出荷の制限など、ある程度加盟企業に犠牲を払わせることになるが、カルテルに加盟していないアウトサイダー企業は、このような犠牲を払わないでカルテルによって引き上げられた市場価格による恩恵を享受することができる。カルテルにとってアウトサイダーのほうがむしろ利益になるという矛盾があるわけである。また第四に、ある業種にカルテルが成立した場合、関連部門にもこれに対抗するカルテル(カウンター・カルテル)の結成を誘発することになる。このようなカルテルの連鎖反応をカルテルの波及性という。
このように、カルテルはさまざまの矛盾や弱点をもち、自由競争による企業の淘汰(とうた)を鈍らせ、技術進歩や生産の合理化を遅らせる作用をもっている。カルテルが独占的結合のなかでも最悪の結合とされるゆえんであり、カルテルが独占禁止政策のうえで、もっとも厳しい取締りの対象とされている理由である。
[御園生等]
カルテルは、その目的、手段によって、次のように分類される。
(1)条件カルテル 支払い条件や販売条件などを統一するためのカルテル。
(2)計算カルテル 原価計算の方法、制度を統一するためのカルテル。
(3)価格カルテル 販売価格の維持、引上げを目的とするカルテルで、単純に統一価格を協定する場合と、基準価格、最低価格、安定帯価格など、ある程度の値幅を設け、その範囲内に販売価格を収めようとする場合とがある。あらかじめ落札者および落札価格を協定して入札を行う入札談合も価格カルテルの一種である。
(4)生産カルテル 生産数量の制限や操業時間の短縮(操短)、出荷量の制限などのように数量を制限するカルテル。
(5)市場カルテル 販売地域の制限、市場分割などのカルテル。
これらのカルテルには、協定に違反した場合の罰則(ペナルティー)規定が設けられていることが多いが、このような罰則のない紳士協定gentleman agreementもカルテルの一種とみられている。しかし、価格主導制(企業間の暗黙の了解によって価格が設定されるプライス・リーダーシップ)や平行行為(同調的価格引上げ)は、企業相互に共謀関係が認められないのであるから、カルテルとは別種の独占的市場行動とされている。なお、シンジケートは、一手販売機関としてカルテルを流通段階において補強する手段であるから、カルテルの一種とみるべきである。
[御園生等]
カルテルの究極の目的は市場価格の維持、引上げにあるのであるから、通常景気が下り坂で市場価格が下落しつつある場合にカルテルの必要が生じる。これを「不況の子」としての防衛的カルテルという。ただし、このような防衛的カルテルであっても、独占的な結合という性格はもっている。自由競争による市場機構の調節作用にゆだねず、人為的に価格を操作する行為であって、不況期が過ぎてその必要がなくなっても、カルテルが継続され恒常化するおそれがあるからである。好況時のカルテルは、価格の引上げを積極的に行うもので、「好況の子」としてのカルテルといわれる。ただし、カルテルが不況、好況のいずれの時期に多く結ばれるかは、一概にはいえない。カルテルによって価格を維持する必要性が大きい不況時には、カルテルによっても市場価格の下落を食い止めることが容易ではなく、その反面、好況時には、価格引上げが容易であって、いわゆる安定カルテルなどの名目で協定が結ばれることが多いからである。しかし、第二次世界大戦後、独占禁止政策が国際的に承認され、国際連合やヨーロッパ連合(EU)でもカルテルなどの独占的結合を取り締まる方向が強まっているので、不況カルテルなどの防衛的カルテルは例外的に認められる場合もあるが、好況時のカルテルは認められず、実際上存在の余地はなくなっている。
[御園生等]
歴史上、カルテルがもっとも発達したのは、19世紀後半からのドイツである。1893年のライン・ウェストファーレン石炭シンジケートは、ドイツのカルテルを代表するものとして有名であった。先進工業国イギリスに対抗してドイツの工業を発達させるためには、鉄鋼業などの重工業を中心としたカルテルの結成と保護関税の採用とをもって対抗する必要があったのである。これに対して、アメリカにおいては、早くからカルテルを法律上違法とする政策がとられたので、プールpool(アメリカではカルテルをプールという)の時代を飛び越して19世紀の終わりごろからトラストの時代を迎えることとなった。この点、世界でもっとも早く産業革命を達成し資本主義工業を発達させたイギリスには、あまりカルテルの必要がなく、1771~1841年のニューキャッスル・ベンドのような当時の石炭市場を支配していたカルテルの例はあるが、それほど盛んであったとはいえない。先進工業国としてのイギリスにおいては、企業の自主性が重んじられ、ドイツのような保護関税制度がとられなかったこと、および銀行と企業の結び付きが強くなかったことにより、銀行の主導によるカルテル結成というドイツ的な方法がとられにくかったことによる。
[御園生等]
明治維新以後、先進工業国に追いつくための殖産興業政策が推進された日本では、工業化のためにカルテルが保護奨励された。1888年(明治21)設立の日本紡績連合会(略称紡連)は代表的なカルテル団体であり、「輝ける紡連の歴史は、操業短縮(カルテル)の歴史」と称されている。そのほか、製紙業、製糖業、セメント工業などにカルテルが早くから結成され、市場価格の下落を防止した。後進国日本は、ヨーロッパからの近代工業の移植と並行してカルテルが結成されていった。とくに1907年(明治40)の恐慌とその後の不況時、および第一次世界大戦後の恐慌と不況の時期には、ほとんどの工業部門にカルテルが結成された。しかし、三井、三菱(みつびし)、住友をはじめとする財閥コンツェルンが成立するようになると、これら財閥間の対立と協調関係が業種別のカルテルに微妙な影響を及ぼしたこともあって、これら不況時のカルテルは、企業間の内部対立によって十分に強力なカルテル機能を発揮したとはいえない状態であった。もともとカルテルは、独立企業間の協定による結合であるから、不況が深化して市場価格の下落が激しくなると、紡連のような強力なカルテルでも操短率の強化をめぐってカルテル加盟企業間の対立が生じ、カルテルに不満な企業の脱退、アウトサイダーの増加によって十分な機能が果たせなくなることもあった。紡連以外のカルテルではいっそう対立が生じやすく、ほとんどのカルテルは崩壊と再建を繰り返した。1929年10月アメリカに端を発した世界恐慌は、たちまち資本主義諸国を渦中に巻き込み、日本も政治的・経済的危機に直面することとなった。日本ではその対策の一つとして31年(昭和6)に重要産業統制法を制定、政策的な強制カルテルが結成できるようになり、その後の戦時経済の進展とともにカルテルを中心にした統制経済体制がとられるようになった。
第二次世界大戦後、アメリカ占領軍による経済民主化政策が施行され、財閥解体、過度経済力集中排除法による巨大企業の分割とともに、1947年(昭和22)独占禁止法が制定施行され、カルテルは全面的に禁止された。しかし、52年、朝鮮戦争による特需景気から一転して反動不況期になると、綿紡績業、化学繊維業、ゴム工業などの業界で、通商産業省(現経済産業省)の行政指導による「勧告操短」という生産制限が実施され、事実上カルテルが存在するようになった。勧告操短とは、独占禁止法のカルテル禁止規定を逃れるため、通商産業省の行政指導(勧告)によって操業短縮を実施させ、事実上の操短カルテルと同じ効果を発揮させようとするものであった。このような事実上のカルテルである勧告操短が多くの産業に波及したため、これが既成事実となって、53年には独占禁止法が改正され、不況カルテル、合理化カルテルなどのカルテル認容の道が開かれた。また、このような独占禁止法の緩和と、勧告操短などの行政指導に基づく事実上のカルテルの存在は、企業の独占禁止法違反に対する安易感を育て、非合法の闇(やみ)カルテルの結成を助長した。その結果、57年度の公正取引委員会年次報告をして、「日本の産業中、カルテルのない業種はほとんど数えるに足りない」と嘆かせしめるに至った。
とくに1973年の中東産油国の原油供給制限の発表に端を発したいわゆる石油ショックの機会に、石油カルテルをはじめ未曽有(みぞう)の闇カルテルの結成が波及し、物価が激しく上昇した。公正取引委員会はこれらの闇カルテルの摘発を精力的に行い、そのうち石油カルテルに対しては罰則を適用するため東京高等裁判所に告発した。また、これとともに77年に独占禁止法を改正し、違反カルテルに過徴金を課すなどカルテルに対する取締りを強化した。
また、1989年日米構造問題協議に際し、日本の排外的取引慣行やカルテルの存在がアメリカ政府側から問題とされるなど、国際的にもカルテル取締りの強化が要請されている。しかし、それにもかかわらず、その後も闇カルテルは後を絶たない。90年代に入ってもバブル経済の崩壊による不況の深刻化に際し、建設業の入札談合、公共事業をめぐる闇カルテルなどが頻発し、公正取引委員会の摘発を受けている。わが国産業におけるカルテル・マインドの根の深さを推測させる。
[御園生等]
『吉田仁風編『日本のカルテル』(1964・東洋経済新報社)』▽『伊従寛著『カルテル』(石井照久他編『経営法学全集12 独占・公正取引』所収・1965・ダイヤモンド社)』▽『正田彬著『カルテルと法律』(1968・東洋経済新報社)』▽『川井克倭著『カルテルと課徴金:企業生命握る独禁審決』(1986・日本経済新聞社)』
企業間の明白なあるいは暗黙の協定により価格の決定その他の企業行動を相互に制約して,市場における競争を制限する企業の協調行動をいう。かつては企業連合という訳も行われたが,現在ではほとんど使われない。少数の企業で構成される寡占産業においては,企業はその行動の決定にあたって当該行動が競争相手に与える影響と競争相手の反応を推測したうえで行動せざるをえないが,その推測には不確実性が伴う。競争相手の反応についての推測に伴う不確実性の存在は,寡占産業における価格引下げ競争等の企業間の熾烈(しれつ)な競争をひき起こすことともなる。また多数の企業が存在する原子的競争産業においても,需要や費用条件など企業の環境条件の変化への適応(調整)過程で企業の倒産その他の摩擦が生ずるおそれがある。こうした事態を回避するために市場における競争の制限が試みられるが,企業がその行動についてあらかじめ情報を交換(意思を疎通)し,企業間の利害の調整を図って結成されるカルテルは,その有力な一つの手段である。市場における競争を制限する効果をもつ点ではカルテルと同様であるトラストやコンツェルンが,その行動を決定する主体が一元的である〈固い結合〉であるのに対して,カルテルの場合これに参加する企業が独立の意思決定の主体として存続する〈ゆるい結合〉である点,またカルテルが同一の市場(一定の取引分野)に係る企業で構成されるものである点にその特徴があり,カルテルを〈ゆるい水平的結合〉ということができる。
カルテルにおいては,企業の意思決定の対象であってかつ市場における競争に影響を与える事項が,協定の対象となりうる。カルテルをこのような事項に従って大別すれば,価格カルテル,数量カルテル,販売制限カルテルに分けられるであろう。価格カルテルは,価格水準または価格体系についての協定である。数量カルテルには,生産量を制限する生産カルテル,在庫の保有量を制限する在庫カルテル,設備投資量を制限する投資カルテルなどがある。これらは短期または長期の供給量を制限する効果をもつものである。販売制限カルテルとは,販売する製品の種類・品質・規格を統一するための標準化カルテル,支払条件・配送条件・アフターサービス等の販売条件を制限する販売条件カルテル,販売地域あるいは買手について制限を課す販路カルテルなどをいう。カルテルのうち,カルテル組織が価格と各企業の供給量を決定し,利潤をプールしてこれを事後的に各企業に配分するものを利潤分配カルテルという。また各企業の製品を一元的に販売する組織あるいは機能をもつカルテルをとくにシンジケートと呼んでいる。このような一元的な意思決定が可能なカルテルの市場競争を制限する効果は,独占企業のそれにより近いものとなる。なお国際市場を対象として各国の企業間で結成されるカルテルは国際カルテルといわれる。国際カルテルにおいても,主として価格,生産数量,販路について協定がなされるが,特許等のライセンスや技術提携に付随して行われることが多い。
カルテルは〈不況の子〉といわれるように,不況期にしばしば結成される。不況期には,需要の停滞による超過供給から価格の低落が生ずる。固定費比率の高い寡占産業では,価格の引下げによる販売量の維持ないし拡大によって固定費負担の軽減を図ろうとする誘因が強く作用する結果,一般に価格引下げ競争に陥りやすい。また原子的競争産業でも,多数の企業は自己の行動が競争相手に及ぼす影響を考慮せずに価格の引下げによって販売量を維持しようとする結果,価格水準の大幅な低下をひき起こしがちである。不況期における価格競争は,産業全体の利潤率を低下させることとなるが,こうした事態を回避するためにカルテルの結成が志向される。ところで,このようにカルテルが志向されるとしても,それがつねに成立し存続するというわけではない。というのは,カルテルが独立した意思決定の主体である各企業の利害の調整のうえに成立し,その限りにおいて存続するものであるからである。価格カルテルについていえば,カルテル価格をどのような水準に定めるかという点で,費用条件や需要の将来の見通しなどに関して企業間で差異が大きければ各企業にとっての最適な価格は異なるであろうから,企業間の利害を調整することは必ずしも容易ではない。また仮に利害が調整されて価格カルテルが成立したとしても,各企業にとってはカルテル価格を多少とも下回る価格で販売量を拡大しようとする誘因が存在する。カルテルに参加している企業のうちのいずれかの企業がこのような誘因から価格を引き下げれば,他の企業もこれに追随する結果,カルテルは崩壊する。一般にカルテルが成立・存続しやすい条件を大別すれば,企業の〈同質性〉と企業の環境条件の〈安定性〉に分けられるであろう。ここで企業の同質性とは,製品が同質である(製品差別化の程度が低い)こと,企業数が少数であること,各企業のマーケット・シェア(市場占有率),費用条件,製品構成(多角化の程度)の差異が小さいこと,である。また企業の環境条件の安定性とは,需要の成長・変動が小さいこと,需要の価格弾性値が小さいこと,技術進歩など費用条件の変化をもたらす機会が乏しいこと,参入障壁が高いこと,カルテルに参加しないアウトサイダーが存在しないこと,を意味する。これらの条件が満たされているほど,一般に価格カルテル等のカルテルは成立・存続しやすいといえよう。さらにカルテル組織自体が,カルテルの存続のために,カルテル参加企業の行動を監視し協定に違反する行動に対して制裁を科すといった措置や,アウトサイダーに対して略奪的価格引下げやボイコットなどの排他的行動をとることがあるが,これらの措置や行動が有効に機能するほどカルテルは存続しやすい。
企業間の協定等により市場における競争を制限する行動自体は,中世のギルドの時代はもとよりギリシア・ローマの時代にもみられたものであるが,近代におけるカルテルの動向についてみると,19世紀後半以降とくにドイツにおいて多数の産業分野でカルテルが結成されている。〈カルテルの母国〉といわれるドイツでは,近代的なカルテルが1862年にブリキ産業で結成されているが,19世紀末までには石炭,鉄鋼,化学(苛性カリ,窒素,リノリウム,製塩など),セメント,ねじ,ガス・コークスなどの産業でカルテルが結成されている。その多くはシンジケートの形態をとるものであったが,1893年に結成されたライン・ウェストファーレン石炭シンジケートは,西部ドイツの石炭生産のほとんど大部分を支配する強固なカルテルであり,この時期のカルテルの動向を代表するものであったといえよう。
イギリスでもギルド組織から発展した先駆的カルテルが早くから結成されている。石炭産業におけるニューカスル・ベント(1771-1845)は,ロンドン石炭市場を独占していた強固なカルテルとして有名であるが,これは,16世紀末から始まるニューカスル地方の石炭生産者のカルテルに,これと競合関係にあったサンダーランド地方の石炭生産者を加えて新たに結成されたものである。アメリカにおいても,南北戦争以後19世紀末までの間,鉄鋼業をはじめ多くの産業で〈プール〉と呼ばれるカルテルが結成されている。このようにイギリス,アメリカでもカルテルの結成が早くからみられたのであるが,ドイツの場合19世紀末以降カルテルが独占組織として本格的な発展を遂げていったのに対して,英米両国においてはむしろトラストないしトラスト的大企業が発達するという方向をたどったのである。
日本においては,1890年(明治23)に大日本紡績同業連合会の指導のもとに行われた紡績業における操業短縮が近代的カルテルのはじめであるといわれている。1907年以後の不況期には,紡績業以外の産業でも製紙,製糖,製麻,製粉,マッチなどの産業でカルテルの結成をみたが,その後は鉄鋼,石炭などの重工業部門でもカルテルが結成されている。とくに大正末期から昭和初期にかけて〈重要輸出品工業組合法〉〈輸出組合法〉〈重要産業統制法〉などのカルテル助長法が制定されたこともあり,昭和初期には重要産業分野をはじめ多くの産業でカルテルが成立した。
カルテルは,最適規模に達しない過小規模企業を温存させ,また需要構造の変化や技術進歩への対応を遅滞させるなどの弊害をもたらすおそれが大きく,カルテルに対してはほとんどの国でなんらかの規制が行われている。すでに中世からイギリスのコモン・ローにおいては,カルテル等の取引制限は私法上無効であるとされ,被害についての損害賠償が認められていたが,カルテルについて協定の破棄,行為者の処罰など積極的な措置がとられる現代のカルテル規制は,1890年のアメリカのシャーマン法(〈アンチ・トラスト法〉の項目参照)の制定に始まるものである。このような意味での本格的なカルテル規制が行われるようになったのは,日本をはじめ西ドイツ,イギリスなどほとんどの国では第2次大戦後であるといえよう。カルテル規制のタイプを大別すれば,カルテルの結成を原則的に禁止する原則禁止型と,カルテルによる市場支配力の濫用を規制する弊害規制型に分けることができる。アメリカ,西ドイツ,日本などの規制は前者に,イギリス,オランダ,北欧諸国などの規制は後者に属する。第2次大戦後の日本においては,独占禁止法の制定によりカルテルは原則的に違法な行為とされたが,違法(やみ)カルテルがしばしば摘発されている。違法カルテルに対する課徴金の制度が設けられるなど近年カルテル規制は強化される傾向にあるが,他方では特定の政策目的からカルテルを容認する政策も行われている。不況カルテル,輸出入カルテル,合理化カルテルをはじめ,特定の産業において容認されているカルテルなど,いわゆる独占禁止法の適用除外カルテルがこれである。さらに産業所管官庁によるいわゆる行政指導によって生産・設備等の調整がしばしば行われている点は,カルテル規制との関連で注目すべき点である。
→カルテル法 →独占禁止法
執筆者:横倉 尚
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生産制限・最低価格・販路・生産分野などの協定を通じて市場の安定をはかる独立企業間の組織。加盟企業の規模・生産性が均等でシェアが高いこと,実効力のある制裁規定を備えていることなどが成立の条件となる。1880年(明治13)の製紙連合会が先駆とされるが,同業組合的性格が強く,明確な市場規制は90年の紡績連合会の操業短縮活動が最初といえる。1920年代後半から鉄鋼・金属などの主要産業に普及し,重要産業統制法の制定をみた昭和恐慌期にはほぼ全産業に拡大した。第2次大戦中は政府の配給・価格統制を代行する統制団体の中心となる。戦後は独占禁止法制定により原則的に違法となったが,行政指導や適用除外立法を通じて多くの分野で形成された。
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鉄鋼,石炭など一定の産業部門で多数の業者が資本的連携でない契約によって結合し,市場を独占的に支配する形態をいう。1873年の不況の際ドイツで誕生したが,1900年の恐慌以後,一般化した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…主な規制内容は次のとおりである。 シャーマン法1条および連邦取引委員会法5条により,カルテル(企業間の話合いで相互の競争を制限する行為,たとえば話合いによる一斉値上げ,生産制限など)は禁止されている。アメリカのAT法はカルテルの禁止に関してはきわめて厳格で,輸出,海運,防衛,協同組合等少数の適用除外例を除いては,カルテルは全面的に禁止されている。…
…これは集中の方法によって以下の三つの形態に分けられる。(a)企業連合は,二つ以上の独立企業が協定によって相互に結合する形態で,市場統制の目的をもって形成される企業連合がカルテルである。(b)企業合同は,各企業が独立性を放棄して,完全に一体となって結合する形態で,市場統制を目的として形成される企業合同がトラストである。…
…また,市場の売手側に独占が生じることが多いので,経済学は売手独占を分析することが多かったが,最近では買手独占にも関心がもたれている。
[独占力と独占の形態]
一定の商品の地理的に限定された市場における独占力が独占力の基礎的概念であり,この独占力を発揮する目的でカルテルやトラストという形態の独占が形成される。法律的に独立な複数の企業が協定を通じて,生産,投資,顧客などを割り当て,価格を固定して,競争を制限することをカルテルという。…
…主要な要件は,事業者が他の事業者と共同して,その事業活動を相互に拘束しまたは遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することである(独占禁止法2条6項)。端的にいえば,合意によって競争を制限するいわゆるカルテル行為である。制限される競争の態様によって,価格,生産制限,市場分割等々の各種の〈不当な取引制限〉が存在する。…
… いずれのケースでも,価格先導者となる企業が長期にわたってその地位を維持しつづけるか否かは,先導者と他企業との関係を決定している技術的条件,需要の動向および参入の可能性に依存する。またプライス・リーダーシップのもとで形成された価格の水準が,競争的な価格とどれほど異なるかは,価格先導者がカルテルのリーダーとみなしうるか否かにかかっている。一般にカルテルを隠密に維持しつづけることはきわめて難しいので,プライス・リーダーシップのもとでの価格を,独占価格に近いものとみなすことは単純にすぎるといわれている。…
※「カルテル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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