スタートアップ企業(読み)すたーとあっぷきぎょう(その他表記)start-ups

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタートアップ企業」の意味・わかりやすい解説

スタートアップ企業
すたーとあっぷきぎょう
start-ups

既存分野で、ある程度の利益を着実にあげつつゆっくり成長していく「スモールビジネス」に対して、創業当初は赤字でも、事業が成功したときには短期間で巨額の売上げ、利益を生み出すような事業を行う新興の企業をいう。

 スタートアップ企業が行う事業は、ハイテク分野とは限らず、既存事業のルールにとらわれず、業界構造に変化をもたらすような「破壊的イノベーション」を伴う新しいサービスやビジネスモデルに基づく他の分野の事業も含まれる。

 スタートアップ企業が対象とする市場は既存市場ではなく、市場そのものが存在しない、あるいは存在しているかどうかわからない市場をターゲットとする。新しい市場をつくり、かつ、その市場でナンバーワンになることを目ざす。さらには、自分と社員が生活できる程度の売上げでよしとするのではなく、巨額の売上げ、利益をあげることのできる、規模拡大が可能な事業にチャレンジする。事業開始当初の顧客は少ないが、事業規模が大きくなって一気に多くの顧客に製品やサービスを届けることができるビジネスモデルを構築する。

 不確実性の高いビジネスにチャレンジするので、資金調達方法は金融機関からの融資ではなく、投資家あるいはベンチャー・キャピタルからの投資によることが多い。また、経営幹部や社員へのインセンティブは、給与ではなく、ストックオプション付与による将来のキャピタル・ゲインによることも多い。創業者にとっては、事業の売却や株式の上場等によるキャピタル・ゲインも期待できる。

 スタートアップ企業は、提供する製品やサービス、ビジネスモデルそのものが革新的であるが、企業経営においても経営資源の調達方法がユニークである。既存のやり方にとらわれず、労働力の調達やサービスの利用、販路開拓等において、たとえばフリーランスの活用や大企業との事業提携によるブランド力の活用、他社との提携により法務マーケティングといったサービスを無償で受けるなど、新しい手法を取り入れている。

 スタートアップ企業のなかで、株式未上場で企業価値が10億ドル以上、創業10年未満の企業を「ユニコーン企業」とよぶ。2022年(令和4)時点で日本におけるユニコーン企業は6社程度といわれているが、世界では約900~1000社のユニコーン企業が存在する。もっとも多いのはアメリカで、ついで中国、インドとなっている。

[鹿住倫世 2022年12月12日]

『田所雅之著『入門 起業の科学』(2019・日経BP社)』『一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター『ベンチャー白書2021』(2022)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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