ディーゼル自動車(読み)でぃーぜるじどうしゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディーゼル自動車」の意味・わかりやすい解説

ディーゼル自動車
でぃーぜるじどうしゃ

ディーゼルエンジン原動機とする自動車。低速トルクが強く、熱効率が高いので燃料消費が少ない。そのうえに燃料が安価なので運行費が経済的で、点火装置が不要のためエンジンの信頼性も高い。しかし、自動車用エンジンとしては回転が遅いために排気量当りの出力が低く、圧縮着火なので騒音振動が大きく、シリンダー内が高圧になるため、じょうぶにつくらねばならず重くなる、などの欠点がある。したがって本質的にトラックバスなど大型車に向いている。

[高島鎮雄]

沿革

1923年、ドイツのベンツ社がディーゼルトラックを実用化したのがディーゼル自動車の初めである。当初は大型車に用いられていたが、36年、ダイムラー・ベンツ社が四気筒2.6リットルのベンツ260Dを完成し、同じドイツのハーマーク社も四気筒1.9リットルのレコルト・ディーゼルを発売した。経済性が高いのでタクシーに多く使われたほか、愛用者も一部に増加した。

 第二次世界大戦後、ヨーロッパ各国や日本でもディーゼル乗用車が製造されたが、騒音と振動が解決されず、依然ディーゼルエンジンの使用は大型車に限られていた。1973年の石油危機契機としてディーゼル乗用車が見直され、アメリカも含めた世界各国のメーカーがディーゼル乗用車を発売した。アメリカだけは石油事情の好転によって製造をやめたが、ほかの国ではわずかではあるが増加の傾向にある。

[高島鎮雄]

現状

日本では2トン以上のトラックとバスはほとんどディーゼル自動車といってよい。

 ディーゼル乗用車の軽自動車を除いた新規登録台数に占める割合は、1979年(昭和54)の2.9%(7万3878台)から80年には5.7%(15万0454台)と倍増し、83年に6%(17万9106台)、84年も6.0%(17万6265台)に達している。メーカー別ではいすゞが製造台数の67.3%、ダイハツも40.4%がディーゼル自動車である。トヨタは4.9%、日産は5.7%と比率が少ない。

[高島鎮雄]

経済性

ガソリン車に比べて燃料消費が30%から50%も少ないうえに、燃料の価格も半値に近いから、5%から20%の車の価格の差はあまり長くない期間で回収されるはずである。ヨーロッパには政策的にディーゼル燃料をガソリンより高価にしている国もあるが、それでも燃料消費が少ないので最終的にプラスになるとされている。しかし、この収支は単一期間内の走行距離と使用年数に大きく左右されるので、走行距離も使用年数も短い日本では、ディーゼル乗用車はペイしにくいといえる。

[高島鎮雄]

技術

エンジンは長い間、比較的騒音と振動の小さい予燃焼室式や副室式が主流を占めていた。しかし十数年前から、大型車を中心に、回転が速く出力の高い直接噴射式が普及している。乗用車や小型商用車ではまだ予燃焼室式が主だが直噴化が進んでおり、近い将来には直接噴射式が主流になるであろう。

 騒音にはヘッドカバーを厚くするなどで対応しているが、騒音の発生をやむをえないものと認めてエンジンルームをカプセルに密閉して封じ込める方向にある。最近の大型車用エンジンにはターボチャージャーやインタークーラーも採用されている。

 ディーゼルエンジンはシリンダー内がガソリンエンジンよりはるかに高温・高圧なので、セラミックスを使用する研究が進んでいる。すでに始動用のグロープラグの一部などに実用化した例もある。将来は、シリンダーやヘッド、ピストン、バルブなどの表面にセラミックスを用いて冷却を不要にし、高出力でカプセル化の進んだディーゼルエンジンも出現するものと思われる。

[高島鎮雄]

『杉本和俊著『新・ディーゼル自動車の本』(1997・山海堂)』『川名英之著『ディーゼル車公害』(2001・緑風出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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