トランプ

精選版 日本国語大辞典 「トランプ」の意味・読み・例文・類語

トランプ

〘名〙 (trump 「切札」の意)
① 室内ゲーム用具の一種。また、それを使ってするゲーム。普通、ハート・ダイヤ・クラブ・スペード各一三枚ずつ四組とジョーカーの五三枚のカードからなる。
団団珍聞‐五二五号(1886)「西洋骨牌使用法の書を見てトランプを研究する書生あり」
切り札
花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉下「王様でも此『トランプ』にはかなふまい」
[補注]①について、英語では、プレーイングカード、または単にカードと呼ぶが、明治初期に来日した西洋人たちがカードでゲームを行なっている時、このことばをしばしば使ったため思い違えて使われるようになった。

トランプ

〘名〙 (tramp) てくてく歩くこと。徒歩旅行
※欧米印象記(1910)〈中村春雨〉紐育雑記「トランプ(徒歩旅行)をやってでも、ローキー山を越えなければならぬ」

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デジタル大辞泉 「トランプ」の意味・読み・例文・類語

トランプ(trump)

カード式の室内遊戯具の一。スペードハートクラブダイヤの4種のマークの札が各13枚と、ジョーカー1枚、計53枚を一組とする。西洋カルタ。また、それを使用するゲーム。
[補説]英語では切り札の意。遊戯具は、playing card または、card という。
[類語]カードカルタ百人一首

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改訂新版 世界大百科事典 「トランプ」の意味・わかりやすい解説

トランプ

室内遊戯具の一種。絵や字を描いた札,またこれを用いた遊び。明治初期以降における日本独自の呼称で,それまでは〈西洋がるた〉と呼ばれていた。英語ではプレーイング・カードplaying card(略してカードcard)といい,トランプtrump(勝利triumphと同語源)は〈切札〉のことをいう。

カードの起源は東方にあるといわれ,18世紀フランスの神秘学者クール・ド・ジェブランは,カードと密接な関係にあると考えられているタロットのエジプト起源説を唱え,その他チェスと同様にインド起源説,中国唐時代の紙幣起源説があるが,いずれも確証はない。これがサラセン人,十字軍,あるいはジプシーによってヨーロッパにもたらされたといわれ,14世紀イタリアを中心に発達したものと思われる。スイスにいたドイツ人修道士ヨハネスの記述によれば,1377年にカードが伝来したといい,それは各3枚の絵札を含む4種のマークからなる52枚であった。15世紀初頭には北イタリアでタロット(タロッキ)が登場する。タロットは〈大アルカナ〉と〈小アルカナ〉に分けられ,後者と現在のカードには共通点がみられるが,相互の関係については諸説あり,正確なことはわからない。

 初期には手描きだったカードも,15世紀前半には木版刷りとなり,ドイツで盛んに生産されたため,イギリスなどでは一時は輸入禁止で対抗した。1615年にイギリスは輸入関税を設け,ついで28年には国内生産のものにもカード税を課し,のち各国もこれに従った。1765年以後はスペードのエースに納税証明を印刷するようになった。現在のデザインにもそのなごりをみることができる。日本でも1902年から国税(骨牌税)が課せられた。19世紀になるとイギリスやフランスでカードの製法に改良が加えられ,1930年代にはプラスチックを材料にしたものもつくられるようになった。

 日本には16世紀後半にポルトガルから48枚組のカードが持ち込まれ,日本化して〈天正かるた〉となったが,現在のような52枚組のカードが輸入されるようになったのは明治初年である。1887年には《西洋遊戯かるた使用法》が出版されている。以来,カードは一般家庭で人気を得ているが,日本では子どもの遊び道具という面が強く,その競技法は国際的には通用しない変型ルールが多いため,技術と戦略を必要とするゲームは普及していない。

ひとそろいのカードの組をパックまたはデックという。1パックのカードは幾種類かのマークに分類され,それぞれのマークのひとそろいをスートと呼ぶ。スペード,ハート,ダイヤ,クラブの4スートからなる1パック52枚のカードが国際的に通用し,スタンダード・パックとされているが,これはフランスを起源にしたものである。スペインでは40枚のパック,ドイツ,フランスでは32枚のパックがいまでも販売されている。これらはオンブルスカート,ピケなどのゲームに使用する。

 絵札court cardは各スートにキングking,クイーンqueen,ジャックjackがあり,ドイツ語でKönig,Dame,Bauer,フランス語でroi,dame,valetという。52枚のスタンダード・パックにはジョーカーjokerが1枚もしくは2枚つけ加えられるのが普通であるが,ジョーカーの導入は19世紀後半になってからである。

 スートの図柄と呼名も地方によって異なるが,伝統的に次の3種に分けられる。(1)フランス,イギリス系 スタンダード・パックのスート。スペードspade,ハートheart,ダイヤモンドdiamond,クラブclubの4種。図柄の起源はフランスで,槍pique,心臓cœur,教会の敷石carreau,三葉trèfleだったものが16世紀後半にイギリスに入った。英語spadeは鋤(すき)のことではなく,イタリア語spada(剣)を借入したものである。(2)イタリア,スペインなどのラテン系 カードの発生当時からの図柄と思われ,日本で西洋かるたといわれたポルトガルのものもこの系統である。剣spada(ポルトガル語でespada),聖杯coppa(copo),貨幣denaro(ouro),こん棒bastone(pau)。(3)ドイツ,オーストリア系 木の葉Grün,心臓Herz,鈴Schelle,どんぐりEichel。

カード・ゲーム全般に共通する手順は次のとおりである。(1)親(ディーラー,配り手)を決めるための抽選(ドロー)。一般にはテーブル上に置いたカードを各人が1枚ずつ引いて最高位の人を親とする。(2)カードの順序がだれにもわからないようによくかきまぜる。これを〈切る(シャッフル)〉という。(3)カードが適切に切られた確認と親の不正防止のため,親の隣の人がカードを二つに分け,その上下を入れかえる。これをカットという。(4)カードを配る(ディール)。標準的には親の左隣から時計回りで配るが,イタリアやポルトガル,西洋かるたの習慣を残している日本などでは逆時計回り。

カード・ゲームをその性格によって大別すると次のようになる。

(1)カードの組合せを主眼とするもの 16~17世紀のゲームであるプリメロprimeroをはじめ,アメリカのポーカー,イギリスの伝統的な二人遊びクリベッジcribbage,それにラミー系のゲームであるジン・ラミーgin rummyや2組のカードを使用するカナスタcanastaなどがある。

(2)トリックをとるゲーム 各人が順にカードを出し,最強の札を出した者が出されたカードを全部(これをトリックという)とる。この種のゲームの特徴は,各人が取得したトリックの数(またはそのトリックに含まれている点数)を争うことにある。ナポレオン,古代ゲームのタロット,スペインのオンブルhombre,フランスのピケpiquet,ドイツのスカートSkat,アメリカのピノクルpinochle,イギリスのホイストwhistなどがあるが,現在最も人気のあるのはブリッジである。

(3)ストップ系のゲーム ルールに従ってカードを場に出していって,手札を全部なくした者が出た時点でゲームが終了(ストップ)するもの。日本で行われているのはこのタイプがほとんどである。ばば抜き,ダウト,ページ・ワン,七並べ,エイトなど。

(4)カードの合計点を特定の数に近づけるのを目的とするゲーム 代表的なゲームは21点をめざすブラックジャックblackjack(twenty-one)で,日本版は〈どぼん〉。9点をめざすバカラbaccaratは日本では〈かぶ〉と同じ。ギャンブルに用いられるのがこのタイプのゲームの特徴である。

(5)その他 日本の花札のように場札と手札をあわせてとるゲームにイタリアのカシノcasinoがある。またルーレットのように,盤を使ってカードの出方を予想するフェアロfaroという賭博も盛んに行われた。

(6)ひとり遊び イギリス風にいえばペーシェンスpatience,アメリカではソリテールsolitaire。その歴史は比較的新しく,18世紀の終りころであろうといわれている。カードを一定のルールに従って並べていき,決められた組合せを完成させられるかどうかを楽しむ。クロンダイクklondike,キャンフィールドcanfield,アコーディオンaccordionなどがある。
骨牌(かるた) →タロット
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トランプ」の意味・わかりやすい解説

トランプ
Trump, Donald

[生]1946.6.14. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の実業家,政治家。第45代大統領(在任 2017~21)。フルネーム Donald John Trump。裕福な不動産開発業者の家庭に生まれた。1968年ペンシルバニア大学ウォートン校を卒業。父親の経営するトランプ・オーガニゼーションに入社し,1970~80年代に急速に事業を拡大した。1983年ニューヨークマンハッタンにトランプ・タワーを建設。1980年代末には多数のビルやホテル,分譲・賃貸集合住宅,カジノなどを保有し,航空業にも進出した。1990年代初頭,不動産業界の低迷を背景に経営不振に陥り,ほぼすべての個人資産を失ったとされるが,その後の好景気のもと 1990年代後半に経営を再建。2004年からリアリティ番組『アプレンティス』に司会者として出演し,抜け目なく,歯にきぬ着せぬ実業家として人気を博した。また自身の名をブランドとして活用することで,金融やオンライン教育など,さらに事業を多角化させた。1999年に改革党から大統領選挙出馬を検討。のち共和党に転じ,2012年の大統領選挙に際して,バラク・オバマ大統領のアメリカ国籍に疑義を呈したことで注目された。2015年に次期大統領選挙への出馬を表明。選挙戦においては,エスタブリッシュメントである共和党主流派に対抗する政治的アウトサイダーとして自身を位置づけ,支持を集めた。メキシコからの移民ムスリムの入国を制限するという過激な発言が共和党主流派を困惑させ,女性蔑視の言動が非難を浴びたが,2016年7月共和党の候補者指名を受けた。同 2016年11月の選挙で民主党の候補者ヒラリー・クリントンを破り,第45代大統領に選出された。

トランプ
trump; playing card

本来は切り札の意。カードゲームの一種でもあるが,日本ではカードそのものをトランプと呼ぶ場合が多い。普通はジョーカーを1~2枚と ♠,♡,♢,♣の4種 13枚ずつ 52枚のカードから成る。 13世紀頃に中国またはインドからヨーロッパに伝来して独自に発展した。初期にはタロットの呼び名で占いに用いられた。現在使われているものは 19世紀以後に統一された。ほかにもマークや枚数の違うものがフランス,ドイツ,スイスなどで使われている。

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百科事典マイペディア 「トランプ」の意味・わかりやすい解説

トランプ

カードを用いる室内遊戯の一種。プレーイング・カードplaying cardの日本での呼称で,トランプtrumpは本来〈切札〉の意。クラブ,ダイヤ,ハート,スペード各13枚とジョーカー1枚の計53枚のカードを使用。ゲームの種類は,七並べ,ばば抜き,トゥエンティワン(21),ツー・テン・ジャック,カナスタ,ブリッジポーカー,大貧民等,数多い。また占いや奇術にも使われる。起源は古代エジプト,インド,中国等の諸説があり,ヨーロッパへの伝来も8世紀のイスラム教徒説,十字軍説,7世紀のジプシー説等がある。14世紀末には欧州各国に普及した。日本には室町末期に渡来し,天正かるた,うんすんかるた等のかるた,花札と化して流行,明治初年に現在の形のものが輸入された。

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デジタル大辞泉プラス 「トランプ」の解説

トランプ

三立製菓株式会社が販売するビスケットの商品名。醤油味。1953年発売。

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世界大百科事典(旧版)内のトランプの言及

【骨牌】より

…日本には外来のカルタの流れをひく,おもに賭博に使われるかるた(花札など)と,古来の貝覆(かいおおい)の流れをひく,おもに教育を目的とするかるた(《小倉百人一首》など)とがある。なお,西洋かるたをトランプtrumpと通称するが,トランプは正しくは西洋かるたの切札のことをいう。
[賭博系かるた]
 16世紀後半に初めてポルトガル人が日本に持ち込んだと考えられるカルタは,今日のトランプとは別のもので,ハウ(棍棒),イス(剣),コップ(聖杯),オウル(貨幣)の4種がそれぞれ1から12まであって,合計48枚から成り,1の札に竜,10に女従者,11に騎士,12に王がそれぞれ描かれている。…

【賭博】より

…農村では旅籠屋が集会場を兼ねた賭博場であり祭日にはつねに賭博がなされた。中世末期にヨーロッパ南部に出現したプレーイング・カード(トランプ)は新しい型の賭博として熱狂的に愛好され,ヨーロッパ全土に広まった。この画期的な賭博用具は多くの婦人たちを賭博にひき入れた。…

※「トランプ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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