ノーマライゼーション(読み)のーまらいぜーしょん(英語表記)normalizaton

精選版 日本国語大辞典 「ノーマライゼーション」の意味・読み・例文・類語

ノーマライゼーション

〘名〙 (normalization 「正常化」の意)⸨ノーマリゼーション障害者高齢者を施設に収容し隔離するのではなく、健常者と一緒に同じように暮らすのが当然であり、そうするべきだという考え方

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デジタル大辞泉 「ノーマライゼーション」の意味・読み・例文・類語

ノーマライゼーション(normalization)

《正常化の意》高齢者や障害者などを施設に隔離せず、健常者と一緒に助け合いながら暮らしていくのが正常な社会のあり方であるとする考え方。また、それに基づく社会福祉政策。ノーマリゼーション。

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百科事典マイペディア 「ノーマライゼーション」の意味・わかりやすい解説

ノーマライゼーション

北欧精神遅滞者の処遇に関して主張された考え方で,障害者を特別視したり,特別扱いをするのでなく,平等に扱かわれ,かつ一般の社会で普通の生活が送れることを趣旨とする考え方。この考え方は精神遅滞者を対象とする分野だけでなく,障害者対策一般に広がり,最近では社会福祉の基本的理念一つとして承認されるようになっている。施設に隔離・分離するのではなく,普通の生活をするための障害者の住みやすい街づくりやサービスが重視される。→バリアフリーハートビル法福祉のまちづくり
→関連項目在宅福祉障害者基本法障害者プラン

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図書館情報学用語辞典 第5版 「ノーマライゼーション」の解説

ノーマライゼーション

障害者が障害のない人々と一緒に普通に生活できるようにすること,あるいはそのような理念.1950年代にデンマークの知的障害者の親の会の運動に関わっていたバンク=ミケルセン(Niels Erik Bank-Mikkelsen 1919-1990)が提唱した.1969年にスウェーデンのニィリエ(Bengt Nirje 1924-2006)が“ノーマライゼーションの原理”(The normalization principle)を発表したことを契機に広まり,国連の「障害者権利宣言」(1975)の土台ともなった.今日では社会福祉全般の理念として定着し,バリアフリー,ユニバーサルデザインといった考え方に具体化されている.日本の図書館の障害者サービスでは,誰もが同じように利用できる図書館サービスを提供することとして理解されている.

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知恵蔵 「ノーマライゼーション」の解説

ノーマライゼーション

1950年代、バンク・ミケルセン(デンマーク)らが関わっていた、知的障害者の家族会の施設改善運動から生まれた理念。障害を持っていても地域社会で普通の暮らしを実現する脱施設化など、社会環境の変革に寄与した。国連の国際障害者年(81年)を契機に認知度を高め、現代の社会福祉の基本理念となった。旧来の大規模入所型施設中心の福祉サービスは、人間性の阻害や一般社会からの隔絶を招き、障害者の差別・排除の構造を再生産し続けていた。その反省から、自宅やグループホームで「できるだけノーマルに近い生活を提供すること」を保障する社会の価値、物理的構造、サービスを整備していく理念。障害の有無にかかわらず平等に人権が保障され、自己のライフスタイルが主体的に選択でき、能力・経済効率主義にくみしない共生社会の模索でもある。自立生活運動、QOLの概念、当事者主体の理念、在宅サービスなども、ノーマライゼーションの思想が根底にある。

(中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノーマライゼーション」の意味・わかりやすい解説

ノーマライゼーション
normalization

障害者や高齢者がほかの人々と等しく生きる社会・福祉環境の整備,実現を目指す考え方。1950年代,デンマークの知的障害者収容施設で多くの人権侵害が行なわれていたことに対し,行政官ニルス・エリク・バンク=ミケルセンが提唱した理念で,1959年同国で制定された知的障害者法に盛り込まれたことから欧米諸国に広がった。従来の福祉活動で行なわれてきた,社会的弱者を社会から保護・隔離する傾向を反省し,すべての障害者の日常生活の様式や条件を,通常の社会環境や生活様式に可能なかぎり近づけることを目指す。また障害者が自己を確立し,社会的価値のある役割をつくりだし,それを維持できるよう援助していくことも大切であるとされる。日本では,1981年の国際障害者年をきっかけに認知され始めた。やがて国際社会における福祉の基本理念として定着した。

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世界大百科事典(旧版)内のノーマライゼーションの言及

【居宅保護・施設保護】より

…しかし,他の社会福祉の法は,法の制定当初は施設保護中心に施策が展開されていた。1981年の国際障害者年以降,日本においてもノーマライゼーションの原理(心身に障害を持つ者も,人間としての権利に基づいて,障害を持たない者と同じように地域社会で生活をしていくという考え方)の普及による脱施設化や施設の社会化,またコミュニティ・ケアへという社会福祉サービス全体の動きによって,在宅福祉サービスが社会福祉サービスの主流を占めるようになった。これまで施設保護で解決をはかってきた問題を地域社会の日常的な生活空間の中で解決することが目ざされてきており,施設保護の機能は徐々に変化し,より専門的な役割が期待される傾向を示している。…

【ソーシャル・アドミニストレーション】より

…しかし1950年代には,実践からさかのぼってその行政さらには政策を視野に入れ,それらのあり方を問うところに関心が移行し,福祉の社会化が主要課題となる。施設収容ケアに代わってコミュニティ・ケアが志向され,その流れはやがて障害者,高齢者のノーマライゼーションないしインテグレーション(正常化,統合化と訳される。高齢者,障害児,障害者について,従来とかく家庭生活,教育,雇用など通常の社会生活の場から引き離して福祉を図ってきたのを改めて,正常な社会生活に統合したなかで福祉が保障さるべきだとする理念)につらなってゆく。…

【福祉社会】より

…本来〈必要の王国〉と〈自由の王国〉とを区分するために考えられたシビル・ミニマムが,かえってどこまでも公の責任を追及するスローガンに変質したのも,けだし当然であった。コミュニティ・ケア,ノーマライゼーションないしインテグレーション(正常化,統合化)――高齢者,障害児,障害者について,従来とかく家庭生活,教育,雇用など通常の社会生活の場から引き離して福祉を図ってきたのを改めて,正常な社会生活に統合したなかで福祉が保障さるべきだとする理念――といった地域ケアの理念も,コストのかかる施設ケアを支える公的責任を回避して,安上がり福祉を目ざすものと非難されることが多かった。 日本では,経済システムも早くから日本株式会社といわれるほど官民一体型であり,もともと自由市場経済の基盤が弱いところへ,社会主義の立場からもひたすら福祉国家が追求されてきた。…

※「ノーマライゼーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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