翻訳|hatch
船において,貨物倉やその他の区画への貨物の荷役や物資の出し入れ,あるいは人の出入りのために甲板に設けられる開口。一般貨物船,鉱石運搬船,ばら積貨物船,Ro-Ro船(ロロせん)など,一般に乾貨物をクレーンなどで荷役し,船倉に積載して輸送する商船では,貨物倉の上部甲板にカーゴハッチ(倉口)と呼ばれる大きなハッチをもち,とくにコンテナー船では荷役効率を高めるため,幅は船幅の85%程度にもなる。暴露甲板に設けられる場合は水密,強度,剛性を保持するため周囲に縁材(ハッチコーミング)をつけ,この上にハッチカバーを展開する。ハッチカバーには種々の型式のものがあるが,航洋船では連結した複数の鋼製パネルをウィンチで開閉したり連結部を電動や油圧作動で開閉する型式が多い。荷役目的以外のハッチとしては,ハッチカバーを閉鎖したまま甲板から倉内へ入るためのインスペクションハッチ,食糧の積込用のハッチなどがあるが,いずれも必要最小限度の大きさの小開口とする。なお,住宅などにおいても同様の目的で設けられた開口をハッチと呼ぶ。
執筆者:吉田 宏一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
船の貨物倉またはその他の区画へ貨物を搬入・搬出したり、人が出入りするために設ける開口の総称。開口の周囲には板材を甲板に垂直に立て回して補強するが、これをハッチコーミングという。甲板上では、打ち込む海水や風雨の浸入を防ぐために、蓋(ふた)の役目をするハッチカバーが必要である。古くから使われていたハッチカバーは、ハッチコーミングの上にハッチビームを船体の横方向に約1メートル程度の間隔で並べ、その上に細長い木板製のハッチボードを船体の長さ方向に敷き詰め、その上から防水加工をした帆布を2、3枚かぶせて端を帯金で押さえるか、ロープで縛り付けていた。しかし、この方法では荷役に多くの人手と時間がかかるし、悪天候時には海水が浸入して沈没する危険もあった。1950年代の中ごろに現れた鋼製ハッチカバーは、機械化による労力の軽減と確実な閉鎖性で従来の欠点を克服し、急速に普及した。
[森田知治]
一般には船の甲板の昇降口をさすが、住宅建築では、間仕切の両側から物品の出し入れができるよう設けられた間口をいう。台所と食堂との間仕切に設けられた食器や料理の受け渡し口や、病院の薬受け渡し口などがある。
住宅におけるハッチは、台所と食堂の最短距離を通すことにより配膳(はいぜん)や後かたづけの合理化を目的としているが、両室を結び付け相互の空間に広がりを与えたり、台所の孤立感を和らげたりもする。上部のみを戸棚にしたり、戸棚の一部をくりぬいたり、あるいは壁面を切ったりする場合がある。また戸を閉められるようにすれば、台所と食堂をまったく独立した空間に変化させることもできる。
このほか、ハッチは、建物内の床や屋根などに設けられた人の出入りする開口部や、潜るように出入りする小さな出入口をさすこともある。
[中村 仁]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
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