性的少数者などのカップルの関係を公的に認める制度。2015年に東京都の渋谷区と世田谷区を皮切りに始まった。議会の承認が必要な条例と首長判断で導入できる要綱に基づくものがあり、自治体ごとに異なる。公営住宅の入居や一部の病院でパートナーの手術の同意ができるなど、各自治体が定めた内容のほか、携帯電話の家族割引など民間のサービスを受けられる場合もある。法律婚と異なり、配偶者控除や遺族年金などの法的権利は適用されない。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
「ドメスティック・パートナーシップdomestic partnership制度」の短縮した呼び方。パートナーシップの語義は「ともに家庭を築くパートナー関係」のことで、日本語では「事実婚・内縁関係」、英語ではcommon-law marriage(慣習法上の結婚)・civil union(市民的結合)など、広く行政および宗教的な手続を強制されない同棲(どうせい)関係をさすことばであり、それを法令などで保障する制度のことをいう。civil partnership(市民パートナーシップ)やregistered partnership(登録パートナーシップ)とよぶ場合もあり、法域によっておのおのの定義が異なることもある。
従来は異性カップルしか想定されなかったが、1980年代後半から欧米では「法の下の平等」を旗印に、同性カップルに「結婚の平等」を求める運動が現れ、とくに結婚制度のない同性カップルの関係およびその法的権利・責任関係をさすことばにもなった。
異性間の場合は事実婚・内縁関係に関する法令が整備されている国も多く、その場合、一定期間(多くは1年以上)をともに暮らした登録カップルは一般的に財産、相続、病室訪問、医療意思決定、課税控除、住宅、融資、養子縁組や人工授精、パートナーや共同の被扶養者に対する職場福利厚生などにおいて結婚に準じる権利・資格が保障される。これを同性カップルにも適用する国も増えたが、権利の範囲が限定される場合もある。世界では1989年にデンマークが初めて同性カップルに対して同制度を創設した。
日本で2015年(平成27)の東京都渋谷(しぶや)区・世田谷(せたがや)区から始まった同性パートナーシップ制度は、2022年(令和4)8月時点で全国220以上の自治体に拡大。東京都も同年11月の採用を発表し、日本での人口カバー率はそれで6割ほどとなる。しかし同制度は総じて行政による勧告・推奨・宣言にとどまり、公営住宅や賃貸住宅への入居や携帯電話料金・運賃・入場料などの家族割引、民間の各種保険などについて異性カップルとの不平等がないように謳(うた)うものの、法的な拘束力・強制力はない。また、法改定を伴う税や社会保険の優遇措置などの適用は、現在のところ同性カップルには認められていない。
同性パートナーシップ制度は多くの場合、同性婚制度への過渡的措置とみなされてきた。同性カップルにおいて「結婚・婚姻」ということばが用いられなかったのは、結婚が多くの場合、その地域の宗教・習俗と密接に関係し、それらの多くが同性愛および同性間の婚姻を忌避・排除してきたことによる。このため当初、パートナーシップ制度は、同性間の結びつきを、神に誓う宗教上の「結婚」とは異なる、純粋に近代市民法上(civil)の絆(きずな)(union/partnership)として認めることで、宗教的な異議・反対を抑える代替策として考えられた。デンマークのパートナーシップ制度でも、教会での挙式権は除外された。
日本の場合は同性婚を法律で「認めるべき」との世論が65%に達する(2021年3月、朝日新聞調査)が、自由民主党政権内に「伝統的な家族の破壊につながる」との固定観念が強く、前段階であるパートナーシップ制度ばかりか、SOGI(ソジ)sexual orientation and gender identity(性的指向・性自認)差別禁止の法制化も未達成である。
[北丸雄二 2022年9月21日]
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