糖タンパク質やムコ多糖を構成する糖の一つであるN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸とが交互に鎖状に結合した分子量20万から40万という高分子化合物で、コンドロイチン硫酸などとともに典型的なムコ多糖の一つ。動物の硝子体(しょうしたい)、関節液、臍帯(さいたい)(へその緒)、皮膚などに存在し、皮膚や臍帯ではコンドロイチン硫酸の量と同じくらい含まれている。非常に多量の水と結合してゲル状を呈し、関節の潤滑作用や皮膚の柔軟性などに関与し、また、その高度な粘り気によって細菌の侵入や毒物の浸透を防ぐことにも役だっている。さらに細胞の運動性を高める活性がある。しかし、細菌やヘビ毒、ハチ毒、ヒルの唾液(だえき)などにはヒアルロン酸を低分子化するヒアルロニダーゼが含まれており、この作用によって侵入することが知られている。
[村松 喬]
『高久史麿監修『新しい治療薬のポイント(1996前期)――患者のための医薬品解説つき』(1996・メディカルレビュー社)』▽『鈴木正人監修『新しい化粧品機能素材300』上(2002・シーエムシー出版)』
(小林千佳子 フリーライター / 2009年)
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N-アセチル-D-グルコサミンの C3 位にD-グルクロン酸が,またD-グルクロン酸の C4 位にN-アセチル-D-グルコサミンが交互にβ-グリコシド結合をした多糖.動物組織に広く分布し,ほかの酸性ムコ多糖と共存する.ウシの眼のガラス体,さい帯,関節液に多量に存在する.皮膚,項靭帯,大動脈,腱,心臓弁,サメの皮,クジラの軟骨,ヒトの血清,鶏冠粘液水腫,脳などにも見いだされる.ヒアルロン酸はタンパク質と結合して粘ちゅうな状態で接合物質として存在し,細菌や毒物の侵入を防いでいると考えられている.白色の無定形物質.水に可溶.いちじるしく粘度の高い溶液となる.-70~-80°(水).分子量 106~107.[CAS 9004-61-9]
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…天然にはこれら3種のウロン酸が存在し,多糖類の成分として分布している。たとえば,高等動物の各種の組織にはヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸,ヘパリンなどの酸性多糖があって,組織の構築に関与しているが,グルクロン酸はこれらの多糖の重要な構成成分である。また,植物の細胞壁構成成分であるペクチンにはガラクツロン酸が,褐藻の粘質物であるアルギン酸には多量のマンヌロン酸が含まれる。…
…正常関節液は,透明で淡黄色を呈し,きわめて粘稠(ねんちゆう)性に富んでいる。この高い粘稠性はヒアルロン酸という酸性ムコ多糖体が存在するためで,この物質は滑膜内被細胞から分泌される。他の成分のうち,低分子物質(ブドウ糖,尿素,尿酸,電解質など)は,血清におけると同じ種類のものがほぼ同じ濃度で存在する。…
…炭水化物が光合成植物のみならず,多くの動物組織においても主たるエネルギー源となっている理由としては,遊離型で直ちに利用できる単糖と,貯蔵型の多糖の相互変換が比較的容易に酵素的に行われるという炭水化物の特性が考えられる。 第2の機能は形態構築であり,この役割を果たす多糖として,セルロース,細菌細胞壁の多糖,そして高等動物の基質中のプロテオグリカンやヒアルロン酸(ムコ多糖)などをあげることができる。これらの分子が形態上の機能を果たしうる理由はさまざまであり,以下のいずれかに対応する。…
…ウロン酸,硫酸といった酸性基をもつものが多く,これらは酸性ムコ多糖とも呼ばれる。代表的なムコ多糖はヒアルロン酸hyaluronic acid,コンドロイチン硫酸,そしてケラタン硫酸keratan sulfateであり,これらは細胞間の基質の重要成分となっている。またいま一つの代表例であるヘパリンには抗血液凝固作用がある。…
※「ヒアルロン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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