フッ化水素(読み)ふっかすいそ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ化水素」の意味・わかりやすい解説

フッ化水素
ふっかすいそ
hydrogen fluoride

水素フッ素化合物。フッ化水素カリウムKHF2を熱するか、蛍石(ほたるいし)CaF2に濃硫酸を加えて熱すると得られる。常温無色発煙性の液体。式量が小さいのに融点や沸点が高いのは、水素結合により分子が会合しているためである。気体の蒸気密度は、90℃以上でHF、32℃付近では(HF)2~(HF)3に相当し、固体ではジグザグの鎖構造が認められる()。液体は電気を導かないが、無機・有機化合物をよく溶かす。水によく溶け、フッ化水素酸を生じる。フッ素化剤で、フロンガス冷媒)、ペルフルオロ化合物、フッ素樹脂、フッ素の製造原料アルキル化などの有機合成触媒としての用途がある。きわめて毒性が強く、吸入すると肺水腫(すいしゅ)をおこす。また気体が指にしみると爪の間が痛む。

[守永健一・中原勝儼]


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化学辞典 第2版 「フッ化水素」の解説

フッ化水素
フッカスイソ
hydrogen fluoride

HF(20.01).フッ化水素カリウムを加熱すると得られる.工業的には,蛍石に濃硫酸を作用させてつくる.無色,特有の刺激臭のある発煙性液体.密度1.0015 g cm-3(0 ℃).融点-83.1 ℃,沸点19.54 ℃,臨界温度188 ℃.沸点がほかのハロゲン化水素に比べて異常に高いのは,水素結合による重合のためである.水,エタノールに易溶.水溶液はフッ化水素酸とよばれる.液体フッ化水素はこれまでに知られている最強の酸の一つである.硝酸のようなほかの酸は次のように塩基としてはたらく.

HNO3 + HF → H2NO3 + F

液体フッ化水素は誘電率が非常に大きく,多くの無機および有機化合物を溶かす.水素よりイオン化傾向の大きい金属のほとんどは侵される.アルカリ金属,アルカリ土類金属,銀,鉛,亜鉛水銀などの酸化物,水酸化物と反応してフッ化物をつくる.ガラスなどのケイ酸塩と反応して四フッ化ケイ素を生じる.ポリエチレン,銅,白金などの容器に貯蔵される.フレオン(冷媒)や有機フルオロカーボンなどフッ素化合物の製造,ガラスの目盛付けや模様付け,金属表面のフッ化処理,アルキル化パラフィン製造の触媒などに用いられる.きわめて毒性が強い.[CAS 7664-39-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フッ化水素」の意味・わかりやすい解説

フッ化水素
フッかすいそ
hydrogen fluoride

化学式 HF 。蛍石に硫酸を作用させて得られる無色,刺激性の強い気体。腐食性が強く,有毒。比重 1.27,融点-83.7℃,沸点 19.7℃。水,アルコールに易溶。ベンゼン,トルエンなどの有機溶媒にも溶ける。水溶液はフッ化水素酸で,腐食性が強く,ガラスなどのケイ酸質をおかす。電球つや消し,フッ化水素酸の二次製品 (フッ化カリウム,フッ化マグネシウム,フッ化バリウム,フッ化セリウムなど) 製造,メッキ (亜鉛メッキの際の酸洗い) ,分析試薬などに用いられる。

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知恵蔵mini 「フッ化水素」の解説

フッ化水素

水素とフッ素の化合物で、無色の気体。蛍石に硫酸を加えるなどの方法で得られる。水溶液のフッ化水素酸は腐食性が極めて強く、フロンガスの原料となるほか、半導体の回路形成やガラスのつや消しなどに使われる。半導体生産に使われる高純度のものは日本メーカーが約8割のシェアを握るとされる。2019年7月、政府はフッ化水素を含む化学製品3品目について、韓国への輸出手続き簡略化の優遇措置をやめることを決めた。

(2019-7-18)

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