出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
メキシコの東に広がる、ユカタン半島とキューバ島、アメリカのフロリダ半島に囲まれた水域。南岸のメキシコのカンペチェ州に臨む内湾をとくにカンペチェ湾という。東はフロリダ海峡によって大西洋に、南はユカタン海峡によってカリブ海に通じている。面積約160万平方キロメートル。最深部は水深4376メートルのシグズビー海淵(かいえん)で、ミシシッピ川河口とユカタン半島先端の中間にある。ユカタン半島の北にカンペチェ堆(たい)の大陸棚が発達し、また湾中央部は水深3000メートル以上の平坦(へいたん)面となっている。カリブ海よりユカタン海峡を通って流れ込む赤道海流が、湾内で著しく勢力を増して、フロリダ海峡から流れ出る。9月は湾内を時計回りに流れ、12月はミシシッピ川河口に向かい、一部はメキシコに南下、フロリダ海峡に向かう。これがガルフストリームとなって大西洋沿岸を北上する。8月から9月にかけて、ハリケーンがカリブ海より北上し、湾岸からフロリダに被害を及ぼす。とくに夏型は北大西洋の高気圧が強力で、西進してグアテマラやメキシコを襲う。メキシコ湾は漁業資源に恵まれ、エビ、スズキ、タイの漁獲が多く日本漁船も多く出漁している。また湾岸には油田が多く、アメリカはテキサスのヒューストンを中心として東西沿岸に、メキシコはタンピコからトゥスパン、ポサ・リカや南のカンペチェまで石油地帯が延びている。古代はマヤ、アステカの古代文明が栄えた地で、スペインのアメリカ進出以後、海賊が活躍した。当時の要塞(ようさい)も残っている。
[高木秀樹]
北アメリカ大陸の南東部の大きな湾。アメリカ合衆国の南岸,メキシコの東岸,キューバ島の西部によって囲まれた海域。面積約157万km2。東西1600km,南北1300km。平均水深3700m。フロリダ半島とキューバ島の間にあるフロリダ海峡によって大西洋に,ユカタン半島とキューバ島の間にあるユカタン海峡によってカリブ海に通じている。湾の最深部は,ヒューストンの南東約500kmにあり,4023m。フロリダ半島の西側,ユカタン半島の北側と西側には,広い大陸棚が発達している。赤道反流の一部が,ユカタン海峡を通って湾内に流入し,湾内を右回りに循環して,フロリダ海峡から大西洋に流出している。湾の沿岸地域は砂質であって,湿地や砂州が多く,良港は少ない。魚類資源が豊富であり,漁業が盛んであるが,とくにユカタン半島付近の大陸棚はエビの好漁場となっている。メキシコの東岸には,石油の埋蔵量が多い。
執筆者:田嶋 久
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