翻訳|monorail
ふつうの鉄道が2本の鋼製レール(軌条)を利用して車両を走らせるのに対し,1本の走行軌条(走行桁)を用いて車両を走行させる鉄道をいう。単軌鉄道ともいい,跨座(こざ)式,懸垂式の別がある。
モノレールの発明は19世紀初めにさかのぼり,種々の考案がなされたが,実用化の第一歩は,フランス人ラルティーグCharles Lartigueによる跨座式に始まった。1888年アイルランドで蒸気機関車を使用する跨座式の営業線が開業し,1924年まで旅客,貨物の輸送に用いられた。またドイツのランゲンEugen Langen(1833-95)の考案による懸垂式の営業線は,1901年ドイツ・ルール工業地帯のブッパータールで開業し,電車運転の方式を用いながら今日なお有効に機能し続けている。ブッパータールでの長期にわたる実用は,市街地化に伴う用地の取得困難に対し,河川上空に高架軌道を架設するアイデアにより支えられてきた。
第2次世界大戦後,急激なモータリゼーションによってもたらされた都市内交通の混乱に伴って,地下鉄道,高架式普通鉄道に比べ建設費が割安なモノレールは,広く注目を浴びるに至った。高架構造に軌道を建設すると,道路,河川などの上空部を効果的に利用できるという長所がある。コンクリート製軌条を敷設し,走行車輪にゴムタイヤを使用すると,鋼製レールに比して,急こう配に対処しやすく,加減速が容易な点も利点とされている。反面,運転経費の割高なことが欠点となる。
1950年代以降,アメリカ合衆国,ヨーロッパで新式モノレールがいくつか開発されたが,実用化ではいち早く技術導入にふみきった日本が,画期的な成功例を保持している。オリンピック(1964)開幕直前,東京の都心部と東京国際空港を結んで開業した跨座式モノレールは,空港連絡鉄道の有効性を実証しつつ,今日に至っている。85年には,市街地内通勤輸送を使命とする都市モノレール(跨座式)が,北九州市の小倉で開業した。懸垂式の代表例には,神奈川県の大船と江の島を結ぶ湘南モノレール(1971全通)がある。なお,モノレールかどうかは議論が分かれるが,札幌市営地下鉄(1971開業)は,レールは1本だが左右1対のゴムタイヤがコンクリート路面上を転ずる,案内軌条式をとっている。
執筆者:中川 浩一
モノレールの形式は,基本的には,車体が走行桁にまたがった形で走行する跨座式モノレールと,車体が走行桁からぶら下がった形で走行する懸垂式モノレールの二つに大別される。細部の差によってそれぞれにもいくつかの型があるが,現在,日本で実用的な交通機関として用いられているのは,跨座式ではアルベーグ型およびこれを改良した日本跨座式と呼ばれるもの,懸垂式ではサフェージュ型と呼ばれるものである。
アルベーグ型および日本跨座式のモノレールは,鉄筋またはプレストレストコンクリートあるいは鋼鉄製の,断面がほぼ矩形の桁を走行桁とし,車両側のゴム製の支持車輪,案内(誘導)車輪,安定車輪がこの走行桁を囲んで走行するものである。すなわち,車両の支持と推進を受けもつ支持車輪(他の2種の車輪よりやや大きい)は走行桁の頂面を転送,また軌道の曲直に応じて車両の走行方向を誘導する案内車輪および車体の転倒を防ぐための安定車輪は,それぞれ垂直軸のまわりに回転し,走行桁の上部および下部を両側からはさむようにして転送する(図1)。
サフェージュ型の懸垂式モノレールでは,走行桁は下部が開口したセミボックス断面の鋼構造が用いられ,その内部を八つのゴム製車輪で構成されたボギー台車が走行するようになっている。車両の支持と推進を受けもつ4輪(駆動車輪)は比較的大きく,走行桁内の水平な走行版上を転送し,他の比較的小さい4輪(案内車輪)は走行桁内の側壁に設置されている誘導版に接触しながら垂直軸のまわりを回転して車両を誘導する(図2)。車体は台車の下に装着される。
なお遊園地などでは,これらからかなり変形した形のモノレールも多い。
前述のようにモノレールは主として高架構造をとり,また占用面積も比較的少なくてすむため,河川上空をはじめ道路上にも設置可能で,限られた都市空間を有効に利用できるという利点をもつ。また,ゴムタイヤを使用するので,騒音も少なく,急こう配の走行もでき,台車の構造から急曲線でも走行可能であり,路線の選定の自由度が大きい。もちろん,消防活動の問題などから道路の拡幅を一部伴う場合もあるが,建設費は地下鉄に比べれば安価である。輸送力ではバスよりははるかに大きいが,日照,都市美観などの問題から高架駅の乗降場の長さが制限され,列車編成長にも限度が生ずるため地下鉄や高架鉄道には劣る。
このような点から,新たな用地の取得が困難な日本の都市において,地下鉄を建設するほどは利用者が多くなく,一方,バスでは輸送力が不足する場合の交通機関として適性があると考えられているが,建設費が高価であるだけに開業後の収支均衡をとりにくい場合が多く,普及にも限度が生じているのが現状である。
執筆者:八十島 義之助
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[路線]
1996年3月末現在で開業中の鉄道(JRを除く)は169事業者6885.9km,軌道は30事業者446.8km,合計181事業者7332.7kmある(うち18事業者は地方鉄道と軌道を併有)。この中には,特殊な構造を持つ鉄道として,鋼索鉄道(ケーブルカー)22事業者24.0km,懸垂式鉄道および跨座式(こざしき)鉄道(モノレール)6事業者31.4km,案内軌条式鉄道(ゴムタイヤ式のいわゆる新交通システムなど)8事業者79.1km,無軌条電車(トロリーバス)1事業者6.1kmが含まれている。このほか,普通索道(ロープウェー)が188線302.6km,甲種特殊索道(夏山リフト)が172線73.3km,乙種特殊索道(スキーリフト)が2770線1720.2km,丙種特殊索道(スキートー)が43線18.6kmある。…
※「モノレール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
期日前投票制度は、2003年6月11日公布、同年12月1日施行の改正公職選挙法によって創設された。投票は原則として投票日に行われるものであるが、この制度によって、選挙の公示日(告示日)の翌日から投票日...
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