フィンランドの女性画家、児童文学作家。スウェーデン系の出身で、作品もスウェーデン語で書く。スウェーデンやフランスで絵画を学ぶかたわら、1930年代より政治誌『ガルム』に表紙絵を寄稿する。その後、表紙絵に自らのサインのかわりに描いていたムーミントロールを主人公にした『小さなトロールと大洪水』(1945)を著して挿絵画家および作家としてデビュー。以後、『ムーミン谷の彗星(すいせい)』(1947)をはじめ、幻想的な「ムーミン物語」を8冊発表。70年に発表した『ムーミン谷の11月』が、シリーズ最後の作品となった。フィンランドの海辺を舞台に、孤独、愛情、理解、慰めをやさしく語り、広く世界に真価を認められる。フィンランドのルドルフ・コイブ賞、スウェーデンのニールス・ホルゲルソン賞とエルサ・ベスコフ賞を、66年には国際アンデルセン賞を受賞。ムーミン・シリーズは30以上の言語に翻訳され、日本では発行部数1000万部を超えたといわれた。また、69年以来三度テレビアニメ化され、90~91年のアニメは本国フィンランドでもブームを巻き起こしたという。ほかに絵本『それからどうなるの?』(1952)、少女小説『ソフィアの夏』(1971)、自伝的小説『彫刻家の娘』(1968)、短編小説集『聴く女』(1972)などがある。
[山内清子・末延 淳]
『山室静他訳『トーベ・ヤンソン全集』全8巻(1968~72・講談社)』▽『富原真弓訳『トーベ・ヤンソン・コレクション』全8巻(1995~98・筑摩書房)』▽『富原真弓訳『ムーミン・コミックス』全14巻(2000~01・筑摩書房)』
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…この伝統はグリーペM.Gripeにうけつがれている。フィンランドのT.ヤンソンはムーミンを主人公にした不思議な世界をつくりあげた。 そのほかの諸国からひろうと,スイスのJ.シュピーリの《ハイジ(アルプスの少女)》(1881)とウィースJ.R.Wyssの《スイスのロビンソン》(1812‐13),ハンガリーのF.モルナールの《パール街の少年たち》(1907),チェコスロバキアのK.チャペックの《童話集》(1932)が見落とせない。…
…これは,フィンランドが,19世紀はじめまで長い間スウェーデンの領土であり,そこではスウェーデン語が用いられていたという事情によるものである。初期プロレタリア文学のアンデルソンや,一連の《ムーミン》もので知られる児童文学のヤンソンなどの作品は,このなかに入れられるものといえよう。【田中 三千夫】
[音楽]
キリスト教布教以前にはスカルド詩の詩人たちが活躍し,スペルマンspelmanと呼ばれる楽師がヒンメル(チター型の弦楽器),ノーレルール(樺の樹皮で巻かれた長大なホルン),フィオール(フィドル),ニッケルハルパ(4弦楽器),クラリネット,ロートピーパ(羊飼の笛)等の民俗楽器を演奏し,また農民たちも日常歌と踊りに親しんでいた。…
※「ヤンソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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