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証券取引所で有価証券の売買を可能にすること。具体的には、各証券取引所が定める上場審査基準を満たした主体の発行する証券が、当該取引所での流通を許されることである。
たとえば、国内企業が東京証券取引所(東証)への株式上場を希望する場合、まずは上場時に見込まれる株主数、流通株式数、時価総額、連結純資産総額などの形式要件について、一定の水準を満たしているかがチェックされる。そのうえで企業経営の健全性や収益性、コーポレートガバナンス(企業統治)や内部管理体制の有効性、情報開示の適正性などの定性的な評価が行われる。これらをクリアすると企業は上場会社となり、発行する株式は上場銘柄として扱われることになる。上場審査基準が設けられているのは、投資家保護に資するためである。
上場に際しては、新規株式公開(IPO)が同時進行する。株式の公開と上場とは論理的には別の概念であるが、上場に株式公開は必須(ひっす)であるから、一般に両者は一体化してとらえられる。
上場は企業にさまざまなメリットを与える。上場銘柄の株価は日々新聞の相場欄に掲載されるし、メディアで社名を取り上げられる機会が増えることで、知名度の向上が期待される。その結果、人事面では優秀な人材を確保しやすくなり、上場審査基準をクリアしていることは社会的な信用を高め、取引先には安心感を与える効果がある。金融機関との関係でも、円滑な与信交渉などが見込まれる。
社内的には、上場への準備過程で内部管理体制の充実が図られ、上場後も経営体制の持続的な見直しが行われるため、健全な業務環境の構築が進む。また、ストックオプションや従業員持株制度などの導入を行いやすくなり、経営者や従業員の仕事に対するモチベーション(動機づけ)が向上する。創業者は、株式の公開・上場に際して自らの持株を売り出すことで、創業者利益を手にすることができる。
投資家にとっては、流通市場でいつでも公正な価格での売買が可能になるほか、財務データなどの情報入手が容易となり、投資意思決定上の効率性が高まる。
一方、上場にはデメリットもある。準備に相応の時間を要するし、証券取引所への審査手数料、証券会社への引受手数料などの諸費用が発生する。上場後も、上場維持のために、監査報酬や株主総会の運営費などが必要になる。また、上場会社には、有価証券報告書や事業報告書の適時開示義務が生じ、それら書類の印刷費や株主への郵送費が必要なほか、本来は秘匿したい不都合な事実の公開を求められることもおこりうる。さらに、敵対的買収に晒(さら)されるリスクがあるし、しだいに株主による配当政策や財務戦略などへの干渉が増える傾向にあり、経営者の行動が縛られるケースも認められる。
ただ、企業にはそもそも社会の公器という側面があるから、上場は多くの企業にとって一つの到達目標となる。もちろん上場が最終目標ではないから、上場は企業にとってさらなる成長のための通過点と位置づけられる。
[高橋 元 2017年12月12日]
証券取引所がある有価証券を,その開設する有価証券市場における売買取引の対象とすることをいう。上場可能な有価証券は株券,債券,転換社債券等であるが,証券取引所は原則として有価証券の発行者からの申請によって上場を行う。発行者からの申請によって証券取引所がその発行する有価証券を上場しようとするときは,大蔵大臣の承認を受けなければならない(証券取引法110条)。上場申請の手続,上場審査,上場有価証券の管理,上場廃止等については,証券取引所の有価証券上場規程および上場審査基準に定められている。証券取引所が上場審査を行って有価証券の上場を適当と認めた場合には,大蔵省へ上場申請を行う。大蔵大臣の上場承認があって初めて上場が決定する。
上場有価証券の発行者を上場会社といい,そうでない会社は非上場会社ないし未上場会社といわれる。上場有価証券の代表は株券であり,上場審査基準も株券上場審査基準が中心になっている。株券の上場審査は形式審査と実質審査に分けられるが,形式審査は上場審査基準に基づいて行われる。上場審査基準には上場申請有価証券の発行者の資本金,純資産,純利益,配当などの審査項目があり,審査項目のすべてに適合している発行者について実質審査が行われる。実質審査は,公正な株価形成と適正な流通および投資者保護の見地から,上場会社にふさわしい体質や経営姿勢をもっているか否かについて行われる。東京,大阪,名古屋の3取引所には,市場第一部と市場第二部があり(そこに上場している会社をそれぞれ一部上場会社,二部上場会社という),初めて上場が承認された会社はまず市場第二部に指定される。市場第二部の会社が資本金額,株式分布状況,売買高などで市場第一部銘柄指定基準に適合すれば,市場第一部に〈指定替え〉される。逆に市場第一部銘柄でも第一部の指定基準を満たさなくなり第二部の指定基準に適合すれば,第二部に指定替えされる。資本金の大きな会社でも第二部に上場されていることがあるのは,第一部銘柄指定基準を満たしていないからである。前記3取引所以外の証券取引所には市場第一部と第二部の区別はなく,形式審査基準はゆるやかになっている。また上場会社が銀行取引を停止されたり,会社更生法の適用を申請するなど上場廃止基準に該当することとなった場合には,原則として整理ポストに割り当てられ,そこで一定期間(通常3ヵ月)売買取引が行われたあとで,上場廃止される。
→証券取引所
執筆者:飯尾 博信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について 情報
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…またその取引方法は相対(あいたい)(交渉)売買である。 ある証券に,特定の証券取引所内部での取引対象たる資格を付与することを上場(じようじよう)という。上場に際して,取引所は通常当該証券およびその発行主体につき一定の資格要件の具備を要求し,これを審査する。…
※「上場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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