不動産投資信託(読み)フドウサントウシシンタク(その他表記)real estate investment trust

デジタル大辞泉 「不動産投資信託」の意味・読み・例文・類語

ふどうさん‐とうししんたく【不動産投資信託】

投資信託の一種。投資家から集めた資金でさまざまな不動産を購入し、賃貸収入や売却収益を投資家に配当として還元するもの。日本では平成12年(2000)投資信託法改正で、不動産を投資信託の運用対象とすることが認められるようになった。これによって企業は不動産を証券化して資金の調達ができるようになり、個人投資家は少額資金で不動産に投資することが可能となった。REITリート(real estate investment trust)。
[補説]日本におけるこの投資信託を日本版REITJ-REITなどともいう。

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共同通信ニュース用語解説 「不動産投資信託」の解説

不動産投資信託(REIT)

投資家から集めた資金でオフィスビルや物流・宿泊・商業施設などを買い、賃料収入を分配する金融商品。英語の頭文字から「リート」と呼ばれる。東京証券取引所にはREITの市場が2001年に生まれており、個人でも少額から株式と同じように売買できる。7月末時点で63銘柄が上場し、時価総額合計は15兆円程度に達する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不動産投資信託」の意味・わかりやすい解説

不動産投資信託
ふどうさんとうししんたく
real estate investment trust

元来、投資信託は有価証券を対象とした金融商品であるが、そのスキーム(仕組み)を実物資産である不動産に適用したもの。不動産投信と略称され、英語の頭文字をとってREIT(リート)ともいう。日本においては、在来の証券投資信託が契約型であるのに対して、不動産投資信託は会社型であり、証券取引所(金融商品取引所)に上場されることで一般の株式と同様に売買が可能となるなど、投資対象資産としての不動産の欠点である流動性の乏しさを解消している。また、不動産は取引価格が高額で個人投資家には分散投資がむずかしいが、共同投資という投資信託のスキームを用いることで少額資金を集積して大きな基金(ファンド)を構築し、分散投資によるリスク管理を可能にしている。

 不動産投資信託の歴史は古く、アメリカでは19世紀にすでに組織的に行われていた。それは、当時のマサチューセッツ州で不動産を投資目的で取得することが禁じられていたこと、法人税が非課税であったこと、などを背景に考えられたものである。ただし、その後の判例で不動産投資信託にも課税されるようになり、いったんは消滅している。これに対してヨーロッパにおける不動産投資信託は、1938年にスイスで誕生している。その後、オランダ(1947)、西ドイツ(1959)、フランス(1963)と広がりをみせたが、スイスでの発展がもっとも顕著であった。その理由として、世界的な不況によりスイス国内での資本市場も停滞していたなかで、投資物件としての不動産の優位性が注目された点を指摘しうる。同時に、直接的な不動産投資には多額の資金が求められるという桎梏(しっこく)があるが、その課題解決が共同出資と資金集約という投資信託の機能に期待された面もある。加えて、スイスという狭隘(きょうあい)な地理的条件(不動産の希少性)とそこに流入する豊富な海外資金の存在が不動産投資信託の普及・拡大を支援した。一方、アメリカにおいては、1960年に今日的なREIT制度につながる法的整備が進み、一定の条件を満たせば受益者に非課税措置が認められたことで、不動産投資信託が再スタートをきり、その後は曲折を経ながらも発展の道をたどっている。

 不動産投資信託は、多数の投資家から集めた資金で不動産を購入し、そこから生じる賃貸料や売却益などを投資家に分配する。具体的な投資対象としては、アパートを中心として独立家屋、倉庫、店舗、事務所、ガレージなどがあげられるが、工場、別荘などは堅実性維持の思想によるリスク回避の視点から原則として除外される。不動産を保有する企業にとっては、資産の証券化を通じて資金調達の道が開かれることにもなる。

 日本では、2000年(平成12)の「投資信託及び投資法人に関する法律」(略称、投資信託法)改正により、投資信託が不動産を運用対象とすることが認められ、2001年から制度化された。日本の不動産投資信託は、JAPANのJを付して「J-REIT(ジェーリート)」ともよばれる。不動産投資法人が投資証券を発行し、投資証券は証券取引所に上場されて、投資家は市場で売買を行う。購入しやすい価格水準や相対的に高い利回りが好感され、発足以来拡大基調で推移している。2023年(令和5)末時点における不動産投資信託の純資産総額は、公募形態が11兆8649億円、私募形態は3兆5380億円となっている。

[高橋 元 2024年8月16日]

『あおぞら銀行不動産投資信託研究会編著『不動産投資信託がよくわかる本』(2001・東洋経済新報社)』『森藤有倫著『不動産投資信託の計理・税務』(2001・税務経理協会)』『パートナーズ国際共同公認会計士事務所編『不動産投信活用マニュアル』(2001・ぎょうせい)』『井出保夫著『REITのしくみ』(2002・日本実業出版社)』『一般社団法人投資信託協会編・刊『わかりやすいリートガイド』(2023)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不動産投資信託」の意味・わかりやすい解説

不動産投資信託
ふどうさんとうししんたく
Real Estate Investment Trust; REIT

投資家から集めた資金を不動産で運用し,賃貸収入や売却益などを原資にして,投資家に配当を分配する金融商品。一般投資家が不動産投資するための手法として,1960年代にアメリカ合衆国で導入された。日本では,1998年に導入された会社型投資信託の運用資産の対象に不動産が認められ,2000年の「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正によって,有価証券に限定されていた投資信託の運用対象が拡大され,不動産に投資する目的で資金を投資家から募り,ファンドを組成する資金運用型スキームが不動産投資信託として解禁された。これを「J-REIT」と呼ぶ。J-REITの場合,ファンドの受け皿は投資法人と投資信託がある。東京証券取引所に上場されている J-REITは会社型投資信託。投資法人制度については,2000年の「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正によって,不動産等への投資に関する規制が整備されたほか,2006年に成立した金融商品取引法では,投資運用業を営む金融商品取引業者が不動産等の資産への投資として運用する場合は,兼業の届け出を義務づけている。

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知恵蔵 「不動産投資信託」の解説

不動産投資信託

投資家から集めた資金で不動産を運用し、賃貸料、売却益などの収益を分配する投資信託。一般にはREIT(リート)と呼ばれるが、日本では不動産保有者と運用者を分けるなどの規制があるため、区別してJ‐REITと呼ぶ。証券取引所に上場され、株式と同じように売買することが可能。米国では1世紀以上の歴史があるが、日本では2001年9月に第1号が上場され、2008年2月現在東証に41銘柄が上場されている。当初は優良オフィスビル中心の運用だったことから利回りに大きな差は生じなかったが、現在は住宅や商業施設など運用対象が多彩になり、銘柄ごとの利回りや価格に差が生じるようになった。07年からは海外不動産も運用対象として組み入れ可能。空室率の上昇や賃貸料の下落など、不動産に特有のリスクを伴う。

(熊井泰明 証券アナリスト / 2008年)

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投資信託の用語集 「不動産投資信託」の解説

不動産投資信託


一般的には、不動産に対して投資する投資法人・投資信託を指す。
厳密には、投資法人と投資信託は仕組みが異なるため、契約型の仕組みを用いて不動産に対して投資する投資信託を指す。
また、ファンドオブファンズなどの仕組みを用いて不動産投資法人に対して投資する投資信託をこのように呼ぶことがある。

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