中務(読み)ナカツカサ

デジタル大辞泉 「中務」の意味・読み・例文・類語

なかつかさ【中務】[人名]

平安中期の女流歌人三十六歌仙一人宇多天皇皇子中務卿敦慶あつよし親王王女。母は歌人の伊勢家集に「中務集」がある。生没年未詳。

なか‐つかさ【中務】

《「なかづかさ」とも》「中務卿」「中務省」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「中務」の意味・読み・例文・類語

なか‐つかさ【中務】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 中近世は「なかづかさ」 )
    1. なかつかさきょう(中務卿)」または「なかつかさしょう(中務省)」の略。
      1. [初出の実例]「天皇御中務南院、宴五位已上」(出典:続日本紀‐天平勝宝五年(753)正月癸卯)
    2. 女房の呼び名。近親に中務省の官人がいる場合の命名。
      1. [初出の実例]「中納言の君、中つかさなどやうの、おしなべたらぬ若人どもに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  2. [ 2 ] 平安中期の女流歌人。三十六歌仙の一人。宇多天皇の皇子中務卿敦慶親王の女。母は歌人伊勢。源信明(さねあきら)の妻。和歌は「後撰和歌集」以下の勅撰集に見える六九首のほか、家集に「中務集」がある。生没年不詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「中務」の意味・わかりやすい解説

中務 (なかつかさ)
生没年:912?-988?(延喜12?-永延2?)

平安中期の女流歌人。三十六歌仙の一人。父は宇多天皇の皇子敦慶(あつよし)親王,母は古今集時代最高の女流歌人の伊勢。父が中務卿だったので,中務という女房名で呼ばれた。太政大臣藤原忠平や,その息で同じく太政大臣になった実頼の女房であった。母の伊勢に次いで当時最高の女流歌人と評価され,《後撰和歌集》以下の勅撰集に69首も入集したほか,家集に《中務集》があり,夫であった源信明(さねあきら)の家集《信明集》にも歌を残している。〈忘られてしばしまどろむ程もがないつかは君を夢ならで見む〉(《拾遺集》)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中務」の意味・わかりやすい解説

中務
なかつかさ

生没年不詳。平安中期の女流歌人。宇多(うだ)天皇の第四皇子敦慶(あつよし)親王と歌人伊勢(いせ)との間に生まれた。名称はおそらく中務卿(きょう)であった父の官名によるのであろうが、彼女の確かな宮仕えの記録がなく、それがどういう機会に与えられたものであるかは不明。源信明(さねあきら)、平かねき、藤原実頼(さねより)、元良(もとよし)親王など、彼女と関係のあった男性は多いが、そのなかで信明との間がもっとも長く、深かったようで、2人の間には多数の贈答歌が残されている。三十六歌仙の1人で、有名歌合(うたあわせ)にしばしば参加し、『後撰(ごせん)和歌集』以下の勅撰集に六十数首入集。家集に『中務集』がある。

 さやかにも見るべき月をわれはただ涙に曇る折りぞ多かる
[久保木哲夫]

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朝日日本歴史人物事典 「中務」の解説

中務

生年:生没年不詳
10世紀,平安時代の歌人。宇多天皇の皇子敦慶親王と伊勢の子。三十六歌仙のひとり。実名は不詳。中務は,父の官職中務卿による女房名。藤原忠平や実頼に仕えたといわれており,村上・冷泉・円融朝期に活躍。専門歌人としての名声が高く,歌合や屏風のために詠作を求められることが多かった。『後撰集』以下の勅撰集に69首入集している。源信明 はじめ藤原実頼,藤原師氏,元良親王,常明親王などとの恋愛が知られており,信明の「恋しさは同じ心にあらずとも今夜の月を君見ざらめや」に対する返歌「さやかにも見るべき月を我はただ涙にくもる折ぞ多かる」など人の心を引く素直な恋愛歌も多く残している。

(中周子)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中務」の解説

中務 なかつかさ

?-? 平安時代中期の女官,歌人。
中務卿敦慶(あつよし)親王の娘。母伊勢(いせ)とともに三十六歌仙のひとり。中務は女房名で,父の官職名から。藤原忠平・実頼(さねより)父子につかえ,永祚(えいそ)元年(989)以後に81歳以上で死去したといわれる。作品は「後撰和歌集」以下の勅撰集に69首おさめられている。屏風(びょうぶ)歌や源信明(さねあきら)との相聞歌が知られる。家集に「中務集」。
【格言など】下潜(したくぐ)る水に秋こそ通ふらし掬(むす)ぶ泉の手さへ涼しき(「新千載和歌集」)

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