日本大百科全書(ニッポニカ) 「九州旅客鉄道」の意味・わかりやすい解説
九州旅客鉄道(株)
きゅうしゅうりょかくてつどう
日本国有鉄道(国鉄)が分割・民営化したことにより、1987年(昭和62)4月に発足した旅客鉄道会社の一つ。略称、JR九州。英語名はKyushu Railway Company、略称はJR Kyushu。JR3島会社(JR北海道、JR四国、JR九州)に含まれる。分割にあたり経営安定基金を授与され、民営化後はその運用益で息をつないできた。しかし、JR九州は3島会社のほかの2社と違い、経営多角化を積極的に展開し、また2011年(平成23)開業の九州新幹線の利用客増加もあったことから、2016年に株式上場を行っている。「九州旅客鉄道株式会社の経営安定基金の取崩しに関する省令」(平成27年国土交通省令第61号)により、経営安定基金を返済することなく完全民営化した。資本金は160億円。本社は福岡市博多(はかた)区。九州地方と山口県の一部(下関(しものせき)駅まで)で鉄道経営を行っている。新幹線は、2011年に全線開通した鹿児島ルート(博多―鹿児島中央間。線路名称「九州新幹線」)のほか、長崎(西九州)ルートのうち、武雄温泉(たけおおんせん)―長崎間(線路名称「西九州新幹線」)が2022年(令和4)9月に先行して開業している(2023年7月時点では、新鳥栖(しんとす)―武雄温泉間は未着工)。旅行業、飲食業、不動産、農業等を、九州を超えて首都圏や海外にも展開し、多角経営事業収入のウェイトは7割程度を占めている。収益性の低いローカル線を多数抱えているため鉄道経営は厳しく、2018年3月のダイヤ改正では会社発足以来で最大規模となる、1日当り117本の運行削減に踏み切った。
[土居靖範 2023年7月19日]