交通弱者(読み)こうつうじゃくしゃ

共同通信ニュース用語解説 「交通弱者」の解説

交通弱者

子ども要介護者、高齢者、障害者など、自分で車を運転できず、移動手段が少ない立場の人。公共交通機関に頼らざるを得ないが、過疎地や山間部では便数の削減廃止が相次ぎ、買い物や通院など日常生活で不自由を強いられている。高齢者が運転免許の自主返納に踏み切れない一因ともなっており、移動の代替手段の確保課題だ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「交通弱者」の意味・わかりやすい解説

交通弱者
こうつうじゃくしゃ

自動車中心の社会において、年少者、要介護者、一部の高齢者や障害者など、自分で運転することができず、自家用交通手段がないため公共交通機関に頼らざるを得ない人。とくに公共交通機関が整備されていないため、買い物など日常的な移動にも不自由を強いられている人をさす。また、交通事故の場合には、自動車(加害者強者)に対して被害者となりやすい子供や高齢者などの歩行者をさす。

 もともと交通弱者ということばは、1960年代にアメリカで起きた黒人暴動の原因を明示するために使用されたtransportation poorに由来している。公共交通機関が貧弱であったため、自家用車を保有していない人が都心部へ通勤できず、就業機会が奪われ、貧困から抜け出せないことが暴動を招く要因になった。以降、アメリカでは低所得者層のモビリティ問題を表すことばとして浸透し、徐々に年齢や身体的な理由などから、交通手段の利用に制約を受ける人のことをさすようになった。

 日本では、1980年代に過疎地における路線バスの維持問題が浮上した際、交通手段を失う住民をさすようになり、移動機会の平等や交通事故防止といった観点から、今日ではまちづくりや福祉などの幅広い分野で使われている。高齢化が進み、都市部の公共交通機関では車両や施設の快適性(ノンステップバス導入や乗り場の段差解消など)が高められる一方、地方では、自家用の移動手段がなければ、日常的な買い物にも支障をきたすような状態が続いている。また、交通事故による死者数は年々減少傾向にあるものの、高齢者の占める割合は増えており、歩行中の事故による死亡者は減っていない。モビリティ社会における交通手段の地域格差解消や歩行者の交通事故対策などが求められている。

[編集部]

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