法律用語。債権者が自己の債権を放棄する意思表示(民法519条)。弁済などと並ぶ債務消滅原因の一つである。債権者が一方的に債務者に対して表明すれば足り,債務者の同意・承諾を要しない。免除するか否かは債権者の任意である。たとえば加害者が複数いる不法行為において,加害者の一人から一定金額の損害賠償金を得た場合に,その者に対してはそれ以上責任を追及しないという趣旨で免除が行われたり,また,多数回にわたって分割弁済する内容の債務の場合に,債務者が資力に乏しいにもかかわらず誠実に弁済を継続した場合に,恩恵的に残額について免除が行われたりする。なお,債務者が破産した場合に,債務者の全財産をもってしてもなお弁済できない債務については,裁判所がその弁済を不要とすることができ,これによって債務は消滅するけれども,これは債権者の意思によるものではないので,免除ではなく,とくに免責と呼ばれる(破産法366条ノ2)。
執筆者:栗田 哲男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
民法上は、債権者が債務者に対する意思表示により債務を消滅させること(民法519条)。免除は単独行為であるから、債務者の意思を問わず、債権者の一方的意思によって行われる。債務の一部についての免除も可能であり、また条件付きの免除も認められる。免除によって債権消滅の効果が生ずる。ただし、その債権が第三者の権利の対象となっている場合には、免除をもってこのような第三者に対抗できないものと解されている。なお、行政法上では、免除は行政行為の種類の一つであり、法令あるいは行政行為によって課されている作為・給付・受忍義務につき、特定の場合に、その一部ないし全部を解除する行政行為をいう。たとえば、病弱等による就学義務の免除(学校教育法18条)などである。
[竹内俊雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…行政行為による下命,禁止の例として,道路交通法に基づく違法駐車車両の移動命令,道路標識による通行禁止等がある。(2)〈許可〉および〈免除〉 法令または行政行為によって課せられた一定の不作為義務(禁止)を特定の場合について解除することを許可といい,通行を禁止されている道路における特定車両の通行許可等がその例である。逆に,いったん成立した納税義務を免除するというように,作為,給付または受忍の義務を特定の場合について解除することを免除という。…
…許可を要するにもかかわらず無許可で,または許可の取消し,停止を無視してなされた行動については,罰則による制裁が定められているのが普通である。なお,許可とは逆に,一般的な作為・給付または受忍の義務を個別に解除する行為は〈免除〉と呼ばれる。許可および免除は,それが公権力の行使たる性質をもつかぎりで,いずれも行政法学にいう〈行政行為〉にあたる。…
…国際法上,国家は,原則として,その領域内にいるすべての人に対して管轄権を有する(領土主権)が,一定範囲の人に対しては管轄権を及ぼすことができない。現に滞在する国家の管轄権に服さなくてすむという,この例外的な権利が〈治外法権〉であり,最近の条約でいう〈免除〉にあたる。なお,治外法権という言葉は,不可侵権を含む広い意味にも用いられる。…
※「免除」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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