日本銀行(日銀)が資本金2000万円以上の民間企業を対象に、四半期ごとに実施する統計調査。通称、短観。約1万社を調査対象としている。1974年(昭和49)に開始。調査結果は、毎年4月初、7月初、10月初、12月なかばに公表されるが、4月、7月、10月については前月に実施した調査結果を、12月は同月に実施した調査結果を公表している。企業動向や物価に対する予想などを把握するために有用な指標とみなされている。調査結果は、全産業、製造業、非製造業に大別しており、さらに製造業は17業種、非製造業は14業種に区分した結果も示し、企業規模についても大企業、中堅企業、中小企業に分けて示している。調査表に基づき郵送およびオンラインで調査を実施している。
短観の調査は次の三つに分けられる。
第一の調査は判断項目とよばれる。企業の業況判断、需給・在庫・価格判断、生産・営業用設備判断、雇用人員判断、資金繰り判断、金融機関の貸出態度などについて、DI(ディフュージョン・インデックスdiffusion index)という指数で示している。具体的には、各判断項目について三つの選択肢それぞれの回答割合を算出し、第一選択肢と第三選択肢との回答割合の差を示したもので、業況判断DIともよばれる。たとえば、企業の業況判断では、「良い」「さほど良くない」「悪い」の選択肢のそれぞれの回答割合のうち、「良い」回答割合から「悪い」回答割合を差し引いた数値を示している。企業の業況判断については「良いと悪いの差」であるが、需給判断については「需要超過と供給超過の差」、在庫判断については「過大と不足の差」、販売価格と仕入れ価格の判断については「上昇と下落の差」、資金繰り判断については「楽であると苦しいの差」、金融機関の貸出態度については「緩いと厳しいの差」などとなっている。さらに、該当する調査時点を中心に、「最近(調査回答時点)の状況」および「先行き(3か月後まで)の状況」を示している。
第二の調査は、売上高と経常利益の対前年変化率、売上高・経常利益率、および設備投資額等について、前年度と当該年度計画(前回調査からの修正率を含む)などを示している。
第三の調査は、2014年(平成26)3月調査から開始したもので、企業の販売価格見通し(現在の水準と比較した変化率)と物価全般の見通し(前年比、消費者物価をイメージと明記)について、1年後、3年後、5年後についての調査結果を示している。これは、企業の長期予想インフレ率を示す指標として重視されている。
このほか、大企業・製造業について、事業計画の前提となっている想定為替(かわせ)レート(対米ドル円レート)を、前年度と当該年度について年度、前期、後期に分けて示している。
短観は、日銀による金融政策運営においても重要な判断材料の一つとなっており、エコノミストやメディアの注目度が非常に高い。とくに企業の業況判断、売上高経常利益率、設備投資額についての関心が高い。これに加えて、最近では、短観で示された想定為替レートと実勢為替レートの乖離(かいり)に注目し、想定レートよりも実勢レートが円安ドル高(円高ドル安)の状態にあれば企業収益が上方修正(下方修正)されると見込まれるため、株価は上振れ(下振れ)する、といったことがいわれる。
[白井さゆり 2016年12月12日]
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