アメリカの憲法修正第2条にある「武装権」に基づき、銃を持つ権利を擁護するための社会運動を行うシングル・イシュー(単一争点)団体。南北戦争直後の1871年に設立された。略称はNRA。
銃規制に真っ向から反対するNRAは、日本からみれば、まるで「悪の結社」のようにすらみえる。しかし、NRAは税法上、環境保護団体や消費者保護団体などと同じ非営利団体(NPO)であり、個人や各種団体、企業からの献金によって運営されている。アメリカでは団体に対する税制的な優遇措置がかなり徹底されており、とくに寄付は税控除の対象となる。そのため、一般国民や企業、財団からの寄付がNRAを大きくしてきたといってもいい。
NRAの会員は500万人に達している。アメリカの総人口を3億3000万人とすると、人口の1.5%となっており(2021)、有力な環境保護団体などと比べても多い。支持者の数は政治の力でもあり、選挙では票に直結する。とくに中西部や南部など、広大な土地のなか、自衛のために日常生活に銃が欠かせない地域選出の議員ほど、本格的な銃規制には否定的だ。中西部、南部は共和党の地盤でもあるため、NRAの会員となっている共和党議員も少なくない。また、一部ではあるが、民主党の議員もNRAに加盟している。NRAの活動が活発なのは、この銃規制反対の声を代弁しているためである。
アメリカのNPOには税制上いくつかのタイプがある。そのうちの二つをNRAは使い分けている。まず、「501(c)3団体」であるFriends of NRAは税法上広く献金を集めることができるかわりに、党派的な活動や政治運動はできない。一方、NRA本体は「501(c)4団体」であり、政治運動は可能だが、献金を受けることにはさまざまな制限がある。そこで、「501(c)3団体」のFriends of NRAで広く資金を集め、この団体から本体の「501(c)4団体」であるNRAに寄付させるという仕組みになっている。Friends of NRAからは寄付に応じてさまざまな返礼品があり、そのなかには銃そのものも含まれている。このように二つのタイプの団体を使い分けて政治活動することは、アメリカの利益団体では常套(じょうとう)手段である。
衝撃的な銃犯罪が起こるたびに、NRAの幹部は規制強化を避けるためメディアに登場し、一般人による銃の所持を規制しないように働きかける。「人を殺すのは銃ではなく、人だ」というのはNRAのいつもの決め台詞(ぜりふ)である。さらに教育現場での銃乱射事件があるたびに、「銃乱射事件から子どもたちを守るため、すべての学校に武装した警官を配置すべき」というのがNRAの常套句である。
しかし、銃規制に積極的なリベラル派が強い地域ではNRAへの反発が目だっている。サンフランシスコ市は2019年9月、全米ライフル協会を国内テロ組織として認定している。
保守派とリベラル派が大きく分かれる政治的分極化のなかで、NRAに対する見方も立場によって大きく異なっているのがアメリカの現状である。
[前嶋和弘 2023年2月16日]
(金谷俊秀 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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