主に中央省庁を対象にした、行政機関の公文書管理に関する統一基準を定めた法律。公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と定義、行政機関が適正な管理を図ることで、国民への説明責任を果たすよう求めている。歴史資料として重要な「歴史公文書等」は、作成した官庁での保存期間が満了すれば国立公文書館に移されて永年保存される。内閣府は2012年、東日本大震災に関連する公文書の適正管理を各省庁に要請し、永年保存する場合の判断基準を示した。
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行政機関による公文書の作成、管理、保存、廃棄、国立公文書館への移管、公表について統一ルールを定めた法律。正式名称は「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号)。年金保険料記録が失われた「消えた年金問題」、海上自衛隊補給艦「とわだ」の航海日誌の廃棄、薬害肝炎患者リストの放置など、相次ぐずさんな公文書管理への反省から、首相福田康夫(当時)が2008年(平成20)の施政方針演説で法制化を表明し、2009年に成立、2011年4月に施行した。同法は公文書を「国民共有の知的資源」と位置づけ、政策決定の経緯を記録することで、行政の透明性を高め、健全な民主主義を支えるねらいがある。法律の対象は中央省庁や独立行政法人で、地方自治体には文書の適正管理を努力義務とした。省庁ごとにばらばらであった公文書の統一的な管理基準を規定し、各省庁に保存期間や名称などを明らかにする「ファイル管理簿」の作成を義務づけた。保管するか廃棄するかを早期に決め、歴史的価値ある文書は公文書館へ移管し、原則永久公開する。廃棄する場合は内閣総理大臣の同意が必要で、各省庁は毎年度、行政文書の管理の状況を内閣総理大臣へ報告する義務を課した。内閣府に第三者機関の公文書管理委員会を設け、各省庁へ改善を勧告できる制度も盛り込んだ。国立公文書館の機能を強化し、デジタル化による保存や一般の利用も促進する。
しかし東京電力福島第一原子力発電所事故で、原子力災害対策本部などが議事録を作成していなかった問題(2011)のほか、学校法人「森友学園」への国有地売却の経緯に関する文書の廃棄(2017)、廃棄とされた南スーダン国連平和維持活動の日報が見つかった問題(2017)など、同法施行後も公文書のずさんな管理が続いている。このためマスコミや弁護士団体からは、保管・廃棄が官僚の裁量にゆだねられ法律が骨抜きになっている、個人メモとして扱えば公文書にならないという抜け道がある、などの批判が出ている。
[矢野 武 2017年9月19日]
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