公的な機関がその権限に属する一定の事項に関して,利害関係者や学識経験者を呼んで意見を聞く制度。日本では,国会および地方議会が行うものと,行政機関が行うものとがある。いずれも第2次大戦後にアメリカの制度を移入したもので,アメリカの連邦議会では委員会での法案審議に際して公聴会制度が活用されているが,それは厳格な三権分立主義のため,行政部の各省長官や政府職員に議会への出席権がなく,公聴会において初めて発言を許されるためである。日本では議院内閣制がとられ,各大臣は議会に出席でき,また政府委員の制度もあるため,公聴会はアメリカほどの重要性を与えられていない。国会では委員会だけが,重要な案件について公聴会を開くことができる。ただ,総予算および重要な歳入法案については,公聴会を開くことが義務づけられている。公聴会で意見を述べる公述人は,希望する者およびその他の者から委員会が定めるとしているが,実際には各党派が推薦する利害関係者および学識経験者から選ばれる。公聴会の開催は,議長の承認および公示を必要とするので,委員会だけで決定できる参考人の制度で代用されることもある。委員会は公述人や参考人の意見を参考とするにとどまり,それに拘束されることはない。地方議会でも,やはり委員会が公聴会を開くことができ,分担金を徴収する条例の制定・改廃については,公聴会を開かなければならない。行政機関については,法律に基づいて命令を発する際に,その草案について公聴会を開かなければならない場合(労働基準法113条,船員法121条)や,利害関係者の申請によって開かれる場合(運輸省設置法16条)がそれに当たる。原子力発電所の新設に際して原子力安全委員会が行う第2次安全審査では,いわゆる公開ヒアリングが義務づけられているが,これも公聴会のひとつといってよい。
執筆者:阿部 斉
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公の機関がその権限に属する一定の事項を決定する場合に、広く利害関係者・学識経験者等の意見を聞いて参考にするために設けられた制度。法令上認められたものとしては、議会関係として、国会の両院の委員会または地方公共団体の議会の常任委員会もしくは特別委員会が行うもの、および行政機関が行うものがある。国会の両院の委員会は、総予算および重要な歳入法案についてはかならず、その他一般的関心および目的を有する重要法案については任意に、また地方公共団体の議会の委員会は、予算その他重要な議案、陳情について任意に公聴会を開くことになっている(国会法51条、地方自治法109条5項)。行政機関が行うものとしては、法令がその開催を義務づけている必要的公聴会をまずあげることができるが、その数はまだ少数である(例、公正取引委員会による商品不当表示の指定〈不当景品類及び不当表示防止法5条1項〉、電気・ガス料金の変更認可〈電気事業法108条、ガス事業法48条〉など)。
他方、行政機関が「必要があると認めるときは」開催すると法定されている任意的・裁量的公聴会として、都市計画や土地収用事業認定に先だつ公聴会などがある(都市計画法16条、土地収用法23条1項)。また、本来公聴会の開催は法令の根拠を必要としないため、事実上の要請にこたえるため、法制度外の公聴会もしばしば開催されてきた(例、1978年の原子力基本法改正前のいわゆる「原発公聴会」など)。これらの公聴会の運営においては、対象事項についての客観的で公正な情報または資料の公開・提供、ならびに可能な限り広い範囲の関係国民・住民の参加権および当該国民・住民側の専門家依頼権を保障することによって、形式的な公聴会を実質的で充実したものにすることが、今日強く求められている。
[市橋克哉]
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(細谷正宏 同志社大学大学院アメリカ研究科教授 / 2007年)
(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)
(星浩 朝日新聞記者 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…しかし,行政手続の意義を認める最高裁判所判決など判例が形成されてきたことや,近年,日本の許認可行政などの行政決定過程の公正性と透明性を求める声が高まってきたことなどの社会状況を背景にして,1993年に日本の行政法の歴史上はじめて行政手続法が制定された。 行政手続は,大別すると公正取引委員会の審判手続のように司法手続に近い慎重な手続を求める事実審型聴聞と都市計画法が定める公聴会のような陳述型聴聞があるが,行政手続法は事前行政手続のすべてを定めるのではなく,さまざまな経緯から,行政決定過程の現状において行政の公正性,透明性について問題の多い許認可等の申請に対する処分,不利益処分および行政指導について,それぞれ共通的な手続を定めるにとどめている。その内容は,申請に対する処分については審査基準の作成とその公表,標準的処理期間の決定とその公表,申請を拒否する処分をする場合の理由の提示等を定め,不利益処分については処分基準の作成,処分手続として聴聞または弁明の機会等を定めている。…
…各議院における議案の審議は委員会が本舞台となる。審議においては公聴会が開かれ,利害関係者または学識経験者の意見を聴くこともある。政府法案の審議においては,大臣および〈政府委員〉という官庁幹部職員が出席して議員(おもに野党)の質疑に答え,政府ペースで審議が行われるのが例である。…
…行政庁の裁量権行使の妥当性を確保するうえで有効と考えられている(行政裁量)。陳述型聴聞は,行政計画等の決定に際して,利害関係をもつ各層から政策的意見,資料等の提供を受け,行政の意思形成をする手続であり,都市計画法が定める公聴会がその例である。1993年に制定された行政手続法は,不利益処分をしようとする場合の聴聞および弁明の機会について定めている(第3章)。…
※「公聴会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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