女性労働者には,妊娠後期の母体保護と健全な出産のために産前休暇が,そして産後の母体の回復と新生児授乳のために産後休暇が,それぞれ付与される必要がある。労働基準法は産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間),産後8週間の休暇を定めている(65条)が,産後については6週間を経過した女性が請求した場合には,医師が認めた業務に就労させてもよいとしている(同条2項)。本条に違反した使用者には刑罰が科せられる。出産休暇中および産休明け30日以内の女性労働者は解雇されてはならず(労働基準法19条),またこの休暇を取得したことをもって差別待遇をうけてはならないとされる(均等法11条,1999年からは8条)。
法は休暇期間中の賃金についての定めを欠いており,これは労使の決定にゆだねられている。ただし,健康保険法は出産手当金として,産前42日間,産後56日間標準報酬日額の60%を支給する規定をおく。健康保険法の適用から除外される女性労働者には,この期間中,所得が保障されないことになり,問題が多い。ILO103号条約は,出産休暇中の金銭および医療の給付を受ける権利を定めており,日本でも休暇中の所得の制度的保障が要請される。さらに,女性労働者が安心して休暇を取得できるためには,代替要員が配置されることが望ましい。教員には補助要員が制度化されている(産休等代替職員法(1955))。
執筆者:浅倉 むつ子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
婦人労働者の母性を保護するための産前産後の休暇。略して産休ともいう。労働基準法(昭和22年法律49号)第65条第1項は、6週間以内に出産する予定の女子が休業を請求した場合、使用者はその者を就業させてはならないこと、また第2項では、産後8週間を経過しない女子を就業させてはならないことを定めている(ただし、産後6週間を経過した女子は、本人が請求した場合、医師が許可すれば就労することができる)。後者が強制的な休暇であるのに対して、前者は婦人労働者の請求を要件としている点に相違がある。なお、男女雇用機会均等法の成立(1985)に伴う労働基準法の改正によって、産後の休暇は6週間から8週間に延長され、わが国においても、産前産後を通じて14週の休暇を勧告したILO95号勧告(1952)の水準にようやく到達した。しかし、わが国の場合、依然として休暇中の賃金に関しては全額支給が法律上明記されていない。
[湯浅良雄]
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