病気の診断・予防・治療などに役だつ新たな薬を開発・製品化すること。または、製品化までの一連の過程を意味する。基礎研究で新たな候補化合物をみつける「探索・基礎研究」がすべての出発点で、「前臨床試験」「臨床試験」「承認申請」へと進む。日本製薬工業協会によれば、成功率は1万分の1、創薬期間は9年から17年、開発経費は200億円から300億円にもなっている。
探索・基礎研究ではまず、生薬などの天然物、化学合成物質リスト、既存薬などから病気と関連する作用、たとえば関連タンパク質の特定場所に結合する化学物質などをみいだす。患者のiPS細胞を使って病初期を再現し、関連タンパク質をみつける技術に期待が高まっている。こうした候補化合物の周辺で、より作用の強いものを選別し、構造を変化させ、強力化する。
前臨床試験(非臨床試験ともいう)は、細胞や菌、動物を使って安全性や有効性を確認する応用研究である。一般毒性試験をはじめ、薬効薬理試験、発癌(がん)性試験、遺伝毒性試験、動物を用いての血中動態試験(薬物動態試験)など多数の試験がある。
安全性、有効性が確認された物質は人による3段階の臨床試験に進む。第1相試験(フェーズ1)では少人数で安全性を確認し、物質の吸収から排泄(はいせつ)までの体内動態を調べる。第2相試験(フェーズ2)では最適な用法、用量を調べる。第3相試験(フェーズ3)で多数の患者を対象に既存薬や偽薬と比較し、有効性が立証されれば、国(厚生労働省)への承認申請をする。承認申請資料は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査、薬事・食品衛生審議会の医薬品部会および薬事分科会での審議を経て承認され、初めて商品化が実現する。
また、ゲノム情報のデータを活用して新薬を開発する「ゲノム創薬」の技術が向上してきている。ゲノム創薬では、患者の遺伝情報を利用して薬がつくられるため、新薬の候補物質の選別試験に要する期間が短縮され、副作用が少なく高い効果が期待できるとされている。
[田辺 功 2015年11月17日]
(澤田康文 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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