加賀友禅(読み)カガユウゼン

デジタル大辞泉 「加賀友禅」の意味・読み・例文・類語

かが‐ゆうぜん〔‐イウゼン〕【加賀友禅】

石川県金沢市付近で発達した友禅染様式化された図柄で、配色に藍・臙脂えんじ・紫などが多く、ぼかしを使っている。

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精選版 日本国語大辞典 「加賀友禅」の意味・読み・例文・類語

かが‐ゆうぜん‥イウゼン【加賀友禅】

  1. 〘 名詞 〙 加賀国(石川県南部)金沢を中心に発達した友禅染。技法京友禅と変わらないが、模様や色の用い方などに特徴がある。
    1. [初出の実例]「帯は古代の加賀友禅に黒繻子の腹合」(出典:腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「加賀友禅」の意味・わかりやすい解説

加賀友禅
かがゆうぜん

江戸中期以後の友禅染における一つの様式(スタイル)。特徴は主としてその色使いにあり、白地臙脂(えんじ)色、紅、藍(あい)、緑などにぼかしの加わったはでやかな模様の間に、周縁をぼかした紫の雲形の加えられているものが多い。模様は全般に様式化されており、細い糸目による精細な図柄に、写実を離れた彩色が施されている。加賀友禅が、その名称から一般に京友禅に対するもののように解され、これがすべて加賀で生産されたもののように考えられ、ひいては宮崎友禅斎の加賀在住説まであるが、もともと加賀友禅という名称自体がそれほど古いものではなく、また江戸中期の友禅染の現存資料をみると、いわゆる加賀風な友禅の数は非常に多くて、これが全部加賀の地でつくられたということは、にわかには信じがたい。

 もちろん加賀にも古くから友禅染に類する技術のあったことは、手描きの糊(のり)防染に主として顔料による彩色を加えた掛物がつくられており、これが江戸中期以後、藩の進物用に多くつくられたということによっても知られる。文献によれば、このほかに加賀には、江戸時代以前から加賀染という藍、茜(あかね)、黒などの無地染があり、これに御国(おくに)染と称して紋所に彩色を加え、さらに江戸中期からは着物全体に模様染を施したものもつくられていたようで、これが京都からの友禅染の影響を受けて、洗練されていったものであろうと考えられる。

 いま、いわゆる加賀友禅の色使いによく似たものに沖縄の紅型(びんがた)がある。そして、この両者の色使いの源流をさかのぼっていくと、桃山から江戸初期慶長(けいちょう)(1596~1615)ごろの刺しゅうのそれに行き当たる。すなわち加賀友禅というスタイルは、友禅染のなかでもっとも古い形を継承したというものであり、これが沖縄に伝えられ、ともにその古様を純度高く伝えているものではないかとも考えられる。

山辺知行


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事典 日本の地域ブランド・名産品 「加賀友禅」の解説

加賀友禅[染織]
かがゆうぜん

北陸甲信越地方、石川県の地域ブランド。
加賀地域に由来する友禅染を施し金沢市で生産された織物および帯・長着。写実的な草花模様を中心とした絵柄で、色彩は加賀五彩といわれる藍・臙脂・草・黄土・古代紫を基調とする紅系統を生かした多彩調。淡青単彩調の京友禅とは対照的である。線の太さやぼかし、虫喰いなどを駆使し、巧みに自然美を描き出す技法が特徴。1975(昭和50)年5月、通商産業大臣(現・経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品に指定。2007(平成19)年1月、特許庁の地域団体商標に登録された。商標登録番号は第5021579号。地域団体商標の権利者は、協同組合加賀染振興協会。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「加賀友禅」の意味・わかりやすい解説

加賀友禅
かがゆうぜん

江戸時代中期頃から石川県金沢地方で発達した友禅染。細かい模様とぼかしを入れてはなやかに仕上げるのが特徴。東京国立博物館の『石山寺紫式部図友禅掛幅』は享保5 (1720) 年の紀年銘のある最も確実な作品。

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世界大百科事典(旧版)内の加賀友禅の言及

【友禅】より

…一方,加賀前田藩でも,御国染(おくにぞめ),加賀染と称する染物が,京の友禅と同時期に盛んに作られていた。これにも京友禅の技法がとり入れられて類似性が強まると,やがて京都などでは,これを友禅に包含して〈加賀友禅〉と称するようになったようである。友禅と加賀友禅との意匠的,技術的な差は微妙で,明確に区別することはむつかしい。…

※「加賀友禅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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