財貨あるいは用役の生産高を,その生産過程において使用された労働投入量で割った比率をいう。ごくまれにこの比率の逆数,つまり労働投入量を生産高で割った値の意味に用いられることもある。労働投入量としては延べ労働時間数が適切だが,1人当り労働時間に大きな変化のない場合には,労働者の数で近似できる。生産高は物量単位(米ならトン数,自動車なら台数)で測られることも,また価値額で測られることもある。生産高に物的生産量を用いたときは労働の物的生産性,生産額を用いたときは労働の価値生産性という。生産額から原材料費や燃料動力費等の中間的投入を控除すると,付加価値が得られる。それの労働投入量に対する比率を,付加価値生産性と呼ぶ。付加価値は賃金,地代,利子・利潤として,生産に参加した諸要素の所得となるので,分配問題と関連づけて労働生産性を議論するときは,付加価値生産性を用いるのがよい。
労働生産性を規定する要因はさまざまである。資本集約度(資本使用量を労働投入量で割った比率)は,その代表的要因の一つである。これは設備の機械化水準を示し,資本集約度が高いほど労働生産性も高くなる。もう一つの要因は生産技術の進歩である。より優れた技術的知識が生産過程に導入されるなら,所与の労働投入量を用いて,より大なる生産高を実現できる。労働の質も,生産性を規定する重要な要因といってよい。学校教育は種々の実用的知識を授けるばかりでなく,新しい技術に対する適応力を高め,創造力を涵養(かんよう)する。また企業内での訓練は労働者の熟練度の向上に役立つ。作業に熟達した労働者は,一定の時間内に,より品質の高い商品を,より多く生産することができる。いわゆる人的資本理論によれば,教育や訓練のための支出は人的資本に対する投資であって,これによって労働生産性が向上するものと期待されている。
執筆者:小野 旭
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…そしてこの表の基礎になっているのは,次のような技術進歩の効果を考慮した生産関数である。Y/Lは労働生産性,K/Lは労働の資本装備率(資本集約度)である。そしてt=時間で,技術進歩が時間の経過において生起する現象であることを考慮して導入されたものである。…
…付加価値とは企業がその経営活動を通じて新しく生産した価値であり,換言すれば,企業が一定期間に生産した価値からその生産のために他から受け入れて消費した中間生産物の価値を差し引いたものである。付加価値生産性には投入の内容により労働生産性,資本生産性,設備生産性など各種のものがある。しかし,付加価値を生産する最も重要な要素は労働であるから,労働生産性が最も基本的な指標とされ,これによって付加価値生産性を代表させることもある。…
※「労働生産性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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