日本大百科全書(ニッポニカ) 「北海道旅客鉄道」の意味・わかりやすい解説
北海道旅客鉄道(株)
ほっかいどうりょかくてつどう
日本国有鉄道(国鉄)が分割・民営化したことにより、1987年(昭和62)4月に発足した旅客鉄道会社の一つ。略称、JR北海道。英語名はHokkaido Railway Company、略称はJR Hokkaido。JR3島会社(JR北海道、JR四国、JR九州)に含まれる。分割にあたり経営安定基金を授与され、民営化後はその運用益で息をつないできたが、バブル経済の崩壊やその後の低金利の影響により、運用益は著しく減少している。資本金は90億円で株式は非上場、100%鉄道建設・運輸施設整備支援機構(略称、鉄道・運輸機構)の所有である。本社は北海道札幌市中央区。営業は北海道全域と青森県内の一部で、北海道新幹線と在来線を運行。北海道新幹線は、新青森―新函館北斗(しんはこだてほくと)間が2016年(平成28)に開業。新函館北斗―札幌間を建設工事中で、2030年度末に開業予定となっている。在来線の利用者減少で経営悪化が著しく、そのうえ2011年5月の石勝(せきしょう)線列車脱線火災事故や、2016年の台風被害の復興工事の大幅遅れや、車両更新もままならない状況などが続いてきた。毎年180億円の経常赤字を出しており、このままでは経営安定基金の運用益確保も困難になるため、2016年に在来線の路線距離のほぼ半分について「単独で維持が困難」として、バスへの転換や沿線自治体による運営への切替えなどを表明した。JR北海道が単独で維持可能としているのは、札幌周辺を中心とした全路線網の半分程度にとどまり、北海道庁や沿線自治体はその対策に苦慮している。こうしたJRローカル線廃止の動きは全国へと広がる可能性がきわめて高く、このような動きにどう対処するかが問われる。北海道の鉄道はむしろ貨物輸送の役割が大きく、また北海道と本州を結ぶ海峡線も新幹線列車より貨物列車のほうが本数は多い。本州向けの新幹線タイプのコンテナ貨物列車の運行が期待される。
[土居靖範 2018年7月20日]