原子力規制委員会(読み)ゲンシリョクキセイイインカイ

デジタル大辞泉 「原子力規制委員会」の意味・読み・例文・類語

げんしりょくきせい‐いいんかい〔‐ヰヰンクワイ〕【原子力規制委員会】

原子力の安全規制を一元的に行う日本の行政機関。平成24年(2012)9月に環境省の外局として設置。原子力施設核燃料核原料物質の使用に関する規制のほか、核不拡散のための保障措置核物質防護などの事務を所掌する。同委員会の発足に伴い原子力安全委員会原子力安全・保安院は廃止され、事務局として原子力規制庁が設置された。NRA(Nuclear Regulation Authority)。
エヌ‐アール‐シー(NRC)

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共同通信ニュース用語解説 「原子力規制委員会」の解説

原子力規制委員会

原発推進を担う経済産業省から安全規制の役割を分離させ、原子力規制に関する業務を一元化した組織。国家行政組織法3条に基づき、人事や予算を独自に執行できて独立性が高い「三条委員会」として環境省の外局に位置付けられる。衆参両院の同意を得て首相が任命する委員長と委員4人で構成。実務を担う事務局の原子力規制庁は職員が約千人。原発の安全対策などを議論する会合は原則インターネットで中継し、議事録も公開するなど透明性の高さを掲げる。

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百科事典マイペディア 「原子力規制委員会」の意味・わかりやすい解説

原子力規制委員会【げんしりょくきせいいいんかい】

2012年6月に公布された原子力規制委員会設置法により,環境省の外局として設置され2012年9月に発足した政府機関。原子力利用の安全確保を図るため必要な施策を策定する。事務局として原子力規制庁が同時に設置された。原子力規制庁の前身である原子力安全・保安院は,エネルギー政策を推進する経済産業省資源エネルギー庁の機関であったため,一つの行政組織が推進と規制の両方の機能を担っていた。2011年3月の東京電力福島第一原発事故における,原子力安全・保安院について,原子力利用を推進する前提での規制しかできていなかったのではないかとの厳しい批判が噴出した。さらに内閣府の原子力安全委員会や文部科学省原子力安全課などのさまざまな機関も,統合的機能をもたないまま原子力行政に深く関わっており,緊急かつ過酷事故への対処にあたって,こうした体制の限界が露呈したと批判された。事故後民主党政権下で原子力基本法の見直しが行われ,民主・自民・公明の3党合意を中心に原子力規制委員会設置法が成立,原子力の安全確保に関する規制の一元化をはかる,独立性の高い機関として原子力規制委員会・原子力規制庁が設置された。委員長及び委員は,原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験ならびに高い識見を有する人物で,衆参両議院の同意を得て,内閣総理大臣によって任命される。原子力産業に携わる業者,役員・使用人その他の従業員は就任できない,としている。初代原子力規制委員会委員長には田中俊一(日本原子力学会元会長),委員長代理に地震学者の島崎邦彦(東京大学名誉教授)が就任。原子力規制庁長官には池田克彦(元警視総監)が就任した。また福島第一原発事故で東京電力と原子力安全・保安院の情報発信のありかたも問題となったため,原子力規制委員会では議事内容や資料,議事録などを公表する先を,新聞・TVのマスメディアだけでなくインターネットメディアやフリーランス記者にも拡げ,委員長記者会見をインターネットで中継するなど情報公開を進める。2013年4月,原子力規制委員会は,同年7月から適用する新規制基準案を提示,既存原発についても過酷事故対策,地震・津波対策など厳しい基準を設定した。7月の新基準提示を受けて,各電力会社は原発の再稼働申請を開始した。2014年3月,原子力規制委員会は初の優先審査対象として九州電力川内原発1,2号機を選ぶと発表した。4月に行われた原子力規制委員会による現地調査でも新たな課題の指摘はなかった。2014年9月,島崎邦彦,大島賢三委員の退任にともない,原子力工学が専門の田中知(さとる)・元東京大学教授と地質学者の石渡明・元東北大学教授が委員に就任した。
→関連項目伊方原発エネルギー政策大飯原発大間原発女川原発柏崎刈羽原発玄海原発原子力発電志賀原発四国電力[株]島根原発川内原発中国電力[株]中部電力[株]敦賀原発東京電力[株]東北電力[株]泊原発日本原子力発電[株]東通原発北陸電力[株]美浜原発

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子力規制委員会」の意味・わかりやすい解説

原子力規制委員会(日本)
げんしりょくきせいいいんかい

原子力の安全確保を一元的に担う日本の行政組織。英語名はNuclear Regulation Authorityで、略称NRA。原子力規制委員会設置法(平成24年法律第41号)に基づいて設置。2011年(平成23)3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故の際、内閣府の原子力安全委員会、経済産業省の原子力安全・保安院、文部科学省の放射線モニタリング部門、経済産業省所管の独立行政法人原子力安全基盤機構などの縦割り行政組織が危機回避に向けてうまく機能しなかった。この教訓を踏まえ、2012年9月、こうした行政組織を一元化し、環境省の外局として発足した。国家行政組織法第3条に基づく「三条委員会」とされ、政治や各省庁から高い独立性をもち、公正取引委員会や国家公安委員会などと同様に、予算や人事を独自に管理できる。アメリカやフランスなどでは原子力規制機関を、原子力推進機関から独立させるのが潮流になっており、日本も原子力規制委員会の発足により、これに近い体制となった。

 委員会は原子力発電関連の専門家である委員長と委員4人の計5人で構成し、合議制で方針や処分を決定する。任期は5年で、国会の同意を得て内閣総理大臣が任命する。初代委員長には、内閣府原子力委員会の委員長代理を務めた田中俊一(1945― 。原子核工学専攻)が就任したが、野党の反対により国会の同意を得ない変則的発足となった。委員会傘下に事務局として原子力規制庁を置き、原子力発電所の検査などの実務を担う。発足時に、経済産業省や文部科学省などの職員約500人が原子力規制庁職員となった。規制庁の独立性を保つため、職員には原子力推進に関係する出身省庁へ戻れない「ノーリターンルール」を適用した。なお、原子力規制委員会所管の独立行政法人であった原子力安全基盤機構は2014年3月に廃止され、原子力規制庁に統合された。

 大災害やテロリズムなどで深刻な原発事故が起きた場合、原子力規制委員会が危機対応の要となり、原子炉格納容器から気体を放出する「ベント」のほか、原子炉への海水注入、自衛隊への出動要請などについて、危機回避に向けた指揮権全般をもつ。内閣総理大臣は原子力規制委員会の判断を覆すことはできず、危機に際し首相官邸は過剰介入できない仕組みとした。日本国内の原子力発電所再稼働の可否を判断する安全基準づくりのほか、周辺に活断層がある原子力発電所の調査・安全性の判断、原子力発電所の運転制限期間である40年後に廃炉にすべきかどうかの判断なども行う。既存の原子力発電所に、多重電源や排気システムなどの最新技術導入を義務づける「バックフィット制度」を適用し、不備があれば、原子力規制委員会が運転停止や廃炉を命じることができる。このほか原発事故に備えた防災指針づくり、自治体による避難訓練計画策定なども担う。

[編集部]


原子力規制委員会(米国)
げんしりょくきせいいいんかい
Nuclear Regulatory Commission

原子力の安全規制に関するアメリカの行政委員会。NRCと略称される。1975年1月、アメリカの原子力開発行政すべてを掌握してきた原子力委員会は28年間の歴史を閉じ、利用促進を担うエネルギー研究開発局(ERDA)と安全規制を担うNRCとが分離独立した。これは、1974年10月に成立した「エネルギー機構改革法」に基づく行政改革によるもので、NRCは旧原子力委員会の許認可ならびに規制業務のすべてと、安全研究の一部を引き継いだ。NRCは大統領が任命する5名の文民委員で統括される行政委員会で、1979年に起きたスリー・マイル島(TMI)原発事故以後は、委員長も大統領により任命されることになった。この委員会のもとに原子炉規制局や核物質安全・保障措置局などの行政部局、原子力安全許可会議パネルや医療用放射線諮問委員会などの諮問機関等が置かれ、2010年の時点で約4000人の職員を擁している。

[中島篤之助]

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知恵蔵 「原子力規制委員会」の解説

原子力規制委員会

原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、これらを実施する事務を一元的につかさどる行政機関。2012年に公布された原子力規制委員会設置法により、同年9月に発足した。環境省の外局であり、専門的知見に基づいて中立公正な立場で独立して職権を行使するものとして設置。同委員会の事務局として原子力規制庁が置かれた。
同委員会、同庁の前身である「原子力安全・保安院」は、エネルギー政策を推進する立場の資源エネルギー庁(経済産業省の外局)の機関だった。このため、11年3月の福島第一原子力発電所事故に際して、同院は原子力利用を推進する前提での規制しかできていなかったのではないかとの批判がなされた。また、このほか内閣府の原子力安全委員会や文部科学省原子力安全課などの機関が、それぞれ異なる立場で原子力行政に関わっていた。これらのことから、縦割り行政の弊害を除去すること、また1つの行政組織が推進と規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消することが課題となった。このなかで、原子力基本法の見直しが行われ、原子力の安全確保に関する規制の一元化をはかる、独立性の高い機関として原子力規制委員会・原子力規制庁が設置された。委員長及び委員は、人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験ならびに高い識見を有する者のうちから、衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。また原子力産業に携わる業者、役員・使用人その他の従業員は、これに就任できない。原子力規制委員会委員長には田中俊一日本原子力学会元会長、原子力規制庁長官には池田克彦元警視総監がそれぞれ初代として就任した。福島原発事故では情報発信のありかたも問題となったため、原子力規制委員会では議事や資料、議事録などを原則として公開する、新聞・テレビだけでなくインターネットメディアやフリーランスの記者にも控室を用意し、委員長の記者会見はインターネットで中継するなど情報公開を進めていくとしている。

(金谷俊秀  ライター / 2012年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子力規制委員会」の意味・わかりやすい解説

原子力規制委員会
げんしりょくきせいいいんかい

原子力利用における安全を確保するための規制を担う国の行政組織。2012年,環境省外局として発足し,事務局として原子力規制庁が設置された。原子炉や核燃料物質などの使用に関する安全規制,事故発生時の対応,緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム SPEEDIの運用を含む環境モニタリングの司令塔機能などを一元的に担う。2011年の福島第一原子力発電所事故により,原子力利用における縦割り行政の弊害に加え,原子力利用の推進と規制という相反する機能をともに経済産業省が担う矛盾が露呈。こうした問題を解消するため,経済産業省の原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会,および文部科学省,国土交通省に分散していた原子力安全行政を一元化した。内閣総理大臣が任命する委員長および 4人の委員で構成され,任期は 5年。

原子力規制委員会
げんしりょくきせいいいんかい
Nuclear Regulatory Commission; NRC

アメリカ合衆国内における核物質の民生利用を監督する独立の規制機関。ジェラルド・R.フォード政権下の 1974年,アメリカ原子力委員会 AECが二分されたことに伴い設立。AECは廃止された。AECの業務のうち,民生用の核物質や核施設が安全に使用され,公衆の健康や環境に悪影響を及ぼさないように監督する任務を引き継いだ。アメリカ国内に多数存在する商用原子炉を監督の対象とし,新規の原子炉に建設認可を与え,操業中も継続して規制にあたる。おもな任務は,核物質の利用,処理,取り扱い,廃棄等の監督,原子力発電所の視察および安全手順,安全対策の監視,安全基準の遵守徹底,事故発生時の調査など。委員は大統領によって任命される。

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