原油(読み)ゲンユ(英語表記)crude oil

翻訳|crude oil

デジタル大辞泉 「原油」の意味・読み・例文・類語

げん‐ゆ【原油】

油井ゆせいから採掘されたままの精製していない石油。通常は黒色の悪臭ある液体。
[類語]脂肪脂肪油油脂魚油香油オイル石油重油軽油灯油ガソリン揮発油精油グリース

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精選版 日本国語大辞典 「原油」の意味・読み・例文・類語

げん‐ゆ【原油・元油】

  1. 〘 名詞 〙 油井(ゆせい)から採取したままの石油。緑色の蛍光を発する可燃性の油状物質。各種の液状炭化水素混合物で、水、石油ガスおよび少量の硫黄・酸素・窒素・金属などの化合物を含む。石油製品の原料。
    1. [初出の実例]「何程にても元油を得らるる見込なり」(出典:国民新聞‐明治二六年(1893)一二月一九日)

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改訂新版 世界大百科事典 「原油」の意味・わかりやすい解説

原油 (げんゆ)
crude oil

油井から採取されたままの天然の石油をいう。原油は一般に黒褐色の粘い液体である。主成分は炭化水素であるが,そのほかに硫黄,窒素,酸素などの有機化合物や金属分,泥水分なども含む。原油を精製すれば,ガソリン,灯油,軽油,重油などの燃料油や,潤滑油,アスファルトワックスパラフィン)などの石油製品を生産することができる。日本では秋田県,新潟県などで原油が産出されるが,その生産量は年間90万klにも満たず,ほとんどを中東諸国などの海外からの輸入に依存している。

原油の物理的・化学的性質は,産地や油層の深さなどの違いによりさまざまである。したがって,原油の商取引の際の評価や原油の精製工程の検討の便宜のために,原油を分類することがある。その評価の観点や尺度はいろいろあり,アメリカ鉱山局の方法は,原油の常圧蒸留を行って沸点250~275℃の留分をとりそのAPI比重ボーメ)と,また減圧蒸留を行って393~424℃(常圧換算の沸点)の留分をとりその流動点を測定し,これらの数値を基準として表1のように分類する。ただし,API比重は,アメリカ石油協会American Petroleum Instituteが制定した,石油の比重を示す特別の尺度であって,60°F(約15.6℃)の水を基準とする60°Fの石油の比重との間に次の関係がある。たとえばAPI比重30および40は,ではそれぞれ0.8762および0.8251にあたる。

 ここにいう原油の基(ベースbase)とは原油の炭化水素成分のタイプを意味しており,パラフィン基原油とはパラフィン炭化水素(アルカン,一般式CnH2n+2)を主成分とする原油,ナフテン基原油とは脂環式化合物であるナフテン炭化水素(シクロパラフィン,一般式CnH2n)を主成分とする原油をいう。中間基原油あるいは混合基原油とは,それぞれ両者の中間あるいは混合型の性状を示す原油である。パラフィン基原油は,ガソリン留分のオクタン価は低いが,灯油留分の燃焼性は優れており,軽油留分のセタン価が高く,一般に硫黄含有量が少ないという特性をもつ。ナフテン基原油はこれと対照的であって,ガソリン留分のオクタン価は高いが,灯油や軽油留分は燃焼性の面でやや劣り,一般に硫黄分が多いという特性をもつ。高沸点留分について比較すると,パラフィン基原油からは良質の潤滑油やワックス(パラフィン)がとれるのに対し,ナフテン基原油からはアスファルトが多くとれる。このほか,とくに芳香族炭化水素含有量の多い原油を芳香族基原油,アスファルト含有量の多い原油をアスファルト基原油と呼ぶこともある。

 さらに原油を硫黄含有量の大小によって分類することもある。日本では,便宜上,硫黄分2%(重量)以上のものを高硫黄原油,1~2%のものを中硫黄原油,1%以下のものを低硫黄原油としている。また硫化水素メルカプタンなどの臭気や腐食性の強い硫黄化合物をとくに多く含む原油をサワー原油sour crudeと呼ぶことがある。

 日本に輸入されているおもな原油の性状を表2に示す。

原油の元素組成はふつう表3に示す範囲にある。炭化水素成分は,すでに述べたとおりパラフィン,シクロパラフィン,芳香族炭化水素などで,この順に含有量が多い。二重結合をもつ鎖式炭化水素であるオレフィン(アルケン,一般式CnH2n)は原油には含まれていない。また沸点範囲が高くなるにしたがって芳香族の含有量が増える例が多い。硫黄化合物はほとんどが有機化合物であり,メルカプタン,スルフィド,チオフェンなどが知られている。酸素化合物はナフテン酸として知られる脂肪族カルボン酸のほかフェノール類も存在する。窒素化合物は塩基性のものとしてピリジン,キノリンなどがあり,また非塩基性のものとしてピロール,インドール,ニトリルなどが知られている。
石油 →石油産業 →石油精製
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百科事典マイペディア 「原油」の意味・わかりやすい解説

原油【げんゆ】

地下から油井(ゆせい)により採取されたままの未加工の鉱油。赤褐〜黒色の水より軽い液体で,蛍光(けいこう)や臭気を伴う。各種の液状炭化水素を主成分とし,固形およびガス状の炭化水素を溶解,微量の硫黄,酸素,窒素などの各化合物や,採油の際混入する水,塩水,泥などの不純物を含有する。一般に含有する炭化水素の種類により,パラフィン基原油(パラフィン系炭化水素を多量に含み,得られるガソリンのオクタン価は低いが,良質の潤滑油が得られる),ナフテン基原油(ナフテン(シクロパラフィン)系炭化水素を多量に含み,蒸留に際しアスファルトおよびピッチが残り,量は少ないがオクタン価の高い良質のガソリンが得られる),中間基および混合基原油(前2者の中間の性質を有する)に分類される。また比重により,軽質原油(比重0.830未満),中質原油(0.830〜0.904未満),重質原油(0.904〜0.966未満),特重質原油(0.966以上)に分類される。一般に常圧蒸留,熱分解改質法脱硫などの精製工程を経て各種石油製品が生産される。→石油
→関連項目石油産業

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化学辞典 第2版 「原油」の解説

原油
ゲンユ
crude oil

地下から産出した状態の未精製の石油.赤褐色ないし黒褐色の粘ちゅうな液体である.比重0.8~1.0.主成分は各種炭化水素の複雑な混合物であるが,とくにパラフィン(アルカン)およびナフテン(シクロアルカン)炭化水素が多く,芳香族炭化水素は少ない.このほか,硫黄,窒素,酸素の各有機化合物を含み,これらの不純物は高沸点留分ほど含有量が多い.とくにパラフィン炭化水素を主成分とするものをパラフィン基原油とよび,比重は比較的小さく,ろう分を多く含む.また,ナフテン炭化水素を主成分とするものをナフテン基原油とよび,比重は比較的大きく,一般にアスファルト分を多く含み,とくにアスファルト分の多いものは,アスファルト基原油ともいわれる.実際には,これらの中間的な性質をもつ原油が多く,これらは中間基または混合基原油とよばれる.アメリカのペンシルベニア原油,および中東地方の各原油はパラフィン基,アメリカのガルフコースト原油,アゼルバイジャンのバクー原油はナフテン基,アメリカのミドコンチネント原油は中間基原油として代表的なものである.わが国では,新潟,秋田,山形県地方に原油を産出するが,その量は少なく,需要の99.7% 以上は輸入原油に依存している.とくにその大部分を占める中東原油には,硫黄分が多い(約1.5~3.5%).

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原油」の意味・わかりやすい解説

原油
げんゆ
crude oil

地下から汲上げられたままの未加工の石油。各種炭化水素を主体に硫黄,窒素,酸素の化合物などをそれぞれ少量含んだ粘着性のある黒褐色,赤褐色の液体で,地質時代に海底に堆積した有機物が変化したものといわれている。稼行するに足る原油を生産する地域を油田,原油を連続して貯留する地層を油層という。組成や性質はきわめて多種多様で,油田によって,あるいは同じ油田でも油層によって異なる。組成によって分類すると,パラフィン系炭化水素を多量に含むパラフィン基原油,ナフテン系炭化水素を多量に含むナフテン基原油 (アスファルト基原油) ,これらの中間的な性状の混合基原油,芳香系炭化水素を多量に含む特殊原油などがある。また比重による軽質原油 (比重 0.830未満) ,中質原油 (比重 0.830~0.904) ,重質原油 (比重 0.904~0.966) ,特重質原油 (比重 0.966以上) の分類方法や利用目的などを意識しながら関心成分が多く含まれているかどうかを区分して,たとえば低硫黄原油と高硫黄原油といった分け方をすることもある。発電用の原油生だき以外は,そのままでは利用できず,常圧蒸留,減圧蒸留,クラッキング,脱硫などさまざまな精製の工程を経て各種の石油製品に誘導する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原油」の意味・わかりやすい解説

原油
げんゆ
crude oil

地下から産出した状態のままの未精製の石油。

[編集部]

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世界大百科事典(旧版)内の原油の言及

【石油】より

…油井から生産されたままの,液状炭化水素を主成分とし,微量の硫黄,窒素,酸素,金属などを含む天然化合物を原油といい,炭化水素系天然ガスとともに石油と総称される。各種燃料油,潤滑油,アスファルトなどの石油製品も広義には石油のなかに含まれる。…

※「原油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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