事件の容疑者や被告が共犯者ら他人の犯罪の捜査・公判に協力する代わりに、自分の起訴を見送ってもらったり、求刑を軽くしてもらったりする制度。取り調べの録音・録画(可視化)とともに、2018年6月施行の改正刑事訴訟法で導入された。対象は贈収賄や金融商品取引法違反などの財政経済事件、薬物・銃器事件など。政令で金融商品取引法違反など企業の活動に絡む犯罪も幅広く加えた。「無実の人を巻き込む危険がある」との懸念があり、虚偽の供述をしたり、偽造した証拠を提出したりした場合には罰則が設けられている。
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被告や容疑者が罪を認めたり、捜査への協力や他人の犯罪について供述や証言をする見返りに、検察が求刑を軽くしたり、訴因が複数ある場合にはその数を減らすことを認める制度。特定の犯罪の主犯を有罪に持ち込む供述を、従犯から集めやすくするねらいがあり、組織犯罪の解明や裁判費用・時間の節約に役だつとされる。一方、自分の罪を軽くするため嘘(うそ)の告発や冤罪(えんざい)を引き起こすなどのデメリットをもあわせもつ。被告人の罪状認否が存在する英米法諸国で一般的に行われているほか、大陸法のドイツ、フランス、イタリアなどには、自白や捜査協力などをした被告人の刑を軽減・免除する「改悛(かいしゅん)者制度」「王冠証人制度」「合意制度」などがある。検察官と被告・弁護人が合意して行われるのが一般的であるが、ドイツでは裁判官も関与する。
長く日本では司法取引は認められていなかった。しかし2010年(平成22)の大阪地方検察庁特捜部主任検事の証拠改竄(かいざん)事件を機に、2016年5月に刑事司法改革関連法(改正刑事訴訟法など)が成立し、2018年6月に司法取引「協議・合意制度」(刑事訴訟法350条の2)が導入された。刑事事件の容疑者や被告が捜査当局に対し、他人の犯罪を供述や証拠提出で明かせば、不起訴、起訴取消し、軽い求刑、軽い罪での起訴などの見返りを得られる。ただしアメリカのように自分の犯罪を認めて見返りを得る仕組みはない。法人の司法取引も可能。適用対象は、暴力団などがからむ特殊詐欺、薬物・銃器犯罪のほか贈収賄(ぞうしゅうわい)、談合などの独占禁止法違反、脱税、著作権法違反といった経済犯罪に限定し、殺人や性犯罪は適用外である。冤罪などを防ぐため、司法取引の成立には本人、検察以外に弁護人の同意が必要。虚偽供述には懲役5年以下の罰則がある。刑事司法改革関連法では、司法取引のほか刑事責任を追及しないと約束して他人の犯罪を強制証言させる「刑事免責制度」、取調べ可視化(録音・録画)、通信傍受の対象拡大も順次実施された。
[矢野 武 2018年12月13日]
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…さらに,英米においては,公判のはじめに被告人が〈有罪の答弁〉をすると,公判の手続を省いてただちに有罪判決をする,いわゆるアレインメント制度がとられており,その意味で一種の処分権主義を認めたに等しいともいえよう。とくにアメリカを中心に,検事と被告人(弁護人)の間で答弁のための取引(たとえば,有罪の答弁と引換えに刑を軽くする)まで行われるので,そのような色彩がますます強くなっている(これを司法取引――プリー・バーゲンという)。この間にあって日本では,旧法まで職権主義のやり方をとっていたが,現行刑訴法は,英米法の影響を受け,基本的に当事者主義を採用することとなった。…
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