翻訳|fixed assets
企業が長期にわたり使用または保有する資産のことを企業会計上「固定資産」とよぶ。個人が保有する固定資産とは異なる。貸借対照表の表示上の分類として、流動資産と固定資産の区分があるが、そのおもな違いは、企業が棚卸資産や売買目的有価証券等の流動資産のように、加工もしくは直接的な売却を目的とせず、長期にわたり、営業活動における使用や投資目的において収益・利得の獲得を期待して保有するという点である。流動資産と対比される点の一つは長期にわたる保有を前提とする点であるが、流動・固定の分類は営業循環基準や1年基準等により行われる。
さらに、固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産(投資等)に分類される。有形固定資産は、実体を有する事業用資産であり、具体的には、建物、備品、機械、土地、建設仮勘定などがある。無形固定資産は、法律上の権利である工業所有権(=産業財産権。特許権、実用新案権、商標権、意匠権)、借地権、専用側線利用権などと、超過収益力の性格を有する「のれん(営業権)」からなる実体としての形を有しない資産である。投資その他の資産(投資等)には、企業が利殖を目的として投資をした長期資金の性格を有する子会社・関連会社株式やその他有価証券、出資金、長期貸付金、長期前払費用などがある。
固定資産の期末評価に関しては、取得原価による評価を基礎として、取得後保有する会計期間にわたり、減価償却による手続や減損会計による評価手法が適用される。また、経営分析の指標において固定資産を使って分析するおもなものには、財務の安全性をみるための固定比率と固定長期適合率がある。固定比率とは、
固定比率(%)=固定資産÷株主資本×100
の式で示され、固定資産がどの程度、株主資本でまかなわれているのかをみる。そして、固定長期適合率とは、
固定長期適合率(%)=固定資産÷(株主資本+固定負債)×100
の式で示され、固定比率よりは少し広く、固定資産がどの程度、固定負債と株主資本でまかなわれているのかをみるものである。
[近田典行]
『あずさ監査法人編『固定資産の会計実務』(2009・中央経済社)』▽『堀内三郎著『固定資産会計の知識』(日経文庫)』
資産の分類上,流動資産に対する概念であって,販売を目的としないで企業がその経営活動のために長期間利用するかあるいは長期間所有する資産をいう。長期・短期の区分は,ふつう1年を基準として判断する。すなわち,貸借対照表日の翌日から起算して1年をこえて利用する設備資産等とか,同じく1年をこえて所有する長期的資金資産等を固定資産という。前者の例として,土地,建物,備品,特許権,鉱業権等があり,後者の例として,定期預金,長期貸付金,関係会社有価証券等がある。固定資産は,さらに形態や性質等から,(1)有形固定資産,(2)無形固定資産,(3)長期投資資産に分けられる。(1)は具体的形状を有する固定資産であり,この中には土地,および建物,構築物,機械装置,車両,備品等の設備資産,さらに森林,鉱山,油田等の減耗性資産が含まれる。(2)は具体的形状をもたない固定資産であり,法律上の権利を意味する資産と,他の企業に比べて超過収益力価値の存在を認める資産とがある。前者に属するものとして,特許権,借地権,商標権,鉱業権,漁業権等があり,後者の資産として営業権(のれん)がある。(3)は余裕資金の利殖のための投資および他企業を支配・統制する目的や取引関係を密接にする目的で行う投資等の資産をいい,定期預金,長期貸付金,子会社株式,子会社社債,関係会社出資金が含まれる。
設備資産には一定の限られた命数(耐用年数)があり,その期間中の使用や所有によって価値が減っていく(減価する)性質のものである。したがって減価depreciationに見合う金額を費用化する必要がある。この費用化の手続を減価償却という。土地は,一般に価値の減価が認められないとして減価償却の対象とはされない。設備資産は,営業の用に供されて費用化されてしまった後には,他の事情に変化がなければ,通常再び同一種の資産をもって代置される。これに対して減耗性資産は,鉱山業における埋蔵資源,土砂,石材,森林資源のような天然資源であって,それを採取,伐採することによりしだいに枯渇していき,資源の消尽後の同一種資源への代置は不可能である点に違いが認められることから,その償却を減耗償却depletionという。また,無形固定資産の償却のことはアモーティゼーションamortizationという。
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(小山明宏 学習院大学教授 / 2007年)
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…このような投下過程にある資産は,その性格上,投下額すなわち現金支出額(原価)を基準として評価する。資産を貸借対照表上に示すときには,その流動性の大小から,流動資産と固定資産に区別して表示する。流動資産には,現金,および商品や製品,原材料,仕掛品のような棚卸資産のほか,得意先との通常の商取引によって生じた債権(受取手形,売掛金等),さらに,これらの資産以外のもののうち,1年以内に回収されるものが含まれる。…
…資産の分類上,固定資産に対する概念であって,現金および通常の営業活動の結果,比較的短期間内に現金に転換されるものと認められる資産をいう。流動資産と固定資産とを区分する基準として,一般に(1)正常営業循環基準normal operating cycle ruleと,(2)1年基準one year rule(ワン・イヤー・ルール)とがあり,一般に認められた企業会計の慣行にしたがえば,両者を併用して判定する。…
※「固定資産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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