デジタル大辞泉
「国際捕鯨委員会」の意味・読み・例文・類語
こくさい‐ほげいいいんかい〔‐ホゲイヰヰンクワイ〕【国際捕鯨委員会】
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国際捕鯨委員会(IWC)
クジラ 資源の保存と捕鯨産業の秩序ある発展を目的に国際捕鯨取締条約に基づき1948年に設立された国際機関。IWCは「International Whaling Commission」の略。日本は51年に加盟した。約80種類生息しているクジラのうち、シロナガスクジラ やザトウクジラ など大型の13種類を管理対象とする。水産庁 によると8月時点で加盟国のうち捕鯨支持国は日本やノルウェー など41カ国、反捕鯨国がオーストラリア やブラジル など48カ国。捕鯨支持国と反捕鯨国が激しく対立している。
更新日:2018年12月26日
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こくさい‐ほげいいいんかい‥ホゲイヰヰンクヮイ 【国際捕鯨委員会】
( [英語] International Whale Committee の訳語 ) 国際捕鯨条約 に基づき設置された国際機関。年に一回開催され、捕鯨頭数の割り当て、漁期、漁場の設定などを行なう。一九八二年の総会では、商業捕鯨の全面禁止化の方針が打ち出された。IWC。
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国際捕鯨委員会 こくさいほげいいいんかい International Whaling Commission
クジラ類資源の保護と捕鯨業の秩序ある発展を目的とした国際機関。英語の頭文字 をとってIWCと略称する。1948年に国際捕鯨取締条約(国際捕鯨条約。1946年署名)が発効し同年発足した。もともと捕鯨国の捕鯨枠を決める資源管理組織であったが、自然保護機運の高まりを受け、商業捕鯨から調査捕鯨 まで捕鯨全般を否定する反捕鯨的組織に変容した。条約締約国は89か国(2018年8月時点)あり、水産庁調べでは、反捕鯨国が48か国を占め、捕鯨支持国は41か国である。日本は1951年(昭和26)に加盟し、捕鯨支持国として最大の拠出を続けてきたが、2018年(平成30)に脱退を決め、2019年7月から日本領海と排他的経済水域で商業捕鯨を再開する。
国際捕鯨委員会は約80種のクジラ類のうち、シロナガスクジラ、ザトウクジラ、ミンククジラ など大型13種を管理対象とする。事務局はイギリスのケンブリッジ。おもな任務は、(1)クジラ資源の保存・利用についての規則採択、(2)クジラ及び捕鯨に関する研究や調査の勧告、(3)クジラ類の現状や傾向、捕鯨活動の影響に関する統計的資料の分析である。科学、保護、財政運営等の小委員会があり、重要な案件は総会(2012年まで毎年開催、以降は隔年開催)で議決する。もともと日本、ノルウェー、イギリス、オランダ 、旧ソ連など商業捕鯨国の国際組織であったが、1960年代にイギリスとオランダが捕鯨から撤退したうえ、1970年代からの自然保護運動の高まりを受け、反捕鯨国が委員会の多数を占めるようになった。1982年には商業捕鯨の一時停止(モラトリアム )を決議し、1994年に南極海を捕鯨禁止区域(サンクチュアリ )とした。当初商業捕鯨禁止に抗議していた日本はこれを受け入れると同時に、1987年から南極海で調査捕鯨を開始し、1994年(平成6)からは北西太平洋にも調査捕鯨海域を広げた。しかし2014年、国際司法裁判所は日本の南極海調査捕鯨を国際捕鯨取締条約違反であるとの判決を下した。このため日本は、南極海での調査捕鯨から撤退し、北西太平洋での調査捕鯨も縮小を余儀なくされており、国際捕鯨委員会からの脱退を決めた。なお、商業捕鯨を続けるカナダ は1982年に国際捕鯨委員会を脱退。一方、ノルウェーとアイスランド は商業捕鯨モラトリアム には科学的根拠がないとして、国際捕鯨委員会に加盟したまま商業捕鯨を続けている。
[矢野 武 2019年6月18日]
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国際捕鯨委員会 こくさいほげいいいんかい International Whaling Commission; IWC
クジラ類 資源を適切に保存し,捕鯨 産業の秩序ある発展を目指す国際捕鯨取締条約 ICRW (1946締結)に基づき,1948年に設置された政府間組織。常設事務所はイギリスのケンブリッジ。1949年に第1回会議がロンドン で開かれて以降,総会は 2012年まで毎年開かれていたが,その後隔年開催となった。クジラ類資源の保存および利用についての規則の採択,クジラ類や捕鯨に関する研究・調査の勧告と組織化,クジラ類の現状や傾向および捕鯨活動の影響に関する統計的資料の分析をおもな任務とする。IWCは ICRWの条文を修正することはできないが,下部委員会の科学委員会や技術委員会が検討した条約付表(具体的な漁期や水域,捕獲枠などを定めている)の修正案を本会議にかけ,有効票数の 4分の3の賛成を得て修正することができる。加盟国は修正に異議がある場合,必要な手続きを経て異議申し立てができ,付表に拘束されない。下部委員会としてほかに,財政運営委員会,保存委員会がある。 IWCは当初捕鯨国を中心とする組織で,日本も 1951年に加盟したが,1960年代にイギリスとオランダが捕鯨から撤退,1972年には国連人間環境会議 が商業捕鯨の 10年間モラトリアム(一時停止)を勧告したのを機に国際世論 が環境保全 に傾くと,非捕鯨国・反捕鯨国が多数加盟するようになった。IWCは 1979年インド洋 クジラ類サンクチュアリ(捕鯨禁止水域),1982年商業捕鯨モラトリアム (一時停止),1994年南極海クジラ類サンクチュアリの設定を次々と決議し,捕鯨への管理・規制を強化した。日本は商業捕鯨モラトリアムに異議を申し立てたが,アメリカ合衆国の圧力のもと 1986年に異議を取り下げ,1988年に商業捕鯨を中断,1987年南極海 で,1994年北西太平洋でそれぞれミンククジラ(コイワシクジラ )を対象に調査捕鯨 を開始した。2000年以降は捕獲対象種を広げたが,2014年国際司法裁判所 ICJが,反捕鯨国オーストラリアの訴えを認め,南極海における日本の調査捕鯨が条約条文(8条)に定められた「科学的研究」にあたらないとして,中止命令をくだした。2018年日本は捕鯨国と反捕鯨国の対立により資源管理の意思決定において機能不全に陥った IWCに対して改革案を提示したが否決され,商業捕鯨の再開も見込めないことなどを理由に同年 12月に脱退を通告,翌 2019年6月に正式に脱退した。主要な捕鯨国の動向としては,カナダは商業捕鯨モラトリアムが採択された 1982年に IWCを脱退,アイスランドは 1992年に脱退後,2002年に復帰し,商業捕鯨モラトリアムに異議を申し立てて 2006年に商業捕鯨を再開。ノルウェーは 1982年に異議申し立てをしたまま商業捕鯨を継続している。2019年7月現在の加盟国は 88。
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「国際捕鯨委員会」の意味・わかりやすい解説
国際捕鯨委員会【こくさいほげいいいんかい】
International Whaling Commissionの訳で,IWCと略称される。クジラ資源保護のための国際的規制条項を定めた国際捕鯨取締条約 に基づいて,1946年に設置された国際機関。英国のケンブリッジに本部が置かれ,加盟国は57ヵ国(2004年7月),年1回開催される総会のほかに科学・技術・財政運営の3つの小委員会がある。 発足当初は捕鯨 枠を決める場であったが,1972年の国連人間環境会議(ストックホルム会議 )で10年間の商業捕鯨緊急一時停止(モラトリアム)宣言が決議されて以降は,反捕鯨活動の場としての性格を強め,日本・ノルウェーといった捕鯨継続を望む少数国と,欧米を中心とする反捕鯨を掲げる多数国の対立の場となっている。1982年にIWCは,商業捕鯨モラトリアムを採択し,母船式捕鯨は1985年漁期から,沿岸捕鯨は1986年から禁止された。これによって日本は,南氷洋(南極海)でのミンククジラ の調査捕鯨(年間400頭前後)を除いて,1987年3月からは同海域での母船式捕鯨を中止し,翌1988年には沿岸捕鯨を中止した。1982年のモラトリアムでは,科学的助言をもとに,遅くとも1990年までにクジラ資源の包括的な評価を行うことがうたわれているが,反捕鯨国が多数を占めるIWCはこの見直し作業を継続協議という形で先送りしている。 1994年5月の第46回総会では,南氷洋にクジラのサンクチュアリ(聖域)を設定することが決定された。これによって西太平洋と大西洋の南緯40°以南,東太平洋の南緯60°以南,インド洋の南緯55°以南が全面的な捕鯨禁止地区とされ,10年ごとに見直すことが決まった(2004年の総会でサンクチュアリの撤廃案は否決された)。同案に対して捕鯨国である日本は唯一反対し,ノルウェーは棄権した。日本の調査捕鯨とノルウェーの商業捕鯨に対する風当りは強く,たびたび中止決議が採択されているが,一方で両国は,科学小委員会の意見を総会に反映すること,そして科学的根拠に基づくクジラ資源の保存と持続的利用を図ることを要求している。日本はまた,エスキモーやグリーンランド人がおこなう原住民生存捕鯨に類似するものという立場からミンククジラ以外の小型クジラ類の沿岸捕鯨を行っているが,沿岸のミンククジラの暫定救済枠の要求も行っている。
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「国際捕鯨委員会」の解説
国際捕鯨委員会
クジラの適切な保護・管理と捕鯨産業の秩序ある発展を目的とする国際機関。正式名称はInternational Whaling Commission(略称はIWC)。1946年に締結された国際捕鯨取締条約に基づき、48年に捕鯨国を中心とする15カ国で設立された。本部は英国のケンブリッジ。委員会の事務・研究等は科学委員会、保護委員会、財務管理委員会など六つの下部委員会が分担し、重要案件は隔年で開催されるIWC総会で議論・採択される。加盟国は89カ国(2018年末時点)。日本は1951年に加盟したが、2019年6月末までに脱退することを18年12月に表明している。
IWCの主要任務は、「クジラ資源の保存・利用についての規則の採択」「クジラと捕鯨に関する研究・調査の勧告と組織」「クジラの現状・傾向や捕鯨活動の影響に関する統計資料の分析」の三つ。条約の対象となるクジラは、シロナガスクジラ、ザトウクジラ、ミンククジラなど大型13種に限られる。設立当初は、捕鯨の維持継続を目指した捕鯨枠の設定が主要な議題だったが、1972年に国連人間環境会議が「商業捕鯨の10年間停止」勧告を採択してから、捕鯨国と反捕鯨国の対立が表面化。その後、生物資源保護や動物愛護などを唱える多くの反捕鯨国がIWCに新規加盟したため、IWC総会は捕獲の制限強化の議論の場へと移っていった。82年には大型船団による商業捕鯨が停止され、捕鯨国のカナダが脱退。更に86年には、沿岸海域での商業捕鯨も停止された。いずれも、科学的な生態調査・分析を行ったのち再検討するという、一時的な緊急措置によるもの(捕鯨モラトリアム)だった。しかし、環境保護・動物愛護団体による世界的な反捕鯨運動の広がりもあり、商業捕鯨再開を視野に入れた再検討は先送りされ、94年には南氷洋を鯨類保護区(サンクチュアリ)に設定する案も可決された。
日本は「捕鯨モラトリアム」を受け入れる一方、87年から生態調査を目的とした南氷洋での調査捕鯨を開始。反捕鯨国からの「疑似商業捕鯨ではないか」という批判を浴びながらも、日本は毎年、調査データ・分析結果を科学委員会に報告し、商業捕鯨の早期再開を訴え続けてきた。水産庁(平成30年11月「捕鯨をめぐる情勢」)によると、IWC89カ国のうち、捕鯨支持国はアイスランド、ロシア、デンマーク、韓国など41カ国、反対国は米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドなど48カ国と拮抗(きっこう)している。しかし、総会での採択には加盟国の4分の3以上の賛成が必要で、2018年にブラジルで開かれた第67回IWC総会でも、日本が提案した商業捕鯨再開を含むIWC改革案は反対多数で否決された。
19年6月30日、日本はIWCを正式に脱退し、1988年以降中断していた商業捕鯨を再開した。
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世界大百科事典(旧版)内の 国際捕鯨委員会の言及
【国際捕鯨取締条約】より
…前文は条約制定の経緯・目的を記載し,その目的をクジラ資源の乱獲を防止し,かつその維持増大をはかることにより捕鯨業の秩序ある発展を期するとしている。本文は全文11条で,適用対象,批准・加入,付表の修正手続等のほか,条約実施機関としての国際捕鯨委員会の組織・任務を定めている。付表は捕鯨に対する具体的な規制措置を列記し,とくにクジラ資源管理の具体的な規準,すなわち当該資源が最適な資源水準または最大持続的生産を与える資源水準の近傍にあるか,これを上回る水準にあるものに限り捕鯨が許されることなどが記載されている。…
【捕鯨】より
… 第2次大戦後,鯨類の資源管理を国際的に行おうとする気運が盛りあがり,46年に主要捕鯨15ヵ国で[国際捕鯨取締条約]が結ばれ,48年に効力を発生した。この条約のもとに国際捕鯨委員会International Whaling Commission(略称IWC)が設置され,鯨類資源の国際的管理を実施することになった。日本は51年に加盟を認められた。…
※「国際捕鯨委員会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」