翻訳|geology
ある区域に分布する岩石、岩体の種類、その形成の仕方および時代または年代、その物理的・化学的性質、その分布の仕方、地質構造などとそれらの特徴を総括して、その区域の地質という。地質図、地質断面図などにその特徴が要約される。なお、岩体とは同一種または複数種の岩石群のまとまりある集合体で、地質図に記入する際の単位となるものである。地下資源の埋蔵、建造物建設にあたっての地盤・岩盤の安定性、地震・火山・地すべりなどの自然災害に対しての安全性などを示す特質もまた地質の要素とみなされる。岩石とその分布、地質構造をつくる現象は、個々の断層運動についての場合も、また総括的な現象としての造山運動の場合も地質現象とよばれる。地質現象がおこった環境、それを引き起こす原因は、それぞれ地質環境、地質作用または地質営力とよばれる。地質環境には堆積(たいせき)環境、マグマ形成条件などがある。地質作用には風化作用、変成作用などがある。大洋プレートの沈み込みは地質営力の一つである。
[木村敏雄]
地質は岩石の生成環境、地殻変動史、現在の環境などによって異なる。かつて陸上または海底の堆積環境にあったところでは、堆積岩としては普通、泥岩、砂岩、礫(れき)岩などの砕屑(さいせつ)岩が層状岩体(地層)として卓越する。熱帯海岸では砕屑物の供給が少ないところでサンゴ礁石灰岩が堆積した。外洋の海底にはチャートや外洋性石灰岩が堆積した。堆積環境が河川、湖沼、潟、浅海、深海などのいずれであったか、砕屑物・溶解物質供給源地の地質や地形、供給源地から堆積地までの気候や、風・川・波・海流・乱泥流などの砕屑物運搬作用の違いによって、鉱物・岩石片組成、粒度組成、円摩の程度、化学組成その他堆積岩としての性質が異なる。砕屑岩は堆積した当初は普通、軟弱である。しかし長い年代を経ると埋没による圧密や続成作用によって堅硬な岩石となる。堆積岩体が他の岩体を覆うか否かが、いずれの岩体が新しいかを知る目安となる。堆積岩体生成の時代や環境は、それぞれを示す特徴をもつ化石(標準化石または示相化石)に示される。
火山の周辺では、火山活動時に火山砕屑岩や溶岩としての火山岩が層状岩体としてできる。その地下でのマグマのでき方や性質の違いによって、またマグマの分化作用によって、玄武岩、安山岩、流紋岩などの違いができる。またマグマの性質が違うと火山爆発の仕方が異なるので、溶岩や火山砕屑岩の地表での分布の仕方も異なる。地下にマグマができたところでは、火山によって地表に噴出しないところでも、地下で固結することによって、深成岩や岩脈としての火山岩が周辺岩石に貫入してできる。これら火成岩体と他の岩体との接し方によって二つの岩体の新旧を知ることができる。深成岩のうち花崗(かこう)岩は中国地方にみられるように、ときに底盤として広く分布する。そこでは地表に花崗岩が分布していない場合でも、地表の岩石が熱変成作用を受けていることから、地下に花崗岩があると推定できる。玄武岩マグマからの深成岩としては普通、斑糲(はんれい)岩ができる。これら深成岩は普通、塊状岩体をつくる。超塩基性岩は玄武岩マグマのマグマ溜(だま)りにできたものも多い。しかし、マントル構成岩として地下深くに広く分布するので、火山の爆裂によって橄欖(かんらん)石団塊としてまれに地表にもたらされる。このほかに、大洋地殻基底のマントルであったものが現在では陸上に現れていることがある。
[木村敏雄]
岩石がその生成後に、異なる環境に置かれると、変成作用や変質を受ける。変成作用は高温条件または高圧条件に変わったことによっておこることが多い。前者はマグマ形成に関連し、後者は沈み込みに伴って岩体が地下深くに埋没することによっておこる。変質は地下では熱水によるものが多い。ときに岩石の軟弱化を引き起こす。火成岩や変成岩の生成年代は普通、放射性元素を利用した年代測定法によって求められる。
岩体はその生成環境に応じて、石油や石炭また金属・非金属鉱床をときに含む。それら地下資源の存在を示す地質的特徴が周辺岩体にみられることが多いので、その地質的特徴が地下資源探査に役だつ。
[木村敏雄]
一つの区域が時代の経過とともに異なる岩石生成環境に置かれると、そこに種々異なる生成年代と性質をもつ岩石ができる。安定大陸では、安定期になって以来現在まで環境も安定している。したがってその時期以後にできた地質は単調で、似た性質をもった同時代の岩石が広く分布する。これに反して、造山帯では地殻の圧縮や隆起・沈降がおこり、また火成岩の貫入活動がおこるので、場所と時代が変わると、地質環境も大きく変わる。したがって、そこでは地質は複雑となる。褶曲(しゅうきょく)や断層によって岩体が変形したり変位するとますます複雑になる。日本のように繰り返し地殻変動を受けたところでは、古い時代の地層ほど強く変形している。地下深くでは岩石は塑性変形しやすいし、また断層運動によっては幅広い破砕帯ができる。このようにして、造山帯の地下で著しく変形、破砕した岩体群が隆起して、表層部の侵食除去によって地表に現れると、そこはとくに複雑な地質の地帯となる。
これに対して新生代新第三紀に大きい地殻変動がなかったところでは、新第三紀層分布区の地質は単調である。かなりの変動を受けたところでも、中・古生代からの繰り返す変動を受けていないこと、地下深所での変形を受けていないことのため、新第三紀層分布区の地質は、その基盤岩分布区に比べると、地質は一般に複雑でない。
形成後に埋没したものを含めて、地下でできた、または変形した岩石は、地表に現れると風化を受けて変質する。固結した岩石であった破砕岩や変成岩もときに著しい軟弱岩となる。日本の過去の温暖期には、現在の熱帯地方のように、深層風化による変質が著しく、それによる特徴ある地質がみられる区域もある。以上述べたように、地質は過去から現在までの長い期間にある区域におこった地質現象の総決算であるといえる。
[木村敏雄]
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