大学東校とともに東京大学の源流となった官立洋学校。1869年(明治2)明治新政府は旧幕府直轄学校の昌平学校(旧昌平黌(しょうへいこう)、現在の東京都文京区湯島1丁目)を大学校に改めると同時に、開成学校(旧種痘所→開成所)、医学校(旧種痘所)を再興し、それぞれを大学校の分局とした。同年大学校が大学(本校)と改称された際、大学の南方に位置する開成学校は大学南校、東方の医学校は大学東校と改称された。翌1870年大学(本校)が当分の間、閉鎖されるに及び、洋学系の大学南校と東校が近代大学の礎石を形成することになった。当初大学南校の学科は、伝習(語学)、講習(歴史、地理、究理、文典)、数学であったが、「大学南校規則」(1870)の制定により、普通、専門(法、理、文)の2科に大別されるようになった。学生募集にあたっては、各藩から優秀な青年(300余名)を推薦させる「貢進生制度」を採用し、それによって多くの人材を輩出するに至った。教員にはフルベッキをはじめとする外国人教師を多数雇うとともに、日本人教官や卒業生を海外に留学させるなど、西洋近代の学術導入に積極的な役割を演じた。
1871年、大学を廃止して文部省が新設され、大学南校は単に南校と改称、72年「学制」の発布とともに第一大学区第一番中学となった。当初の教育内容は外国語による普通学が中心であったが、卒業生が出るに及び専門学を授ける上級の機関が必要となり、法学、理学、工業学、諸芸学、鉱山学の課程を置く専門学校に昇格した。校名も旧来の開成学校(1873)、さらには東京開成学校(1874)と改称を重ね、1877年、東京医学校(旧大学東校)と合併して東京大学の創設となった。
[馬越 徹]
『『東京帝国大学五十年史 上冊』(1932・東京大学出版会)』▽『『東京大学の百年・1877―1977』(1977・東京大学出版会)』▽『『東京大学百年史・通史一』(1984・東京大学出版会)』
明治初期の官立洋学校。現在の東京大学法・理・文学部の源流。1869年(明治2)6月,明治政府は旧江戸幕府直轄の高等教育機関昌平学校(昌平坂学問所)を大学とし,これに開成学校(開成所),医学校(医学所)の2校を分局として統合,同年12月開成学校を大学南校と改称した。これは本郷湯島にあった大学本校の南にあたる神田一ッ橋に位置していたためである。医学所は下谷御徒町にあり,〈大学東校〉と称した。〈普通学ヨリ専門学科に至ル迄其理ヲ究メ其技ヲ精フスル〉ことを教育目標としたが,実際には洋学を通じての普通教育を行うことが主であり,とくに英語,フランス語を中心とする語学教育,多数の外国人教師によるその訓練を行った。70年10月には,各藩が派遣した英才300余名を〈貢進生(こうしんせい)〉として迎える一方,同年には学生・教官から外国留学生を派遣,翻訳局では洋書の翻訳出版を行った。71年7月大学の廃止により南校と改称,同年9月いったん閉校して学制を改革し10月に再開校した。その後東京開成学校などと改称し,77年に東京医学校と合併して東京大学となった。
→東京大学
執筆者:寺崎 昌男
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開成学校の後身。のちの東京大学法・理・文学部の前身。1869年(明治2)6月大学校の設立にともないその一部となり,同年12月に大学南校と改称。湯島の大学本校の南,神田錦町にあった。各藩から推挙された貢進生(こうしんせい)に主に外国人教師が,普通学・専門学,とくに語学の教育にあたった。71年7月に南校となり,のち第1大学区第1番中学をへて73年開成学校(のち東京開成学校)となる。
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…前者は幕府設立の開成所(蕃書調所の後身)を明治政府が引きつぎ,洋学教育,翻訳・出版認可等の役割を課した。のち大学や他の学校制度の変遷とともに大学南校,南校,第一大学区第一番中学と改称され,学制(1872)体制のもとでふたたび開成学校となった。法学,理学,工学,文学系の専門学校の一つで,外国人教師の指導のもとに専門諸学の教育に当たった。…
※「大学南校」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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