宇宙と地上を結ぶ輸送機関として構想されているエレベーター状の宇宙往還システム。軌道エレベーターともよぶ。現在、地上と宇宙を往復する手段は、化学ロケットに頼っている。たとえば、国際宇宙ステーション(ISS)への物資の補給は、日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」(2020年運用終了。現在、新たな補給機を開発中)などが担っている。しかし、化学ロケットは推進剤に有害物質を使い、環境汚染を招くだけでなく、ロケットの質量のほとんど(約90%)を燃料が占め、打上げコストが非常に高い。そのために、より低コストで環境にもよい宇宙往還システムが研究されているが、宇宙エレベーターはその一つである。
宇宙エレベーターの具体的な構築方法は、地球の自転と同期する静止軌道上(地表より3万6000キロメートル上空)から、地上方向および宇宙方向へ同時にケーブルを展開する。そして、地表に届いたケーブルを固定し、そのケーブルに沿い、クライマーとよぶ運搬機で宇宙と往復する。最大の課題は、3万6000キロメートルもの長さでの使用に耐え得るケーブルの素材の確保であった。しかし、カーボンナノチューブなどの新素材が開発されたことにより課題解決に向けて大きく前進した。現在、アメリカや日本で具体的な検討が始められており、宇宙エレベーターは空想から実現可能な段階に到達しつつある。
[山本将史 2021年7月16日]
(2016-10-27)
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