法律に基づき社会的関係を結んだ当事者間で、生命・身体の安全を守るよう配慮する義務。雇用関係では職場管理者が従業員に対して負い、この義務を怠って従業員が損害を被った場合、賠償責任がある。企業での過労死や学校でのいじめ自殺などの訴訟でしばしば争点となる。東日本大震災の津波犠牲をめぐっては昨年9月の
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労働者、学生・生徒・児童・園児などに対し、生命・身体の安全や健康を守るように配慮しなければならない義務。企業と従業員、国(地方自治体)と公務員、学校運営者と生徒など法律に基づいて社会的関係を結ぶ当事者間で成立する義務であり、これを怠って損害を与えた場合、賠償責任が生じる。整備中の車両にひかれて死亡した陸上自衛隊員に対し、国の賠償責任があるかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は1975年(昭和50)、「安全配慮義務は、当該法律関係の付随義務として、一般的に認められるべきものである」との判決を示し、この判例によって法的概念として確立した。雇用関係については、2008年(平成20)施行の改正労働契約法第5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定し、安全配慮義務が明文化された。
近年、企業での過労死やうつ病、学校でのいじめによる自殺などの係争で争点になることが多い。安全配慮義務を怠ったと判断された場合、民法第709条(不法行為責任)、民法第715条(使用者責任)、民法第415条(債務不履行)などを根拠に、多額の賠償を命じる判決が相次いでいる。たとえば、入社1年5か月の社員が過重労働によるうつ病で自殺した電通事件では、2000年に最高裁は安全配慮義務違反があったとして企業の損害賠償責任を初めて認定し、1億6857万円の損害賠償を命じた。高血圧を患うシステムコンサルタントが年間3500時間を超える労働で過労死した事件(システムコンサルタント事件)では、最高裁は同じく2000年に、安全配慮義務を尽さなかった債務不履行があったとして、企業側に3200万円の損害賠償を命じた。しかし、安全配慮義務の適用範囲などについてはさまざまな学説があり、裁判での判断にゆだねられているのが実態である。
[編集部]
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