小乗(読み)ショウジョウ

デジタル大辞泉 「小乗」の意味・読み・例文・類語

しょう‐じょう〔セウ‐〕【小乗】

《「乗」は車・乗り物の意。転じて、人を解脱に導く教えのこと》仏語。後期仏教の二大流派の一。大乗に比して、自己悟りを第一とする教え。大乗側からの貶称へんしょうインド・ミャンマー・タイなどがこの系統に属する。⇔大乗

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精選版 日本国語大辞典 「小乗」の意味・読み・例文・類語

しょう‐じょうセウ‥【小乗】

  1. 〘 名詞 〙 ( [梵語] hīnayāna の訳語。小さな乗り物の意 ) 仏語。後期仏教の二大流派の一つ。仏滅後、部派仏教の展開とともに、別に菩薩の道を説く教徒が起こり、自ら大乗と称し、部派を小乗とけなしたところからいう。自己の得脱を主とする声聞・縁覚の教えとされる。阿含経や四分律・五分律などの律、婆沙論・倶舎論などの論に依るもの。現在、スリランカ・タイなどの仏教は多くこの系統に属する。小法。小乗仏教。小乗教。
    1. [初出の実例]「一切大乗小乗。経律論抄䟽章等。必為転読講説。悉令尽竟」(出典:続日本紀‐天平勝宝元年(749)閏五月癸丑)
    2. 「小乗の懺悔はただ軽き咎をのみ失ふ」(出典:観智院本三宝絵(984)下)

小乗の語誌

( 1 )今日では小乗を南伝仏教、大乗を北伝仏教と言う。小乗(南伝)は歴史的には紀元前三世紀に成立した上座部と、同じく二世紀中頃の説一切有部があり、共にインドで生まれている。前者はスリランカや東南アジアに伝わり、後者は大乗と共に中国、日本に伝わった。
( 2 )日本では奈良時代の「成実論」、「倶舎論」、律、法相宗(「解深密経」「成唯識論」による。興福寺薬師寺法隆寺清水寺がこの宗による)に見られる。挙例の「続日本紀」はこれである。
( 3 )平安時代に入って「観智院本三宝絵」の「比叡懺法」の例は伝教大師最澄が大乗を主張し小乗を排した例である。以後日本では大乗が主流になる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小乗」の意味・わかりやすい解説

小乗
しょうじょう

小乗仏教」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の小乗の言及

【大乗仏教】より

…《般若経》《法華経》《華厳経》《阿弥陀経》などの経典群である。これらの経典のなかで,彼らは自らの新しい仏教運動を,〈あらゆる人々の救いをめざす大きな乗り物〉という意味をこめて〈大乗〉(マハーヤーナMahāyāna)と称し,従来の旧仏教を〈限られた出家者だけの小さな乗物〉という意味で〈小乗〉(ヒーナヤーナHīnayāna)と貶称した。注目すべきは,〈この経典の四行詩でも,受持・読誦(どくじゆ)・解説(げせつ)し,さらに書写すれば非常な功徳がある〉という旧仏典には見られなかった〈経典崇拝〉を強く打ち出していることである。…

※「小乗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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