一般には暴行または脅迫によって婦女と姦淫することをいう。
刑法上,暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した場合強姦罪として処罰される(刑法177条前段)。姦淫とは性交の意味である。刑は2年以上の有期懲役。女性の性的自由を侵害する罪であるが,その手段たる暴行・脅迫は相手方の反抗を完全に抑圧するものである必要はなく,その反抗を著しく困難にするものであれば足りる。13歳未満の女性については,青少年の性的保護の見地から,暴行・脅迫の有無を問わず姦淫によって本罪が成立する(177条後段)。改正刑法草案(298条1項)によれば,この年齢は14歳未満に引き上げられている。このほか,女性が心神喪失,抗拒不能の状態におちいっていることを利用し,または,暴行・脅迫以外の手段によってこの状態におとしいれて姦淫した場合も準強姦罪として同様に処罰される(刑法178条)。姦淫の対象は女性であるため,直接単独正犯の形態で本罪の主体たりうるのは男性に限られるが,判例は,共同正犯としてなら女性も本罪を犯しうるとしている。以上の罪は未遂も罰せられる(179条)。手段たる暴行・脅迫の開始によって実行の着手が認められるが,車両を利用した形態の場合,判例は車への引張り込みの時点で着手を認めている。性器の接合をもって既遂に達し射精を必要としない。以上のいずれの罪も,2人以上現場において共同して犯したとき(輪姦)以外は親告罪である(180条)。以上の罪を犯し,よって女性を死傷させた者は,結果的加重犯として,無期または3年以上の懲役に処せられる(181条)。この場合は非親告罪である。
執筆者:西田 典之
まず性交の有無については被害者の腟内からの精液成分の検出,性病感染の有無,妊娠しているか否かなどによって判断されるが,被害者が処女であった場合には処女膜の破瓜状態も判断のポイントになる。ただし運動などにより処女膜がすでに破綻していることもあり,性交経験者でも破瓜していないことがあるので総合的な判断が必要となる。
強姦の立証は,被害者の性器ないしその周辺の損傷のほか,全身各所の抵抗によるものと推定される損傷の有無,心神喪失または抗拒不能状態におちいった薬毒物の証明,被害者の抵抗による加害者身体の損傷の有無,被害者および加害者の着衣の乱れや破損状態や和姦では考えられないような部位への精液の付着の有無などによる。
執筆者:若杉 長英
家父長制的社会においては,多くの場合強姦(レイプrape)は,被害者の視点からではなく,被害者女性の保護者とされる男性(夫や父親)の視点から,定義された。このような強姦に対する視点は,被害者女性をも非難するような社会的風潮を生み出し,被害者である女性が被害を受けたことを隠すことも多かった。こうした状況を変革するべく,1970年代から,強姦などの性暴力に対する被害者の視点にたった研究が多く生み出された。そうした研究によると,(1)強姦などの性暴力は,被害者女性に,身体的のみならず心理的にも,深い傷痕を残すことが多い,(2)強姦の被害者は,強姦によって傷つけられるだけでなく,その事件を知った他者からその後加えられる非難や興味本位の視線によっても傷つけられることが多い,(3)告発や裁判の過程においても,苦痛を感じることがある(セカンド・レイプsecond rape),(4)従来強姦は,屋外で見知らぬ男性によって強姦されるというケースが多いと考えられてきた(レイプ神話)が,実際は屋内で家族や知人の男性から強姦されるケースの方が多い。従来前者が多いと考えられてきたのは,後者の場合被害を隠すことが多く,訴えても被害者にも落ち度があるとして警察が取り上げないことが多いためである,などの問題が明らかになってきている。
→性犯罪
執筆者:江原 由美子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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