搾乳(読み)サクニュウ(英語表記)milking

デジタル大辞泉 「搾乳」の意味・読み・例文・類語

さく‐にゅう【搾乳】

[名](スル)牛や山羊やぎなどの乳をしぼること。また、しぼりとった乳。「機械搾乳する」

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精選版 日本国語大辞典 「搾乳」の意味・読み・例文・類語

さく‐にゅう【搾乳】

〘名〙 牛や山羊などの乳をしぼること。
唐人お吉(1928)〈十一谷義三郎〉六「もしかすると、日本最初の、搾乳かも知れない」

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改訂新版 世界大百科事典 「搾乳」の意味・わかりやすい解説

搾乳 (さくにゅう)
milking

乳牛およびヤギなどの乳用家畜の乳房・乳頭内の乳を,人為的に人手またはミルカーを用いて体外にとり出すこと。乳牛の場合,雌牛分娩(ぶんべん)すると乳が出はじめ,約10ヵ月間泌乳が持続するが,この間毎日,普通朝夕2回搾乳を行い,1回に数kgから20kg前後もの牛乳がでる。これらの乳は乳房の中で常時生成されており,しだいにたまっていく。乳の貯留場所は,一部は乳頭槽,乳腺槽であるが,大部分の乳は乳房の奥の乳が生成,放出されたばかりの乳腺胞の中や,そこから乳腺槽へつながる小乳管,大乳管の中にたまっている。搾乳時に手またはミルカーで行う乳のとり出し操作は,乳頭を圧迫または吸引して,いずれも乳頭内外に圧力差を作り,乳頭孔を開口させて乳頭槽内の乳を体外にとり出している。しかし乳頭槽の容積はひじょうに小さく,これに連なる乳腺槽の容積もさほど大きくない。そこで大部分の乳がたまっている乳房の奥の乳を,乳腺槽や乳頭槽へ連続的に供給しなければならず,〈乳の排出〉が必要となる。その排出機構は,乳腺胞や小乳管の周囲に分布する筋上皮細胞という特殊な収縮組織が神経内分泌反射により収縮することによって起こる。乳の排出を起こすもとである搾乳刺激を上手に与えてウシ体内で起こる乳の排出反応を促進させる必要もある。そのため,搾乳時にはウシを落ち着かせ,乳房をていねいにマッサージし,またウシを驚かさないよう注意することなどが求められる。

 また,搾乳のたびごとにしぼり残すことは,総乳量も減少させるし乳房炎原因となるおそれもあるので,できるだけしぼり残さないようにしなければならない。なお,しぼり始めに出てくる乳汁と,搾乳の最後に出てくる乳汁とでは,後者のほうがはるかに脂肪分が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「搾乳」の意味・わかりやすい解説

搾乳
さくにゅう

乳用家畜の乳を搾る作業をいう。ウシ、ヤギ、ヒツジウマなどの乳が利用されるが、消費が多いのは牛乳である。

 乳牛の手搾りは酪農作業のうちでもっとも手間のかかる仕事であるが、1960年(昭和35)ごろから日本でもミルカーによる機械搾乳法が普及し、搾乳作業は著しく改善された。手搾りは指で乳頭を加圧して搾るが、ミルカーは陰圧により乳頭管を開いて乳を吸い出す。ミルカーにはバケット式とパイプライン式とがあり、頭数規模が比較的少ない場合は前者が、中規模以上では後者が使用される。バケットミルカーは搾った乳を搾乳缶(バケット)の中に蓄える方式で、パイプラインミルカーは搾った乳をパイプラインで牛乳処理室まで送乳する。

 舎飼いの場合、多くは係留ストールが搾乳の場として使用される。放し飼いではすべて専用の搾乳室で行われる。どちらも一般にパイプラインミルカーが使用され、能率よく搾乳できる構造をもつ。さらに作業能率がよい回転式搾乳室は、ウシを円形または楕円(だえん)形の円周上に配列して回転させ、入口と出口を隣り合わせて、搾乳前後に作業者が近距離内でミルカーの着脱ができるようにした施設で、1人1時間当り100頭以上の搾乳が可能である。このほか放牧場で使用する簡易搾乳舎もあるが、これは台車の上にセットし、必要な場所にトラクターなどで移動させて搾乳する。

 乳牛では搾乳期間は泌乳開始後通常10~12か月で、この期間、搾乳は一般に1日2、3回行われ、1回当り数キログラムから20キログラム前後を搾る。回数が増えると乳量の増加がみられ、2回搾乳に対し3回では約15~25%、4回では3回の5~10%の増乳が得られる。逆に回数を減らすことは減乳の原因となり、また泌乳期間も短縮する。全泌乳期間を1回搾乳にすると、2回の約40~50%の減乳となる。不完全搾乳は、短期間行っても、その後永続的な乳量減少がおこる。したがって、搾り残し(残乳)をできるだけ少なくすることは、乳量、乳質の向上にとって重要なことである。なお、朝乳は夕乳より乳量は多いが乳脂率はわずかに低い。また搾り始めの乳は乳脂率が低く、しだいに増加し、終了時には最高となる。

[西田恂子]


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妊娠・子育て用語辞典 「搾乳」の解説

さくにゅう【搾乳】

母乳(お乳)を自分でしぼること。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の搾乳の言及

【ウシ(牛)】より


【飼育,管理】
 飼養の形式は乳牛と肉牛で,あるいは経営の形態によって多少変わってくる。例えば都市近郊に見られる搾乳業者の場合には乳牛を畜舎内に繫養(けいよう)して,飼料も濃厚飼料を多給して乳の生産量を増すことに専心しているが,同じ乳牛を飼っていても繁殖,育成を目的とする牧場では,放牧を中心とした飼養形式がとられて,牧草を食べさせ運動も十分にさせるように留意している。肉牛の場合にも,子ウシ生産地帯,育成地帯,肥育地帯とそれぞれ飼育の形が変わっている。…

【乳】より

…【槙 佐知子】
【乳と牧畜文化】
 哺乳類のなかで,他の哺乳類の乳を飲むものは,ヒトをおいてない。家畜からの搾乳を始めることによって,人類は肉食と草食という食習慣に,まったく新たな要素をもちこむことになった。 一般に哺乳類の間では,他の哺乳類の乳は,においや味の違いのために好まれない。…

【牧畜文化】より

… ただ牧畜生活の特異性を指摘しただけでは,牧畜の食生活上の特異性を見失うことになる。牧畜家畜の大半は,搾乳の対象となる。採集,狩猟や農耕がもたらす肉食も植物食も,要は人間本来のカーニボラス(肉食的)かつハービボラス(草食的)な雑食的食性,いや高等猿類以来の食性に準じた,その要求を満たすものである。…

※「搾乳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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