政治活動の公正性や透明性を確保する目的で1948年に施行された。「政治とカネ」問題が起きるたびに改正を重ねてきた。自民党の派閥裏金事件を受け、先の通常国会で成立した改正法は、政治資金パーティー券購入者名の公開基準を20万円超から5万円超に引き下げ、「いわゆる連座制」として収支報告書の「確認書」交付を国会議員に義務付けた。付則には政策活動費の領収書10年後公開や、第三者機関の設置を盛り込んだが、詳細は今後の検討事項とした。
更新日:
出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
政治資金の収支の公開や授受の規正等について定めた法律。昭和23年法律第194号。政治資金の問題はつねに水面下にあり、利権の絡んだ政治腐敗を伴いやすい。政党、政治団体および公職(この場合、国会議員、地方議員、自治体の首長をさす)の候補者の政治活動の公明を図り、選挙の公正を確保するためには、会社その他の団体が行う政治活動に関する寄付を制限する必要がある。また、政治資金の調達方法のあり方、透明性、さらには政治資金規正についての実効性の確保が必要となる。民主政治の健全な発達に寄与することを目的に、これを体系的に定めたのが1948年(昭和23)制定の政治資金規正法である(以下「規正法」という)。
[吉田善明]
「規正法」は資金の授受そのものを規正するのではなく、収支の届出と公開に重点を置いて所期の目的を達しようとしていたが、汚職、疑獄事件は後を絶たなかった。共和製糖事件など一連の黒い霧事件の後を受けた1966年(昭和41)第五次選挙制度審議会は、個人、会社、労働組合その他の団体の寄付を厳しく規正するよう答申した。金権政治に対する国民の批判が高まるなかで、三木武夫内閣は1975年に法律を全面的に改正し、政治団体の届出、資金の収支の公開および授受の規正によって、政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置こうとした。改正法の主旨は、(1)寄付限度額の設定、(2)寄付・会費の公開、(3)個人の寄付に対する税法上の優遇措置にあった。その後1980年改正で政治家個人の報告を義務づけたが、政治団体の実態が明らかにされない、賄賂(わいろ)性をもった政治資金追放の機能がない、政治家個人の政治資金規正があいまいであるなど、「ざる法」との批判があった。またこの法律は営利法人たる会社が寄付することを当然のこととしており、1970年の八幡(やはた)製鉄事件最高裁判所判決も会社の政治献金を是認したが、営利法人が政治活動を行うことができるのか、それは国民の参政権を侵害するのではないかという疑問が向けられていた。
また、1994年(平成6)に資金調達のあり方、透明性について大幅な改正がなされ、その後も改正がたびたび行われてきたが、いまだに資金調達のあり方が問われ、その解決策として会社、団体の政治献金の禁止を改正法に盛り込む動きがあるが、実現をみていない。
[吉田善明]
(1)各団体の届出義務 「規正法」は、政治団体(政党を含む)の政治資金の収支に関する目的と基本理念を定めるほか、本法の対象となる政党、その他の政治団体および公職の候補者の概念を定める。そして、これらの政党をはじめとする政治団体に対し、その名称、代表者の氏名など、一定の届出義務を課している。いいかえれば、一定の届出を行わない未届の政党や、その他の政治団体に対しては、いかなる名義をもってしても政治活動に関する寄付を受けたり、資金の支出をしたりすることを禁止している。
(2)資金管理団体の届出 公職の候補者は、資金管理団体を1団体のみ指定して、その団体から政治資金の拠出を受けることができる。このように公職候補者の政治資金を受ける団体を制限している。
(3)収支報告書 総務大臣または都道府県選挙管理委員会は、政治団体および特定公職の候補者から提出された収支報告書の要旨を公表し、かつ、収支報告書の保存を総務省および都道府県選挙管理委員会に義務づけ、何人(なんぴと)に対しても閲覧の請求に応じなければならない。また、政党および政治資金団体(政党のために資金上の援助をする目的をもつ、政党が指定した団体)の公開基準は年間5万円を超える寄付、および政治資金集めの手段の一つである政治パーティーの収入については、同一の者の一つのパーティー券購入額が20万円を超える場合は氏名、寄付の金額等が公開される。なお、国会議員(候補者も含む)が代表者である政治団体や後援会など(国会議員関係政治団体という)は、1万円以下の支出(人件費を除く)も公開対象となっている。
(4)寄付の制限 会社、団体の政治活動に関する寄付は、政党および政治資金団体に限られている。政党および政治資金団体に対する会社、団体および個人などによる寄付については年間の限度額を設け、その限度額を超える寄付の授受を禁止している。ただし、国または地方公共団体からの補助金や出資などを受けている会社、その他の法人の寄付、赤字会社の寄付、外国人、外国法人などからの寄付および匿名の寄付について、その授受を制限または禁止し、寄付を斡旋(あっせん)する場合の方法についても制限を加えている。
(5)罰則規定 届出前の寄付の受領または支出の禁止違反、会計処理に係る規制違反、収支報告書の提出の遅滞、その他の規制違反について罰則を科し、また一定期間の選挙権、被選挙権を剥奪(はくだつ)する規定をおいている。
また、1994年(平成6)の規正法の改正とあわせて政党助成法が制定された。
[吉田善明]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 政治資金の問題はつねに水面下で行われており,利権と結びついて政治的腐敗がともないやすい。そこで〈政党,協会その他の団体等の政治活動の公明を図り,選挙の公正を確保し,以て民主政治の健全な発達に寄与することを目的〉として,1948年に〈政治資金規正法〉が制定された。しかし,このような法律だけでは政治活動の公明性は期待できるものではない。…
※「政治資金規正法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加