熱エネルギーの移動を遮断する材料。この材料には無機質のものと有機質のものがあって,温度の高い場合には無機質材料が,温度の低い場合には有機質材料が一般に使用される。より温度の高い範囲で用いられる場合は耐火断熱材と呼ばれ,使用温度が低下するとともに断熱材,保温材,保冷材と呼ばれる。無機質断熱材は(1)繊維質断熱材,(2)粉末質断熱材,(3)多孔質断熱材に大別される。繊維質断熱材にはセラミック繊維,ロックウール,グラスウール,石綿などの原料が用いられ,それぞれ原料の名称をつけて呼ばれる。繊維質断熱材は繊維材料をそのまま,または種々の形状に成形して用いられ,その使用温度も一般高温用セラミック繊維では最高1400~1500℃まで可能となっている。そして,その他の断熱材に比較して断熱性,取扱い性,経済性にも優れているので,断熱材の主体を占めるようになっている。粉末質断熱材はそのまま用いる場合と結合材でいろいろな形状に成形して用いる場合があり,原料的にはケイ酸カルシウムが主体を占めるが,炭酸マグネシウムなどもある。この断熱材は繊維質より低温の場合に用いられ,ケイ酸カルシウム断熱材で最高1000℃以下である。多孔質断熱材はパーライト,泡ガラスなどの多孔質材料を成形した断熱材で,使用温度は低く一般に650℃以下である。断熱材の熱伝導率は材質と形状,使用温度によって非常に大きな幅があるが,0.03~0.60kcal/mh℃くらいである。なお,断熱材は強度が非常に弱く,ほとんど自重に耐える程度であるから,加重をかけないような設計が必要である。
執筆者:西川 泰男
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異なる温度で隣り合う二つの材料間に設けて熱の授受を少なくし、両者の温度差を保つために用いる材料。普通、比較的熱伝導率の大きい基材が多孔、繊維状、粉粒状になって小気孔を多数もち、熱伝導率の小さい複合体の形態をとっているが、多層箔(はく)材料もある。基材が有機質のものにフォームプラスチック、コルク、木質繊維など、無機質のものに石綿、岩綿、グラスウール、フォームグラス、セラミックファイバー、珪藻(けいそう)土、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、パーライト、バーミキュライトなどがある。また、使用時に温度の影響で収縮、溶融して断熱性能を低下しない安全使用温度域によって、次のように区分される。(1)保冷材(100℃以下)、(2)保温材(100~500℃)、(3)断熱材(狭義、500~1000℃)、(4)耐火断熱材(1000℃以上)。保冷材は液化天然ガス貯蔵のような超低温域用や食品などの冷凍庫から建築の省エネルギー化を目的とした断熱工法、さらには交通機関、家庭用品に至るまで広く用いられている。有機質断熱材の使用はほぼこの温度域に限られ、低温の場合は吸湿しにくいことも要求される。保温材、断熱材の例としては、建築物の火災時に躯体(くたい)の鉄骨を保護する耐火被覆や、耐火断熱材と外皮との間に用いられる断熱れんがなどがある。耐火断熱材は各種工業炉の内張りに用いられ、耐火れんがおよびキャスタブル耐火物などがあり、膨張収縮性、化学的抵抗性なども要求される。
[坪内信朗]
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熱損失を少なくするために用いる熱伝導性の小さな材料.無機質と有機質があるが,すべて空気の断熱性を利用したもので多孔性である.炉で高温面を断熱する耐火物を耐熱耐火物といい,気孔率は60~75% である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…銀,銅,金などはとくに熱伝導率が大きい。一方,通常断熱材,あるいは保温材と呼ばれるものは熱伝導率の小さい,例えば,岩綿,アスベスト,グラスウール,炭化コルクなどの物質によって作られている。そして多くの場合,多孔質,あるいは繊維層に成形されて熱伝導率の小さい空気を保持するように構成されている。…
…気体の熱伝導率は小さいが,流れが生ずるときわめて有効に熱が伝えられる。したがって綿や発泡スチロールのように空気を多く含み,しかも流れが起こらない構造のものが断熱材として使われる。なお,熱絶縁には同時に熱放射による熱の伝導を防ぐことも考えなければならない。…
※「断熱材」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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