日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
新型コロナウイルス感染症特別貸付
しんがたころなういるすかんせんしょうとくべつかしつけ
新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の影響で、一時的に業績が悪化した中小企業や個人事業主向けの無担保融資制度。新型コロナウイルス感染症流行による被害対策の一環として、2020年(令和2)3月に創設された。略称はコロナ特貸。融資主体は日本政策金融公庫と沖縄振興開発金融公庫。中小企業は最大6億円、個人事業主や小規模事業者などの零細企業(国民生活事業者)は最大8000万円まで借りられる。対象は、(1)最近1か月の売上高または過去6か月の平均売上高が過去5年のいずれかの年の同期と比べ5%以上減少、(2)創業間もない事業者は売上高が過去3か月などと比較して5%以上減少、(3)債務負担が重い(債務償還期間が13年以上)、のいずれかの条件を満たし、中長期的に業績回復が見込まれる事業者である。融資期間は設備資金、運転資金ともに20年以内。当初3年間は、基準金利より0.9%低い金利で借りられる(4年目以降は基準金利を適用)が、この低金利で借りられる限度額は中小企業で4億円、零細企業で6000万円。もっとも長い場合で、当初5年間は元金返済が免除される。
なお、飲食店・理容室・美容室・クリーニング店・公衆浴場などの生活衛生同業組合の組合員向けに、同様な制度として生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付(融資限度8000万円)がある。同制度と通常の新型コロナウイルス感染症特別貸付を併用すると、個人事業主や小規模事業者などの零細企業(国民生活事業者)の場合には、合計1億6000万円まで借りられることになる。両公庫のコロナ対応融資残高は、2022年3月末で約17兆6600億円に上る。
実質無利子・無担保で借りられる「ゼロ・ゼロ融資」の一種として、2020年3月から、日本政策金融公庫などの政府系金融機関が取扱いを始め、同年5月には民間金融機関にも拡大された(民間は2021年3月末に終了)。当初は国が利子補給して3年間無利子とする仕組みだったが、国の利子補給は2022年9月に終了した。
なお、新型コロナウイルス感染症の流行に対応した類似支援制度には、日本政策金融公庫がスタートアップ企業や事業の発展・継続をめざす中小企業者の財務体質を強化する目的の「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付」、信用保証協会が元本の8割を肩代りする「セーフティネット保証5号」などがあり、一部は新型コロナウイルス感染症特別貸付との併用が可能である。
[矢野 武 2023年5月18日]