旭化成(読み)あさひかせい

共同通信ニュース用語解説 「旭化成」の解説

旭化成

石油化学製品や繊維、食品包装材の「サランラップ」などを手掛ける大手化学メーカー。創業は1922年。住宅事業には72年に参入した。「ヘーベル」のブランド名で一戸建て集合住宅を開発・販売するほか、独自の建材も開発している。住宅・建材事業は売上高の3割を占める主力部門の一つとなっている。くい打ち工事でデータの改ざんが発覚した旭化成建材(東京)は100%子会社。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「旭化成」の意味・わかりやすい解説

旭化成(株)
あさひかせい

旭化成グループを統括する持株会社。2003年(平成15)化学繊維を中心とした大手の総合化学会社であった旭化成が持株会社に移行し、全事業は子会社7社に承継された。資本金1034億円、総資産1兆4599億円、売上高1兆6968億円(2008。連結ベース)。大阪市北区に本店を置く。

 1931年(昭和6)日本窒素肥料(現チッソ)が宮崎県延岡(のべおか)のアンモニア工場を分離して、延岡アンモニア絹糸として設立。1933年に同じ日本窒素系の旭絹織および日本ベンベルグ絹糸を合併して旭ベンベルグ絹糸改称。さらに1943年には日本窒素火薬を合併して日窒化学工業と改称した。第二次世界大戦後は財閥解体の趣旨に沿い日本窒素の系列下から離脱し、1946年(昭和21)に旭化成工業として再出発した。キュプラ(「ベンベルグ」)、レーヨン、アンモニア利用からアクリル繊維、ナイロン、食品、合成ゴム化成品、建材などへ事業の重心を移し、総合化学会社へ脱皮するとともに、電気化学から石油化学へ原料転換を進めた。1952年(昭和27)ダウ・ケミカル日本との合弁会社旭ダウを設立、1982年に合併。岡山県水島地区で総合石油化学事業を展開している。1992年(平成4)には酒類事業に進出する一方で1999年には食品事業から撤退した。2001年社名を旭化成に変更し、社内カンパニー制を導入した。2002年低アルコール事業をアサヒビールニッカウヰスキーに、2003年8月清酒事業を合同酒精へ譲渡した。同年10月持株会社に移行、全事業を分割し、子会社7社に承継した。事業分割は、繊維事業を「旭化成せんい」、化成品・樹脂、機能樹脂・コンパウンド、機能化学品、機能製品の各事業を「旭化成ケミカルズ」、生活製品事業を「旭化成ライフ&リビング」、建材事業を「旭化成建材」、住宅事業を「旭化成ホームズ」、エレクトロニクス事業は「旭化成エレクトロニクス」、医薬・医療事業を「旭化成ファーマ」にそれぞれ承継した。2007年旭化成ライフ&リビングは旭化成ケミカルズに吸収合併。なお、旭化成グループはこれら主要子会社と独立事業会社群をさす。延岡、水島、川崎などに旭化成グループの工場がある。

[橘川武郎]

『日本経営史研究所編『旭化成八十年史』『旭化成八十年史 資料編』(2002・旭化成)』

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改訂新版 世界大百科事典 「旭化成」の意味・わかりやすい解説

旭化成[株] (あさひかせい)

繊維メーカーから成長した総合化学会社。本社は大阪市北区と東京都千代田区,主力工場延岡市。日本窒素肥料(現,チッソ)の野口遵が1922年5月,ビスコースレーヨンの生産を行う旭絹織(株)を設立したことに始まる。また野口はイタリアのカザレー式アンモニア合成法を導入して日窒肥料(株)延岡アンモニア工場を建設,23年試運転に成功した。29年にはドイツのベンベルグ社から技術導入して銅アンモニア絹糸製造の日本ベンベルグ絹糸(株)を設立,延岡工場(原料として同工場のアンモニアを利用することを想定)に隣接して工場を建設,31年に製造を開始した。

 31年,日窒肥料延岡工場を分離して延岡アンモニア絹糸(株)を設立(旭化成の直接の前身),33年に旭絹織と日本ベンベルグ絹糸を合併して旭ベンベルグ絹糸(株)と改称,一大レーヨン会社になった。43年には日本窒素火薬(株)(1930年活発な火薬需要に対応して延岡郊外に設立)を合併,繊維,薬品,プラスチック等の主要部門を一本化,社名を日窒化学工業(株)とした。第2次大戦後は,46年,財閥解体で日窒(日窒コンツェルン)傘下から離れ旭化成工業に改称,労働争議の解決を図るかたわら,空襲によって破壊された工場の復旧に努めた。60年には自社技術によってアクリル繊維カシミロンの生産を始め,合繊メーカーの仲間入りをした。さらに,ナイロンの生産も始めるとともに,合成ゴムや建材・住宅部門にも事業を拡大。また,70年前後に水島に三菱化成工業等との共同出資で石油化学基地を建設(水島コンビナート),石油化学分野にも進出し,総合化学会社としての地位を確立した。このほか,医薬品や食品(グルタミン酸ソーダなど)の生産にも携わっており,合繊メーカーの中でもとくに多角化が進んでいる。82年には旭ダウ(株)(1952年アメリカのダウ社と折半出資で設立,商品名サランラップで著名)を合併し,石油化学部門の立直し・強化を図っている。ウラン濃縮技術の開発も進めている。住宅・建材部門の比重も大きい。2001年1月現社名となる。資本金1034億円(2005年9月),売上高1兆3777億円(2005年3月期)。
化学工業
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百科事典マイペディア 「旭化成」の意味・わかりやすい解説

旭化成[株]【あさひかせい】

繊維・化学の総合メーカー。1931年日本窒素肥料(現チッソ)の延岡工場を分離して,延岡アンモニア絹糸を設立。1933年旭絹織(1922年創業)・日本ベンベルグ絹糸を合併し,旭ベンベルグ絹糸に改称。1943年日本窒素火薬を合併し,日窒化学工業に改称。1946年旭化成工業に改称。1966年積水化学工業を傘下に収める。事業範囲は,合成繊維から合成樹脂・合成ゴム・食品・医薬品・医療機器・住宅・建材など多種にわたるが,1998年三菱化学と合弁会社を設立し,ポリスチレン事業を移管。また,1999年7月には食品部門を日本たばこ産業に売却している。2001年現社名。近年リストラが奏功し営業益大増幅。本社大阪,工場延岡ほか。2011年資本金1033億円,2011年3月期売上高1兆5983億円。売上構成(%)は,ケミカルズ46,住宅26,医薬・医療7,繊維7,エレクトロニクス10,建材3,その他1。海外売上比率28%。→日窒コンツェルン
→関連項目積水ハウス[株]蝶理[株]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「旭化成」の意味・わかりやすい解説

旭化成
あさひかせい
Asahi Kasei Corporation

繊維,石油化学製品,電子部品・材料,医薬・医療,住宅・建材などの事業会社を傘下に収める持株会社。1931年延岡アンモニア絹絲として旭絹織(1922創業)から独立,1933年旭絹織,日本ベンベルグ絹絲を合併して旭ベンベルグ絹絲と改称。1943年日本窒素火薬を合併して日窒化学工業と改称。1946年旭化成工業に改称。1951年新日本化学工業設立,1952年旭ダウ設立などにより総合石油化学工業に発展。1972年岡山県倉敷市水島地区でエチレン 30万t規模のナフサ分解工場の運転を開始。また 1972年に本格販売を開始した「ヘーベルハウス」に代表される住宅部門においても業界大手に成長。医薬・電子材料・新素材などの技術開発も展開し,多角化を進めた。2001年現社名に改称。2003年持株会社に移行,会社分割により旭化成せんい,旭化成ケミカルズなどの分社を設立し,事業を承継した。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「旭化成」の解説

旭化成

正式社名「旭化成株式会社」。英文社名「ASAHI KASEI CORPORATION」。化学工業。大正11年(1922)前身の「旭絹織株式会社」設立。昭和6年(1931)「延岡アンモニア絹絲株式会社」設立。「旭ベンベルグ絹絲株式会社」「旭化成工業株式会社」を経て平成13年(2001)現在の社名に変更。同15年(2003)分社・持株会社化。東京本社は東京都千代田区神田神保町。大阪本社は大阪市北区中之島。旧日本窒素系。住宅・化学品・繊維・医療・建材などの事業会社を傘下に置く。東京証券取引所第1部上場。証券コード3407。

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世界大百科事典(旧版)内の旭化成の言及

【化学繊維】より


[第1次大戦後]
 第1次大戦後,外国品の輸入が再開されるや,糸質の優れた輸入糸との競争にあって帝人の人絹糸生産も危機に立たされたが,帝人は久村の2回にわたる外国視察を通じての外国技術の吸収によってこれを打開し,親会社鈴木商店の資金援助をも得て工場規模を急速に拡大した。一方レーヨン糸の用途は,第1次大戦後には組紐から肩掛け,傘地を経て女物の帯地へとしだいに拡大し,22年には,その将来性に着目した日本窒素肥料(日窒)の野口遵が日本綿花の喜多又蔵と協力して資本金100万円(全額払込み)の旭絹織(現,旭化成工業)を設立した。同社は,レーヨン糸メーカーとして国際的に著名なドイツのグランツシュタック社から技術を導入するとともに,資本的にも提携した。…

※「旭化成」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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