平安中期の歌人。生没年不詳。姓は曾根とも記す。通称は曾丹,曾丹後。家系や父母の名も不明。丹後掾として六位の卑官にとどまったため宮廷貴族に侮られ,〈曾丹〉と呼ばれた。また,円融院の子(ね)の日の遊びのときに,召しもないのに卑しげな狩衣姿で参上してとがめられ,ついに衣のえりをつかまれて引きずり出されたといった逸話も伝えられている(《今昔物語集》巻二十八)。源順,大中臣能宣,源重之ら当時の受領層歌人と交流しつつ,下級貴族に固有な不遇意識を先んじて表現し,彼らに影響をあたえた。960年(天徳4)ごろ百首歌という新形式を創出したときに彼は30歳過ぎであった。その後360首を1年間に割り当てる新形式の〈毎月集〉を発明した。好忠の歌は《古今集》以来の類型をうけながら,反伝統的な耳なれない用語・語法を用いたり,土俗や生活のにおい,愛欲などをうたう歌が目だち,訴嘆の調べが特色である。この特性は新風として後に源俊頼などに受けつがれた。家集に《曾丹集》があり,勅撰集入集歌は《拾遺集》以下に94首。〈鳴けや鳴け蓬(よもぎ)が杣(そま)のきりぎりす過ぎゆく秋はげにぞ悲しき〉(《曾丹集》)。
執筆者:藤岡 忠美
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(山本登朗)
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