昭和期の小説家,評論家
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小説家。大分市に生まれる。本名後藤寿夫(としお)。第五高等学校を経て東京帝国大学法学部中退。大学在学中新人会などに所属、指導的な学生運動家、マルクス主義理論家として活躍する一方、処女作『林檎(りんご)』(1926)を『文芸戦線』に発表、プロレタリア作家として出発した。1926年(大正15)京大事件で検挙され、30年(昭和5)より判決による2年の獄中生活を送った。32年出獄、『文学のために』『作家として』(ともに1932)で文学の自立性を主張し、政治の優位性を指導方針とするナップを批判、36年プロレタリア作家廃業を宣言した。以後、右翼団体大東塾の客員になって「勤王の心」を説いたり、国体への信仰と献身をうたうなど、新体制に積極的に協力した。早くからロマン性の強い作品を書いており、その典型的な転向も、資質に見合う必然のものともいえる。第二次世界大戦後、追放を経、中間小説『息子の青春』(1950)で復活。評論『大東亜戦争肯定論』(1964)で物議を醸したが、それも戦前の代表作『壮年』(1935)、『青年』(1932~33)、『西郷隆盛』(1939~40。70年完結。22巻)などの延長線上のものである。
[小野寺凡]
『『林房雄著作集』二冊(1968~69・翼書院)』▽『『日本の文学40 林房雄他集』(1968・集英社)』
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…この年,小樽高商事件などを契機に早大,東大その他全国の大学などで反軍運動が高まっていたが,12月1日,京都府警の特別高等警察は,同志社大学での軍事教練反対ビラの掲示を口実に同志社大と京大の学生33名を検挙したが,証拠不十分で釈放した。しかし,警察当局は,学連大会の決定が治安維持法,出版法などに違反するとして,翌26年1月から4月にかけて京大はじめ学連の中心メンバーを検挙し,岩田義道,鈴木安蔵,石田英一郎ら京大学生20名ほか村尾薩男,野呂栄太郎,林房雄など計38名を起訴した。これと同時に河上肇,河野密,山本宣治,河上丈太郎らの教授も家宅捜索を受けた。…
… 一方,実名が秘匿されているからこそ鋭い批評をなしうるということもある。とくに芸術批評の領域で匿名批評はしんらつさを競いがちで,たとえば第2次大戦後日本では占領軍に追放処分を受けていた林房雄が《読売新聞》の文化面〈東西南北〉欄を担当(1947‐51)し,白井明(〈白い眼〉の当て字)の筆名で文壇をなで切りしたことが有名である。このほか,《週刊新潮》の社会時評〈東京情報〉(1960‐97)の執筆者ヤン・デンマン,ベストセラーとなった《日本人とユダヤ人》(1970)の著者イザヤ・ベンダサンについても匿名とみなす説が強い。…
…〈反ファシスト知識人監視委員会〉の運動を紹介した,1934年10月の小松清の〈仏文学の一転機〉は大きな反響を呼び,知識人の行動と連帯が雑誌《行動》を中心に広く論議されるが,左翼教条主義の立場からの攻撃で翌年半ばには反ファシズム戦線の萌芽は踏みにじられてしまう。次いでフランスの人民戦線政府に触発されて36年から37年にかけて,舟橋聖一らの〈行動文学〉,林房雄の〈独立作家クラブ〉,1935年成立の〈日本ペンクラブ〉,京都の中井正一らの《世界文化》と《土曜日》などの雑誌,新聞,組織,さらに三木清,中島健蔵,清沢冽らの個人が,ヒューマニズムの提唱というかたちでファシズムへの抵抗を呼びかけるが,37年の日中戦争開始とともに,それらの動きはことごとく一掃されてしまうのである。レジスタンス文学【渡辺 一民】
[イタリア]
イタリアの文学史は20世紀の圧倒的なファシズム支配下の時代を指して,しばしば〈黒い20年間〉と呼んでいる。…
…【野山 嘉正】(2)昭和期の文芸雑誌。1933年10月,林房雄,武田麟太郎,小林秀雄,川端康成らを編集同人として文化公論社から創刊。この年には《行動》《文芸》も発刊され,文壇で〈文芸復興〉が言われた時期にあたる。…
※「林房雄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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