株式投資(読み)かぶしきとうし

改訂新版 世界大百科事典 「株式投資」の意味・わかりやすい解説

株式投資 (かぶしきとうし)

株式投資とは株式を買うことであるが,それは株式会社が発行した株式に資金を投じて株主となり,株主権を取得することである。株主権には,経営に参加する権利配当をもらう権利,会社解散の際に残余財産をもらう権利などがある。しかし,通常株式投資という場合は,配当をもらう権利を取得するか,株価の値上がりによって差益をとるか,あるいはその両方である。株式投資の目的としては,資産として株式を取得する場合と値上がり差益を主とする場合とがある。前者は,売買をほとんど行わず,当該株から得られる配当を取得または再投資する。さらに当該株の増資を取り,所有株数をふやして資産の増大をはかる。あわせて,当該株の資産価値の増大によってインフレをヘッジし,資産の減価を防ぐことである。後者は,株価の値上がりによる差益を取得することを主たる目的として投資するもので,売買は投資家の満足度などによって,その頻度は異なるが総じて高い。この場合,株式を取得しても名義書換えをしないで配当請求権をもたず,値上がりだけを目的とすることもあるが,ほとんどの投資家は名義書換えをし,配当プラス値上がり差益を得ることを目的としている。近年は,株価の上昇,発行株数の希薄化,額面発行増資減少,企業利益の社外流出抑制などから株式利回りが相対的に低下し,利回り投資のうまみがなくなってきているため,株価の値上がり差益の取得を目的とした投資が増大している。

 株式投資は,投資の目的,投資の方針または姿勢,投資資金という制約のもとで行われるため,そのやり方も異なる。個人投資家の場合,株式投資を資産として株を取得することを目的とするか,株価の値上がり差益を目的とするかで,投資の方針や姿勢が違ってくる。値上がり差益をねらう場合は,長期投資よりも中・短期投資が多くなり,投資対象となる株も時代の人気成長株,材料株が主となり,安全性より有利性を主眼とする投資となる。ただ投資家の性格や資金の内容,量によって投資対象が限定されるため,リスクの少ない安全性の高いものを選び,中・長期的な値上がり差益をねらって投資することもある。また株式投資の場合,投資期限を定められた信用取引やきわめて短期間で値ざやをかせごうとするやり方は〈投機〉といい,それだけリスクが多く安全性が低くなり,思惑どおりいかなかったとき,大きな損となる。機関投資家や法人の株式投資は政策投資と純投資に分かれ,政策投資は会社乗っ取り,事業または融資系列の強化,株式安定工作などを目的として株式を取得する投資で,純投資は株式の配当と値上がり差益の取得を目的とした投資である。近年は,日本も純投資による株式取得が多くなり,機関投資家現象が進展し,同時に外人投資も増大し,株式投資も株式の発行形態の変化,株式市場の構造変化ともあわせて,その目的,やり方など考え方に異なるところがみられるようになった。

 実際に株式投資を行う場合,証券会社を通じて注文を出し,売買を行うことになる。売買単位は現在は基本的に1000株である(500円額面の株式は100株であるなどの例外も多少ある)。売買の注文の出し方には,〈何円で〉と値段を指定する指値(さしね)注文と,値段は指定せず何円であってもよいとする成行(なりゆき)注文とがある。それぞれの買い方(売り方)を指値買い(売り),成行買い(売り)という。購入した株券は通常,保護預りといって,多少の手数料を払って証券会社に保管してもらうことになる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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