国家行政組織法第3条2項に基づき、法務省設置法によって設置された国の行政機関。「基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図ることを任務とする」(法務省設置法3条)。同省は、この任務を果たすために、検察、行刑、恩赦、更生保護、国の利害に関係のある訴訟、国籍・戸籍・登記・供託、人権の擁護、出入国の管理・難民の認定、破壊的団体の規制、無差別大量殺人行為を行った団体の規制、民間紛争解決手続の業務の認証に関する事項など、多岐にわたる行政事務を一体的に遂行する。
その沿革は次のようなものである。1871年(明治4)に設置された司法省にその源を発し、1948年(昭和23)に占領軍当局の指示により、従前の法制局の事務を吸収するほか、公職追放者等の調査観察等に関する事務、人権擁護に関する事務が新たにその所掌に属することになり、法務総裁を長として法務庁が発足した。その後、法務府を経て、1952年の行政機構改革の際、大幅な整理の断行により法制に関する事務を内閣に移管し(内閣法制局の設置)、出入国の管理に関する事務を外務省から吸収し(外務省の外局の入国管理庁を廃止)、法務省として新発足した。2001年(平成13)中央省庁等の再編により、訟務局や六つの課が廃止され、審議会の整理統合などの組織改編が行われた。内部部局として、大臣官房のほか、民事局、刑事局、矯正局、保護局、人権擁護局、および2015年4月に設置された訟務局の6局と大臣官房の司法法制部がある。審議会等として、司法試験委員会、検察官適格審査会、中央更生保護審査会、日本司法支援センター評価委員会、法制審議会、検察官・公証人特別任用等審査会が置かれている。施設等機関として、刑務所、少年刑務所、拘置所(以上刑事施設)、少年院、少年鑑別所、婦人補導院がある。また、特別の機関として検察庁がある。地方支分部局として、矯正管区、地方更生保護委員会、法務局および地方法務局、保護観察所がある。外局として、公安審査委員会、公安調査庁、2019年4月に入国管理局を改組・拡充した出入国在留管理庁があり、その下に地方出入国在留管理局および入国者収容所が置かれている。
大日本帝国憲法における司法省は、司法行政全般をつかさどっていたが、現在は日本国憲法における司法権の独立の保障のもとで、法務省は裁判所に対してなんらの権限も有しない。検察庁の法務省における位置づけがしばしば問題となる。法務大臣は、検察官を一般的に指揮監督できるが(検察庁法14条)、検察庁はその機能の性質上、裁判所の独立に準ずるような独立的地位にあるとされる。
[平田和一 2016年1月19日]
国の法律秩序の維持等法務行政を一体的に担当する行政機関。なお,行政組織上検察を包む体制となっており,また,裁判所との連絡や司法制度等をも担当している。
1871年(明治4)設置の司法省が1948年法務庁に,さらに49年法務府に改められ,52年法務省とされて今日に至っている。その内部組織は大臣官房および民事局,刑事局,矯正局,保護局,訟務局(2001年大臣官房に統合され廃止),人権擁護局,入国管理局の7局からなっている。大臣官房には司法法制調査部があり,また,司法試験関係の事務等を担当する。民事局は,民事法令一般,国籍,戸籍,登記,供託,公証,司法書士,住民基本台帳等を担当し,刑事局は刑事法令一般,検察,犯罪人引渡し,犯罪予防その他刑事に関することを担当する。矯正局は犯罪人に対する刑の執行を,保護局は恩赦,仮出獄,保護観察,更生保護等を,訟務局は国の利害に関係のある争訟に関する事項を,人権擁護局は人権侵犯事件の調査,人身保護等をそれぞれ担当する。入国管理局は出入国管理,外国人の在留・登録等を担当する。外局としては公安調査庁,司法試験管理委員会(現,司法試験委員会。外局から審議会へ移行),公安審査委員会の3機関があり,また,検察庁,監獄(刑務所,拘置所等)も法務省に属している。地方出先機関としては法務局(8),地方法務局(42),地方入国管理局(8)等が置かれており,審議会としては法制審議会等がある。1997年度末定員5万1208人,うち検察庁定員1万1325人。
執筆者:八木 俊道
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法務行政を所掌とする中央官庁。1952年(昭和27)8月1日設置。47年5月3日の日本国憲法施行にともない,検察機能を除く裁判所を司法省から分離した。司法省の残存部分は法務行政を担ったが,翌年2月15日占領軍の指示のもと法制局と合併し,政府の最高法律顧問府である法務庁となった。49年6月1日法務府と改称。52年法制局を内閣に分離して法務省が設置された。内部部局として大臣官房・民事・刑事・矯正(刑の執行)・保護(更生保護)・訟務(国に関係する訴訟)・人権擁護・入国管理の各局が,外局として司法試験管理委員会・公安審査委員会・公安調査庁がおかれた。機構上は検察庁もこれに属し,法務大臣は検事総長に対して指揮権を発動できる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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