建設工学用語。一般には切取りまたは盛土によってつくられた人工的傾斜面のことであるが,自然傾斜面ものり面ということがある。切取りののり面は,もともと安定していた自然の地盤を切り取ってその安定を破壊するものであり,また盛土ののり面は,盛土の施工後日の浅いうちはまだ十分に安定していないので,大雨などの状況の変化によってしばしば崩壊を起こすことがある。のり面崩壊の原因は種々あるが,雨水や地下水の浸透などによる浸食,風,気温などによる風化作用,また,地震による振動や地震力などがあげられる。このような崩壊による自然災害を防止するために,地山が非常に堅固な場合やのり面の傾斜が非常に小さい場合などを除いては,のり面を保護するためになんらかの対策が施される。芝などの植生によるのり面保護は,構造物によるものに比べて永久的であり,工事費も低廉でかつ将来の拡張に支障を与えることが少ないので,事情の許すかぎりのり面保護は植生によることが望ましい。強酸性土壌,湧水が多くかつ凍結のはなはだしいところ,浮石または節理のある岩石,風化のおそれのある岩盤など植物の生育に適しない場合,また,強い土圧を受けるのり面や土砂崩壊のおそれのあるところは,これに抵抗する強度のある構造物によって保護する必要がある。構造物によるのり面保護工には,のり面を覆って風化浸食を防止するモルタル吹付け,コンクリート張り,のり枠,蛇籠などの保護工と,落石などを防止する落石防止柵,落石防止網,落石覆がある。また,土圧に抵抗してのり面全体の安全を確保するためには,ブロック積み,石積み,コンクリートなどの擁壁が用いられる。
執筆者:中村 靖
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