デジタル大辞泉 「流通」の意味・読み・例文・類語
りゅう‐つう〔リウ‐〕【流通】
1 空気や水などが、滞らずに流れかようこと。「空気の
2 広く通用すること。また、広く行われること。「世間に
3 貨幣・商品などが経済界や市場で移転されること。特に、商品が生産者から消費者に渡ること。「日銀券は法律の強制通用力によって
[類語](1)流れる・流動・貫流・流出・
流通には,商品経済に固有の流通すなわち商品売買の連鎖的過程の意味と,いわゆる物的流通すなわち生産物の物理的移動との二つがあり,両者ははっきり区別されねばならない。ただし一般的には,商品の売買が行われると,それにともなって商品の場所的移動も行われることが多いので,両者はきわめて混同されやすい。
しかし商品売買は,不動産の売買のように物理的移動がまったくともなわないものや,倉庫に保管された商品の所有者名義が変更されるだけの売買等もあることから直ちに明らかなように,必ずしも物理的移動をともなうものではない。これに対して,いわゆる物的流通は,主として商品の運輸・保管等に関連し,これらの業務をもっぱらとする--ただし同時に商品取引業務をも行う--専門業者すなわち商業資本や運輸資本が活躍する舞台となる。他方,商品流通とは,すべての企業・消費者が日常的に行っている商品の売買過程であるから,それは社会全体をおおうほど大きな広がりをもっている。
AによるBへの商品の販売は,同時にBによる商品の購買である。いま商品をW,貨幣をGで示せば,AにとってのW-Gは,BにとってのG-Wである。このように商品の売買は相互にからみあっている。そればかりでなく,商品を販売した者は,取得した貨幣によって他の商品を購買する。この過程はW1-G-W2と表現され,それは貨幣を仲介とする商品相互の交換すなわち商品流通をあらわしている。しかも,前半のW1-Gが他の人にとっての購買,後半のG-W2がまた別の人にとっての販売を意味し,このようにして商品流通は社会的に転々と連鎖している。
このような商品流通は,資本主義社会の表面においても,また資本主義以前の,共同体と共同体とのあいだにおける商品関係においても,ともに存在するが,それらは次に説明する資本流通と区別され,単純流通ないし一般的流通と呼ばれる。
ところが,商品流通を媒介する貨幣が,自己増殖を目的として商品を売って買う過程すなわちG-W-G′(G′は増殖した貨幣をあらわす)が展開されると,それは,もはや単なる商品流通ではなく,一つの完結した過程すなわち運動体となる。これが資本である。この意味で,資本は流通から発生した価値の運動体である。
さらにこの資本G-W-G′が,生産過程を根拠に貨幣増殖するようになると,それは産業資本と呼ばれる。したがって産業資本の一般的形式は,
と表現されうる。産業資本は,商品流通の発展した形態である資本が,その運動の内部に生産過程を包摂したものにほかならない。そこで,このGから始まってG′にもどる循環運動の全体が,資本流通と呼ばれる。
資本主義社会とは,このような産業資本がその社会の再生産を支配した社会のことであるが,そこでは,産業資本は社会的生産過程を根拠に剰余価値を取得し,またその生産過程をみずから調整することによって商品経済の変動に対応する自立的な運動体となっている。したがって,実質的には社会の表面にある商品流通をその自立的運動によって規制できるものとなっている。換言すれば,社会の表面にあらわれる商品流通には,資本流通だけでなく,労働者等の消費者による単なる商品購入の過程や非資本主義的な商品の売買過程等の一般的流通も含まれているが,資本流通は,それらの一般的流通とたえずからみあっているだけでなく,基本的にはそれらの流通を多かれ少なかれ規制しうるものとなっている。この意味で,資本流通は一般的流通より高次な流通である。
執筆者:侘美 光彦
流通(商品流通)には商取引流通と物的流通があり,その存在,活動,現象の固有性に着目して定義づけると〈商品がその生産者から消費者へ移転する現象,もしくは移転させるための活動〉(田島義博)ということになる。そして,それを対象とする研究分野を流通論という。なお,ここでいう商品とは,販売を前提として生産される財を指し,また,消費者には,家計消費者のほかに,産業需要家も含まれることに注意されたい。
なにゆえに,上述のような商品の移転現象とかその移転活動が問題にされるのか。それは,現代社会においては生産と消費が分化し,そこには,そのままでは(つまり商品の移転ということなくしては)経済循環が完成しえないという意味での社会的な溝があるからである。この社会的な溝を,流通論では,一般に懸隔と呼んでいる。久保村隆祐によれば,生産と消費の社会的分化により,次のような懸隔が認識されることになる。
(1)人的懸隔 生産主体と消費主体とが人格的に異なるということから生ずる懸隔である。たとえば,生産主体が生産した商品は,そのままでは消費主体によって消費されえない。そのためには,たとえば所有権を変更させるような調整・克服が必要とされる。また人格的分化により,生産者の意向と消費者の意向とは,そのままでは一致しなくなる。この意向の違いを調整・克服することも必要となる。
(2)物的懸隔 生産と消費とが,その物理的状態を異にする,ということから生ずるものであって,これには次のものが考えられる。(a)場所的懸隔 生産と消費とが場所的に異なることから生ずる懸隔である。これは,生産と居住生活とにおける最適立地因子が異なるためであり,この意味で生産地点と消費地点とには必然的に隔りが生ずることになる。こうした懸隔を調整・克服するには,商品を場所的に移動させることが必要とされる。(b)時間的懸隔 生産と消費とが時間的に異なるということから生ずる。典型的には農産物や水産物のいわゆる季節物において顕著にみられる。たとえば,たけのこは特定の時期にしか生産されないが,消費者はこれを年中食べることを望むし,しかも現代ではこれが可能になっている。一般の工業生産物についても時間的懸隔を認めることができる。たとえばインスタントラーメンは工場内において間断なく生産されているが,消費はある期間をおいて間欠的になされる。こうした懸隔は,たとえば商品を一定期間在庫しておくなどという方法によって調整・克服されねばならない。(c)品質的懸隔 生産されたままの財と消費欲求に適合する財とでは,品質的にみてタイプが異なるということから生ずる懸隔である。たとえば,水揚げされた直後のサンマは,そのままでは消費欲求に適合しにくい。水揚げそのものにおいては味,形などが異なるサンマが大量に雑然と積まれるだけである。これを,いくつものタイプの消費欲求に合わせて分類・整序しなければならない。(d)数量的懸隔 生産と消費の単位数量が異なることから生ずる。たとえば,大口の生産単位数量を個々の消費単位に適合させるべく,これを小口に分割していかねばならない。
流通には,上述のようないくつかの懸隔を調整・克服する機能が認められることになる。この機能こそが流通機能と呼ばれるものである。こうした流通機能を果たすために,さまざまな流通活動が展開される。たとえば,人的懸隔を調整・克服する機能としては,売買契約締結活動,顧客説得活動などが展開されるし,場所的懸隔を調整・克服する機能としては輸・配送活動,荷役活動などが展開される。また時間的懸隔を調整・克服する機能としては保管・貯蔵活動,保温・保冷活動などが,品質的懸隔を調整・克服する機能としては選別・格付活動などが実施される。そして,数量的懸隔を調整・克服する機能としては荷分け活動などが実施されることになる。
たとえば特定の商品の流通過程において,必要なすべての流通機能が,唯一の機関によって遂行されることはほとんどなく,むしろ,多数の機関による垂直的ないしは水平的分業によって遂行されている。そして,このことが,その流通過程固有の社会的仕組みをつくり出すことになる。上記のような垂直的分業と水平的分業によって形成されるこの社会的仕組みが流通機構と呼ばれるものである。ここでいう垂直的分業とは,ある商品が消費者の手に渡るまでに,たとえば,メーカーの流通活動→卸売業者の流通活動→小売業者の流通活動というように,いくつかの垂直的な段階にまたがって流通機能が遂行されることを指す。そして,このような形で流通機能が遂行される垂直的な段階の連なりを流通経路と呼ぶ。言い換えるならば,ここでいう垂直的分業とは,流通経路上での分業を意味する。水平的分業とは競争・補完による分業を指す。たとえば,卸売業者どうしが同類の流通機能を遂行することによって競争を展開する,ある卸売業者がみずからの機能発揮を補完してもらうために輸・配送を運輸業者に委託するといったことなどが考えられる。
執筆者:上原 征彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
字通「流」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 (株)ジェリコ・コンサルティング流通用語辞典について 情報
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