地震、津波、風水雪害、火山噴火などの巨大災害に対し、災害を防ぐ(防災)のではなく、被害がでることを前提にして、それをできるだけ少なく抑えるという概念。1995年(平成7)の阪神・淡路大震災や2011年(平成23)の東日本大震災の教訓からも、被害を完全になくすのは困難であるが、最小限にとどめることは可能で、そのための常日ごろの備えや取り組みこそが重要であると考えられている。京都大学防災研究所所長であった京都大学名誉教授の河田惠昭(かわたよしあき)(1946― )らが中心となって重要性や必要性を説いたことから普及・定着した。とくに、減災と防災とを比較しながら防波堤建設や建物の耐震強化工事などを行うというハード面に加え、被害想定や避難場所を示したハザードマップの作成、防災教育・避難訓練の徹底などソフト面の重要性を説くところに特色がある。減災は被害を抑えるだけでなく、家庭内での「自助」や地域内での「共助」を奨励することで、大災害からの早期復興・復旧にも役だつとされている。政府は2004年版の『防災白書』で減災推進の考えを初めて提言し、大地震の対策大綱や被害想定をまとめるたびに、国、地方自治体、地域コミュニティ、企業、家庭、個人の各レベルでの減災の取り組みの必要性を強調している。
減災の具体策では、まず災害情報の正確で迅速な伝達のため、人工衛星を用いた観測・通信システムの整備のほか、通常のテレビやFM放送などによる緊急速報に加え、家屋や建物に小型受信端末を設置する減災コミュニケーションシステムの整備が重要とされる。救助・救命活動では、自衛隊や消防隊がまにあわないケースも多く、地域住民による初期消火や救助・救命活動が必要であり、障害者や高齢者など避難行動要支援者を救助・支援する体制づくりが重要としている。
事前の備えでは、家庭に対し、住宅の耐震診断・耐震改修の促進、家具や大型家電など倒れやすい物の固定、水・食料・生活必需品の備蓄の奨励、家族らの安否確認方法の周知を求めている。企業に対しては事業継続計画(BCP)の策定、自治体には地域防災計画の策定や遠方の自治体との災害時応援協定締結などが必要であるとしている。さらに首都直下地震などに備え、帰宅困難者対策、広域避難対策などに国、自治体、地域、企業、個人が連携して取り組むことが重要であるとしている。
[編集部 2016年3月18日]
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